【完結】 その身が焼き切れるほどの嫉妬をあなたにあげる

紬あおい

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23.求婚

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ジークフリードは、ノックスに休息を与える以外、自分は殆ど休まずに帝国へと急いだ。
そして、帰路は八日でセルフォート公爵邸に到着した。

「レナリア!」

先触れどころか、本人が二日も縮めて帰って来たので、レナリアは何の準備もしていなかった。
でも、ジークフリードの声を聞いて、邸の外に飛び出した。

「ジーク!」

お帰りなさいの言葉は、涙で言えなかった。
ジークフリードにしがみ付き、過呼吸寸前で泣きじゃくった。
そんなレナリアをジークフリードは強く抱き締めて、泣き止むのを待った。

「レナリア、話がある。」

ジークフリードの真剣な声にレナリアは緊張する。
そして、真っ直ぐにジークフリードの瞳を見つめた。
ジークフリードは跪き、レナリアの手を取った。

「レナリア・セルフォート公爵令嬢、私ジークフリード・クロムウェルと結婚してください。」

レナリアは、平民の優秀な騎士だと思っていたジークフリードに貴族を表す姓があることを初めて知った。
しかも、クロムウェルは公国だ。
レナリアでなくても、貴族であれば知らぬ者は居ない。

「ジーク…あなた…まさか行方不明と言われていた公子様だったの…?」

「黙っていて、すまない。一人の人間、一人の騎士として生きていくつもりだったから、公爵様にも言ってなかったんだ。まぁ、影の調査でバレたけど…」

「お父様も気付いてたの!?酷い…何も聞いてない…」

「公爵様は悪くない。知ったのも、つい最近だ。どうか許して欲しい…」

「ジーク…結婚て…」

「ああ、承諾を得てきた。元々反対するような親ではないが、レナリアを娶る為にケジメを付けてきた。レナリア、俺の妻となり、生涯を共にしてくれるか?」

穏やかに微笑むジークフリードに、レナリアは満面の笑みで応えた。

「はい、お受け致します。ジークとなら喜んで!愛しています。どうかお傍に居させてください。」

「本当は、もっとカッコつけて求婚したかったんだが、レナリアに早く会いたくて。顔を見たら言わずにはいられなかった。」

「私も早くジークに会いたかったし、嬉しいから気にしないで?」

嬉し涙を流すレナリアを横抱きにし、ジークフリードはウィルヘルムの執務室に入って行った。

「公爵様、レナリアに結婚の承諾をいただきました。私の両親や兄も賛成してくれました。早々に結婚したいと思います!」

ウィルヘルムは、横抱きされ涙を流すレナリアと、頬を紅潮させ微笑むジークフリードを見て、娘の幸せを確信した。

「ジークフリード公子様、娘を何卒宜しく頼みます。可愛い一人娘です。幸せにしてやってください。」

「もちろんです。二人で幸せになります。」

「お父様、ありがとう。」

騒ぎを聞き付けたヘライザも、執務室の入り口で涙ぐんでいた。
婚約解消に至るまで、我慢に我慢を重ねてきたレナリアが、本当に愛する人を見つけたことが、母として何より嬉しかった。
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