【完結】 その身が焼き切れるほどの嫉妬をあなたにあげる

紬あおい

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24.陛下の本音

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ジークフリードは、戻ってからの行動が素早かった。
まずは結婚を最優先にし、セルフォート公爵と共にホルヘン皇帝への謁見を願い出た。
本来なら数日から数週間掛かる筈の謁見申請は、翌日には許可が下り、二人して皇宮へと向かった。

謁見の間で待つと、側近に応接間に案内された。
そこには、ホルヘン皇帝が護衛すら伴わずに一人で待っていた。

「セルフォート公爵、クロムウェル公子、気楽にしてくれ。」

三人はソファに腰掛けた。

「今日は、レナリアの話か?」

ホルヘン皇帝はいきなり核心を突いてきたので、ウィルヘルムは正直に告げた。

「はい、レナリアとクロムウェル公子であるジークフリードの結婚を承諾していただきたく参りました。」

「そうか…承認しよう。」

「んはっ!?」

ウィルヘルムから変な声が出て、ジークフリードは笑いを堪えるのが大変だった。

「そなたが認めろと申したのではないか。素っ頓狂な声を出すな。」

「失礼しました。あまりにもあっさり承認していただいたので…」

ホルヘン皇帝は穏やかな顔でジークフリードに話し掛けた。

「ジークフリード、久しぶりだな。そなたが幼い頃に会ったきりだが、レナリアを射止めたか。倅が迷惑を掛けたが、あの子は良い子だ。幸せにしてやれ。」

「有り難きお言葉、しかと心に刻みます。そして、私も公国を出て、セルフォート公爵家の人間となります故、手土産としてダイヤモンド鉱山を寄贈したいと存じます。」

ホルヘン皇帝はジークフリードの言わんとすることを察した。

「あのダイヤモンド鉱山か!代わりにレナリアとの結婚を急ぐのと、今後一切ルーセントとレナリアを関わらせるなということだな?」

「そのように受け取っていただいて構いません。」

「しかし、あの鉱山の価値を知らぬ訳はないだろう?本当にいいのか?」

「はい、ダイヤモンドよりも欲しい方がおりますので。妻と平穏に暮らすことが私の一番の望みでございます。」

「はははっ、こりゃルーセントが敵う訳ないな!クロムウェルの男は一途だからな。レナリアは大変だ。ジークフリード、すぐに婚姻承諾書を承認するし、来月皇宮で開催される私の誕生パーティで、レナリアとの結婚を発表しよう。あと、そなたの兄のキルリードも結婚するそうだ。同時に発表してしまおう。クロムウェルが安泰なら帝国も同じく安泰だからな。」

「はっ!?兄も、ですか?」

「行方不明の弟が見つかり、しかも最愛を見つけたと知り、キルリードもやっと安心したのだろう。めでたいことだ。」

ジークフリードは、キルリードがヴィヴィアンを待たせていることまで考えていなかった。
そして、喜ぶ父と母の顔が浮かんだ。

(兄上、すまない。全く、どこまでお人好しなんだ…こりゃあ、新婚旅行は同時結婚式付きだな…)

ジークフリードが考え事をしていると、しばらくホルヘン皇帝とジークフリードの会話を聞いていたウィルヘルムが口を開く。

「陛下、ルーセント殿下はまだレナリアと結婚されるおつもりのようですが、大丈夫でしょうか…ジークフリード公子との結婚を認めてくださったということは、皇命でのルーセント殿下とレナリアの結婚は絶対に無いと思ってよろしいですね?」

「当たり前だ。ルーセントは、今遊んでいる令嬢の誰かと結婚させて、婿入りしてもらう。正直、あそこまでバカだとは思わなかった。第二皇子に、誰が五大公爵家のバランスを取れと言うたのだ…次期皇帝になれないと分かった時点で、身の振り方を考えたら、女に現を抜かしている場合ではないだろうに。レナリアには申し訳ないことをした。私の誕生パーティで、ルーセントには、はっきりと現実を見せつけてやる!あのバカがっ!!」

息子の所業を思い浮かべて、ぷるぷる震えるホルヘン皇帝。

(皇帝までもがルーセントをバカと言った…笑っちゃダメだ、耐えろ、俺!)

ジークフリードは、また笑いを必死に堪えた。
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