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21.辺境伯のお仕事
しおりを挟む北部に来て、気付けば五日目。
お互いの気持ちを確かめ合い、穏やかな日常を過ごしている。
ヴィル様自身が質素な生活を好むせいか、食事も野菜たっぷりの健康的なメニューだ。
「サラ、希望があれば何でも言うんだぞ。魔獣征伐の報奨が定期的に入るし、別に金がないわけじゃないから。」
「大丈夫ですよ。美味しくいただいてますし、いつも楽しみです。」
「サラは贅沢しない人なんだなぁ。ますます好ましい。」
ヴィル様は、いつも何かしら褒めてくる。
未だに慣れない…
「領主様は、本当にサラーシュ様一筋ですねぇ。朝から微笑ましい。」
イーサンがにこやかに見ている。
「ところで、お食事がお済みになりましたら、今日から執務もお願い致します。」
要は、いつまでも惚けてないで、仕事もしてね!ってことらしい。
「サラも一緒にやってみようか。ここの仕事量はそんなに多くないので、二人でやれば早いし。夜はゆっくり過ごせるしな。」
何か、ヴィル様のお顔付きがいやらしい…綺麗なお顔が台無しです!
下心が全く下に在りません。
むしろ前面に出ています。
キーナとアンヌがドン引きしていますわよ?
「ヴィル様、早速教えていただけますか?お役に立ちたいので。行きますわよ!」
居た堪れない気持ちになり、手を繋いで執務室に走る。
もちろんヴィル様は嬉しそうだ。
執務室に入ると、机には、きちんと整理された書類の束が並んでいる。
「これは魔獣征伐の計画書で、こちらは村の下水道整備の予算書だ。年寄りばかりの村だから、疫病対策で衛生管理は気を付けてるんだ。本来は医者も必要なんだが、なかなか来てくれないのが悩みだ。」
小さな領地でも、それなりに問題があるものだ。
「疫病対策で、下水道整備ですか…首都にいたら、そういうこと全然考えなかったかもしれません。勉強になります。」
如何に自分が無知だったか、また気付く。
「そう言ってもらえると嬉しいな。ここは俺の領地だから、みんな健康でいて欲しいんだ。サラに手伝って欲しい。」
あぁ、この人は責任感もあるんだな。
隣りに立てるように、もっと学ばなきゃ。
「頑張ります!」
取り敢えず、当面の目標は出来た。
ヴィル様は一緒にやる気満々だから、私も心強い。
当たり前に与えられていた環境からガラリと変わったけど、今まで一人で頑張ってきたヴィル様を思うと頑張れる。
ヴィル様は凄いなと改めて思った。
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