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331.【心を許せる存在】
しおりを挟む蘭世「ちょっと歩くかー…まだ時間いけそ?」
雅臣「全然余裕です。あの、ごちそうさまでした」
ランチを食べてくれたお礼にと梓蘭世はこの店でも奢ってくれた。
セットのアイスティーしか飲んでいない梓蘭世に全額出して貰うのは申し訳ない気もするが、本人がとても機嫌良さそうにしているので素直にごちそうになった。
蘭世「どういたしまして。にしても友達と飯行くなんて久々だし気分良いわ」
雅臣「と、友達!?」
突然の言葉に驚きのあまり目を見開いてしまうが、それを見た梓蘭世は変に冷静になったようだ。
蘭世「……まぁ友達ではねぇか」
雅臣「いや、そこ悩まないでくださいよ」
せっかくの発言を撤回されてしまい思わず突っ込むと梓蘭世は微笑みながら俺の背中を軽く叩いた。
一緒にプールに行った頃よりもかなり気を許してくれてるのが伝わってきて本当に嬉しい。
芸能人から信頼を得たことに少しだけ自信を持ちながら、レストランの帰りに貰った園内マップを開くとどうやら温室が5つもあるらしい。
1番近くの〝ハーモニーガーデン〟に2人で入ればピンクやオレンジ、白などのカラフルなバラに魅了される華やかな空間が広がっていた。
雅臣「おお……綺麗ですね」
もうすぐ10月だというのにまだ少し暑い夏の空気を遮断した温室内は甘い花の香りで満ちている。
ガラス越しに差し込む陽光が気持ちよくて、花を眺めるどの人も自然と笑顔になっていた。
蘭世「バラくらいしか分かんねぇけど中々いいよなここ。でんなら華の種類とか分かるんかな」
雅臣「多分ほとんど分かると思いますよ。あいつホテルに飾られてた華の名前もすぐに分かってましたし」
蘭世「マジ?ちゃんと華道家じゃん」
その一言に何故か俺が嬉しくなってしまう。
なんだかんだでいつも一緒にいる奴が褒められるのはやっぱり嬉しいよな……。
脳内で「何しにお前が喜んでるんだ」と蓮池の怒鳴る顔が思い浮かんでフッと笑ってしまった。
それによく考えたらいくらSSCで一緒に活動しているとはいえ、お互いのことなんてまだよく分かってないよな。
蓮池が実は真剣に華道をやっているなんて日常生活の態度がアレではその場を見ない限り伝わるはずもないと思う。
先輩たちとの関わりはあるようでないような不思議な距離感に、俺はそっと隣を歩く梓蘭世の横顔を見た。
雅臣「あの、もし俺なんかで良ければこれからも息抜きに使ってくださいね」
蘭世「なんだよ突然。てかお前その前に勉強しろよー?俺と同じ大学行くんだろ?」
純粋に先輩たちともっと親密になれたらいいなと思って声をかけるが、梓蘭世は振り返って俺の頭をデコピンして笑った。
蘭世「大学かぁ……梅ちゃんはどこの大学行くんだろ」
ふと梓蘭世は真顔になり綺麗な赤いバラを見ながら呟いた。
蘭世「昔は一緒のとこ行こうって言ってたんだぜ?」
そういえばかなり前にそのことで喧嘩していたような………。
4月の頃のギスギスした2人を思い浮かべるが、以前の俺は偏差値や希望学部も違うのに昔約束した言葉を真に受けるなんて……と正直馬鹿にしていた。
でも、今なら分かる。
友達と一緒の進学先に進めたらどれだけ楽しいか。
俺だってそう考えただけで胸が踊るんだ。
梓蘭世もようやく心を許せる友達に出会えたのに大学で一条先輩と遊べないのは寂しいよな。
雅臣「一条先輩、本当にいい人ですもんね」
蘭世「……そういやお前、梅ちゃんと映画行ってたじゃん?飯何食ったん?」
ところが急に思い出したかのように別の話題を振られて俺は何の疑問も抱かずつい普通に答えてしまう。
雅臣「ああ、それは映画の前にデザートパラダイスに行って___」
蘭世「ほれみろ!!俺にはカレー食いに行ったとか言ったくせにさぁ!!」
雅臣「は!?」
チャットしてやるとスマホを取り出すその姿に大慌てで止めるが、どうやら一条先輩は梓蘭世にデザートパラダイスに行ったことを濁して伝えていたらしい。
そうとは知らずにうっかり俺がバラしてしまい緊張が走る。
雅臣「か、カレーはありました!!うどんも!!嘘では無いです!!」
蘭世「梅ちゃんのメインは大量の甘いもんだろうが!」
雅臣「や、やめなさいよそんな彼女を詮索する彼氏みたいなことして!」
すぐさま梓蘭世のスマホを奪い取りダメですと念を押すが、周りの視線にハッとする。
静かな温室で大騒ぎしたせいか温室内を穏やかに散策する人々の目が一斉に注がれていて痛いくらいだ。
俺は急いで梓蘭世の手を掴んで温室を飛び出し人気のない外の噴水へ逃げ込んた。
蘭世「詮索とかそんなんじゃねぇし!……梅ちゃんは俺の1番の友達なの!!」
雅臣「友達だからこそその趣味は認めてあげるべきです!!」
不貞腐れながら答える梓蘭世に俺は友達にズレた過保護ぶりを発動するのは止めるよう伝えるが肩を竦めるだけで全然効果なしだ。
蘭世「……で?いつまで俺の手握り締めとんだ」
雅臣「へ?」
俺の言葉を遮って梓蘭世は右手で繋いだままの俺の手を指さした。
雅臣「うわっ、あ、あのすみませんっ!!」
ど、どうしよう……!!!
梓蘭世が男と手を繋いで歩いてました……なんて、もしそこら辺の人に撮られていたらなんて言い訳すればいいのか。
だが梓蘭世は焦ってあたり一体をキョロキョロと見渡す俺を見て腹を抱えて笑いだした。
蘭世「んな心配せんでも大丈夫だって!はー…ほんとおもれぇな」
手を離して軽く振りながら歩き出す梓蘭世の指に光るリングを見つけて、恥ずかしさを誤魔化すように無理やり話題を逸らす。
雅臣「それ……そのリング、梓先輩のなんですね」
蘭世「あ?これ?」
それは部室の棚に無造作に投げ置いてあったもので、無くすと困るからと以前俺が机のトレイに片付けたものだった。
少しゴツめのシルバーのリングはてっきり柊か蓮池のものだと思っていたのに梓蘭世のものだったとは……。
雅臣「かっこいいです」
素直に褒めると梓蘭世は左手の薬指に嵌るリングをすっと外した。
蘭世「そう?ならやるよこれ」
雅臣「え!?いやこれ高いんじゃ……」
蘭世「全然。ちょい緩いしお前の方が似合うからやるよ」
そう言って梓蘭世はそのまま俺の右の薬指に嵌めてくれるが、指輪は驚く程にピッタリのサイズだった。
雅臣「……た、大切にします…!!」
俺は指輪なんて一度もつけたことがない。
今日も大須で貰ったネックレスを大切につけてきたくらいで、嬉しすぎて指を空に上げれば何よりもキラキラと輝いていて見えた。
しばらく感動に震えていると、突然後ろから誰かに肩を叩かれる。
邪魔をしないでくれと振り返れば、
三木「婚約指輪ごっこをしてるところ申し訳ないが……」
雅臣「み、み、み、み、三木先輩!?」
そこには仕事帰りなのか麻の黒のジャケットを羽織った三木先輩が立っていた。
驚きすぎた俺の悲鳴で噴水で戯れていた鳥がバタバタと羽ばたき、それを見て梓蘭世はまた大爆笑していた。
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