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12.秘密の業務と噂
しおりを挟む皇宮勤務5日目。
事務的な仕事に慣れてきた。
ルディガーが付きっきりでなくても執務は捗るようになった。
逆に、殿下と打ち合わせをする時間が増えて、ルディガーがちょっとご機嫌斜めな日がある。
そして、1人書類と格闘している間に私は気付いてしまった。
一見、普通の帳簿の照合に見えるが、よくよく見れば、怪しい資金の流通経路の確認作業だ。
ルディガーの調査とは貴族の不正に関するものなのだろうと察してしまった。
道理で護衛騎士が付くわけだ。
重点的に調べているのは、初日に紹介されたアドラー小公爵様のロラン公爵家とミルラ公爵令嬢様のベンゼル公爵家だ。
ラグレシアス帝国にはソビエシュ皇帝の下に5つの公爵家がある。
我が家であるアルベール公爵家、カメロン公爵家、スタンリー公爵家と、今、調査対象として疑問に思っているロラン公爵家とベンゼル公爵だ。
アルベール、カメロン、スタンリーの3つの公爵家は、皇帝支持派を表明しており、ロランとベンゼルは特に何も表明していない。
何も明らかにしない分、ロランとベンゼルは皇帝派からすると、不気味な存在ではある。
ルディガーは何も言わないが、もしかすると私は結構ヤバめな環境に放り込まれたかもしれない。
だから、殿下に仕事をして欲しいと言われた時にルディガーは即答で断ろうとしたし、最終的にお父様を巻き込んでの執務となった。
これは、ロランとベンゼルについて注意が必要だなと感じた。
アドラー・ロランとミルラ・ベンゼルを紹介したのは、顔を知っておいた方がいいというルディガーの判断だろう。
私という存在がルディガーの足枷にならないように気を付けなければいけない。
また、皇宮に出入りするようになり、不審な噂も耳にするようになった。
それは、ベンゼル公爵様が隣国と結託して、皇太子殿下のお命を狙っているかもしれないという噂だ。
ベンゼル公爵様は現皇帝陛下の弟君にあたる。
一人息子の殿下が居なくなれば、皇位継承者第一位になる。
自身が皇帝の座を狙うことと、ミルラ公爵令嬢を皇太子妃にすることのどちらかを画策しているらしい。
ルディガーがいろいろ言わないのは、私を巻き込みたくないからだろう。
となると、自分で情報収集は難しいので、騎士3人組に相談することにした。
「ベンゼル公爵家について、ちょっと情報を集めてもらえるかしら?公爵様とミルラ嬢について。」
ナミが少し気まずそうな顔した。
「ベルナ様、ミルラ嬢なら既に1つ情報があります。公爵様は皇太子殿下との縁談をゴリ押ししたいようですが、殿下にその気が無いのとミルラ嬢がルディガー様に懸想しているのです。」
「えっ!?ルディを?」
「はい、婚約されているベルナ様にはお伝えしていいかとも思いましたが、皇宮内ではミルラ嬢が、ルディガー様に媚薬を盛った話は有名でして…ルディガー様は太ももを短剣で刺して意識を保ち、その場を立ち去ったとのことです。それ以来、ルディガー様は他人と飲食をともにしないことを徹底されています。」
「そんなことがあったのね…」
ルディガーの過去を勝手に知ってしまって申し訳ない気持ちになったのと、そんな過去があるのに強引に迫ってしまった自分を深く反省した。
「でも、ベルナ様は特別だと思います。あんなルディガー様は見たことがありません。」
マリとラナがにやにやしている。
「そうそう!誰にも見せたくないって位に大事にされてますよね!!」
「そうかしら…親が決めた婚約者だからでしょう?確かに優しいけど…」
騎士3人が大声で叫ぶ。
「優しいですって!?」
「あの冷血漢が??」
「有り得ない!!」
「え…あ、あの、や、優しいです。」
私は3人の勢いに圧倒されて、縮こまってしまう。
「あぁ、こりゃガチだわ!」
「本気でベルナ様を守らないと!」
「狂犬を手懐けたな!」
そこへルディガーが部屋に入ってきた。
「何を騒いでるんだ?」
騎士3人は慌てて敬礼する。
「ベルナ様をお守りする作戦を練っておりました!」
「こんなに、か弱くて可愛らしい方、絶対傷付けられませんから!」
「ベルナ様、私達にお任せください!」
ルディガーは満足げに頷いた。
「良い心掛けだ。」
騎士3人組とは、別途打ち合わせが必要だが、今日はこれまでとし騎士達は退室した。
私も、業務の終わる時間だったので、いつも通り、お父様と馬車で帰るつもりだった。
ルディガーに退勤を告げて部屋を出ようとした時、腕を掴まれた。
「ちょっと話したい。」
ルディガーの目が真剣だったので、執務室で話すことにした。
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