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7.新婚旅行 ④
しおりを挟む翌朝、私は熱が出てしまい、新婚旅行先に出発が出来なかった。
熱が下がるまで、ここにいなければならないと思うと気が重かった。
起きても誰かと話す気にもならないので、ひたすら寝た振りをしていた。
フィーロは、基本的には傍にいたが、たまに部屋を出たりしていたので、敢えて意識が戻ったことは知らせなかった。
今、何の話をしていいか分からなかったからだ。
さすがに排泄の欲求には勝てず、ふらふらとベッドから起き上がったところをフィーロに見つかってしまった。
「目が覚めたのか!大丈夫か?」
「尿意には勝てませんでした…」
「あっ!そうだな!!」
叫んで、フィーロは付き添ってくれた。
「ちょっと、もういいです!出てってください!!」
「いや、ダメだ!また一人で倒れたらどうするんだ!!」
そのまま付き添われ、丁寧に淫部を拭いてもらうという、罰ゲーム的な処置を受けさせられた。
羞恥心という言葉が頭をぐるぐるして、居た堪れない気持ちになった。
そうして、またベッドに横になり、私はまた寝た振りをしようとした。
「レイ、どこまで聞いていた?」
フィーロは低い声で問う。
その顔は、つらそうにも見え、忌々しいものを見るようにも思え、何を考えているのか判断しかねる表情だった。
「見てはいないですけど、フィーロ様がアンは幸せか?と聞いたところから、アンジュさんに抱き付くとこ?それ以上は、私が無理でした。」
「そうか…ほぼ全部だな…」
フィーロはそのまま無言だった。
私も特に何も聞かなかった。
そのうち瞼が重くなり、眠りについた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日、まだ微熱があり、またしてもここから離れられないことに、酷くがっかりした。
何とか軽めの食事が取れそうだったので、フィーロが部屋に持ってきたスープをいただくことにした。
フィーロは安心したのか、少し笑顔で食べさせてくれた。
「ちゃんと食べられて良かった。まだ欲しい物があれば言ってくれ。」
欲しい物。
欲しいもの。
私はしばし考えた。
今一番欲しいもの。
一つしかない。
覗き込むフィーロの目を、真っ直ぐ見て私は言った。
「あなたの…愛が欲しいです…」
フィーロは、横を向き片手で顔を覆った。
顔を背ける位、嫌だったか…新婚旅行はここまでかなぁ…とぼんやり考えていた。
次の瞬間、フィーロに抱き締められた。
訳が分からず、反射的に離れようとしてしまう。
でも、フィーロはぎゅっと力を込めて、離してくれない。
「君って人は…こんな俺でも?」
耳元でフィーロが小さく呟く。
体は微かに震えているような気がする。
「あなたは夫としては完璧ですから。愛されていると誤解してしまう位に。あの人は、欲張りで、いつになってもあなただけを選ばないじゃない!だったら、私が大切に愛してあげます。だから、私を愛してください。私には、あなただけです。」
私が今言えることは、全部伝えられた筈だ。
あとはフィーロの出す答えを待つだけ。
「明日、ここを発ちましょう。答えは、新婚旅行先で聞きます。」
「分かった。」
フィーロは答え、部屋を出て行った。
その夜、フィーロは遅くに部屋に戻ってきた。
寝た振りをしている私の唇にそっと口付けして眠りについた。
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