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29.殿下からの依頼
しおりを挟む結婚式まであと二ヶ月となり、公爵家でのシステイン様と一緒のお仕事も慣れてきた。
忙しさにかまけて、両家の食事会が延び延びになっているのは気に掛かるが、それぞれが忙しい身なので不満は出ていない。
穏やかに過ごしていたある日、エドヴァルド皇太子殿下がお忍びで公爵邸を訪ねてきた。
いつもの黒髪赤眼ではなく、赤髪黒眼に変身していたので、私はすぐに殿下とは気付かなかった。
「おいおい、お前達、執務室も一緒かよ!」
突然現れた男性に驚くと、システイン様が嫌な顔をする。
「殿下、急に来ないでくださいよ。リシェが驚くだろ?」
殿下に不敬では?位、システイン様は嫌がっている。
「シス、そんな口きいていいのか?リシェル嬢を探してやったし、休みも取らせただろ?」
「あの時は大変お世話になりました。ありがとうございました。」
私がお礼を言うと、システイン様はやれやれと言いたそうな顔をした。
「殿下がお忍びで来た時点で、俺に厄介事を押し付ける気満々だから、放っといていいよ!」
「そう言うな。シスにも関係あるんだから!」
殿下は事情を話し出した。
隣国のラギラレア王国の王女が訪問するから、システイン様に護衛を頼みたいと。
そもそも騎士団でもないのに、単に気に入ったからとごねているらしい。
「殿下、俺、結婚控えてるんで断る!」
「あのロクサリアって王女、しつこいから撃退しといた方がいいって!」
「殺っちゃっていいのか?」
「そ、そこまでは…」
殿下も困り顔だ。
「付き纏いに勘違いに、あの女ほんと無理なんだ!まぁ、俺はリシェ以外は眼中にないので、殿下が何とかしてくださいよ!」
話がまとまりそうにない。
「シス、私も一緒に行って妻です!とか言っちゃう?」
「あの女がリシェに手を出す可能性があるんだよな…あちこちで問題起こしてるみたいだし。」
殿下が水を得た魚のように私に期待して見つめてくる。
「リシェル嬢、絶対守るからシスと来てくれ!責任は俺が取る!!」
「殿下、責任取るような事態があっちゃ困るんだよ!」
「万が一の対策として、シスが聖剣を抜けるか試す!あの聖剣があれば、うっかり手は出せないだろう。」
「あれねー…」
取り敢えず、今から聖剣とやらを引き抜きに三人で出掛けることとなった。
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