【完結】 言葉足らずな求婚 〜運命は勝手に回っていく、いや操られていく!?〜

紬あおい

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12.旅

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侯爵家を出て馬車に乗り、私は海辺の町を目指した。
初めての一人旅だ。
馬車で半日も走れば、海が見えてくる。
手荷物は少ないが、お金はそこそこ持ってきたので、何とかなるだろう。

幸い馬車の御者は人の良さそうなおじいちゃんで、宿の案内までしてくれて、親切にしてもらえた。

宿のご主人と奥さんも、気さくな人達で安心した。

私のことは、貴族のメイドの失恋傷心休暇という設定にしてある。
その方が部屋に篭っていても不自然ではないだろう。

まぁ、あながち失恋は間違いではないかもしれない。

部屋の窓から海が見えて、夜は波の音を聞きながら眠る。
食べて寛いで眠るだけ。

侯爵家では、常に何かしていないといけないような強迫観念を自ら創り出していた気がする。
家を出て、初めて一人で過ごすと今まで見えなかったものが見えて来るのだなぁと思った。

ここに来て五日目。
初めて海まで行ってみた。
季節外れなせいか、誰も居ない。

砂浜に直に座って海を見たり、裸足で波打ち際を歩いてみたり、新鮮な体験だ。
私にしてみたら、冒険に近い位の体験である。

それだけ侯爵家では狭い世界で生きていたんだなぁと思う。
狭い世界でじたばたもがいて、勝手に責任や苦痛を感じていたのかもしれない。

砂浜に大の字に寝転がっていたら、急に何もかもがおかしくなってしまった。

「あはははっ!」

大声で笑ったらスッキリした。

「随分と楽しそうだな。」

聞き覚えのある声が頭上から降ってきてた。
システイン様だ。

「どうして…?」

「どうして、だと?手紙一通で全て終わるとでも??」

システイン様のブルーグレーの瞳が、怒りで深いグレーになっている。
手を引っ張られ、強引に抱き上げられて、砂まみれのまま馬車に乗せられる。

「逃げないように拘束させてもらう。」

手足を柔らかい布で縛られた。
更に目隠しもされ、そのまま馬車はどこかに向かっている。

「侯爵邸に帰るのですか?」

「余計なことは言わずに黙っていてくれ。口まで塞ぎたくない。」

冷たく言われ、黙ることにした。
システイン様も無言だった。
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