山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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1年生の放課後3

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まだ1口も手をつけていないのに、大量の食べ物を見るだけでもうお腹いっぱいになった気がする。

柊の頼んだプチコメセットが実に適量で俺も唐揚げ2個とサンドイッチが2切れが籠に入ったそれにすれば良かったと後悔するがもう遅い。

ボリュームのあるサンドイッチを前に何とかこれくらいならいけるかと一切れ掴むと、店員がまた一条先輩の席に注文を取りに行くのが見える。


雅臣「………いやいやいや」


既にホワイトノワール2つのお皿が空いていて、それを下げてもらうついでにまた追加注文しているようだ。


____あの人、腹を壊さないのか!?


一条先輩が頼んだアイスココアやコーヒーゼリーの飲み物、デニッシュ2つの上にはどれも大きなソフトクリームが乗っていたのに全て平らげたのかと戦慄する。

ソフトクリームを4つも食べるなんて、甘党なのは分かっていたが以前梓蘭世が言ったようにこの勢いだと生クリームもそのまま飲みかねない。


夕太「……あれさ、さすがにお腹壊さないかな?」


俺が思ったのと同じことを言う柊は目を細めて一条先輩の様子を眺めるが、大須のクレープの時はまだ序の口だったんだと2人揃って呆然とした。


楓「ソフトクリーム4はちょっとやばいかもね」


俺らはいつの間にか彼女の存在よりもその見事な食べっぷりに目を奪われ心配が勝る。

いい加減俺も食べなければとサンドイッチにかぶりつくが、パンに卵ペーストが詰まりすぎているせいか横からはみ出て落ちてしまった。


楓「汚ぇな……」


蓮池がこうやって端から啜るように食えと味噌カツサンドを食べながら手本を見せてくれるが、その食べ方の方が汚くて呆れ返った。

それにしても彼女が来る前に食べ過ぎの一条先輩を止めた方がいいのでは……。


雅臣「なぁ、止めるのはさすがにお節介かな?」


もし体調を壊したらどうしようと、2人に聞いてみることにした。


夕太「バカ雅臣、尾行してたのバレるじゃん。それに彼女がまだ来てないよ」

楓「ここまで来て見ずに帰るのは癪だからね」


断固として譲らない2人に俺達は頭を寄せあいどうするかを考えるが、ちょうど階段を上がってきた客のコツコツという足音が店内に響く。


「暑苦しいな……全身黒なのほんと何とかなんねぇの?」

「八つ当たりするな、良かったじゃないかカメラマンも決まったことだし」

「なーにが良かっただよ、大体……あれ?」


聞き覚えのある声と甘い香水の匂いに振り返ると、俺らの背後から三木先輩と梓蘭世が現れた。


蘭世「……え、梅ちゃん?何してんの?」

梅生「うわっ、蘭世」


俺らに気づかない梓蘭世はそのまま一条先輩の席まで行って問い詰めるが、仕事終わりなのかその服装は恐ろしく華やかだった。

サングラスをかけた梓蘭世は何よりも目を引くCHANELAのピンクのツイードジャケットを着用していて、レディースでも着こなせるのは驚異的に細いからだろう。

首には同ブランドのパールネックレスを何連も重ねて、細身のジーンズの下からカーフスキンの厚底サイドゴアブーツが覗く。

一方三木先輩は全身黒で決めていて、バケハに黒のシンプルなコットンTシャツ、LOEBEのアナグラムバギージーンズがとてもお洒落だ。

どちらもクソ派手の一言に尽きるが相乗効果のせいか一目見ようとする客で店内がやけに騒がしくなる。

俺もついじっと見つめていたら、おやと片眉を上げる三木先輩と目が合った。


三木「お前らもいたのか?まあここならバレないが制服で歩き回るの何とかしろよ」

梅生「あれ?1年もいたの?全然気が付かなかった」


呆れ声を出す三木先輩に気がつくと同時に一条先輩は俺らを見つけて手を振るが、その手首を梓蘭世が掴んだ。


蘭世「梅ちゃん、何この1人パーティー状態は?これ全部食べたの!?」

梅生「……うるさいな」


まるで浮気が発覚したかのように問い詰める梓蘭世に一条先輩はため息をついてぷいと顔を逸らした。


蘭世「いやホワイトノワールの皿2個もあるし……それ以外にもめっちゃあるし!てかこれ俺のパーカーだし!」

梅生「せっかく邪魔が入らないと思ったのに」


……………ん?

俺のパーカー?


梅生「だって放ってあったからさ。誰かに盗まれたら危ないだろ」


一条先輩ぽくないと思ったBALENTIAGAのパーカーは梓蘭世のものだったのか…!?

謎が解けてようやくスッキリしたが、梓蘭世はまだ納得がいかないのかしつこく問い詰める。


蘭世「……梅ちゃん、俺分かるからね。俺のパーカー着てたらもしバレても誰かと見間違えたんですよって言い逃れできるもんな、な?」


お見通しだと言わんばかりの梓蘭世にそんなこと……と一条先輩は薄笑いを浮かべているが底が知れずに畏れてしまう。


蘭世「言い逃れもできるし、ソフトクリーム食べて冷えるから俺のパーカー着てたんだろ!!」


何に発狂しそうになってるのか分からないが、梓蘭世は一条先輩が1人内緒で食べに来たのがどうにも許せないのだろう。

こんなに甘味ばかり摂取していたら将来の病気を疑うレベルなので心配する気持ちも分からなくもないよなと思うと、


夕太「……彼女はどうなったんよ」


柊がボソッとシラけた声を出す。


雅臣「……多分、違うと思う」


ギャーギャー言い争う2年は放っておき、一条先輩が彼女と待ち合わせ説は確実にないと察した俺らはつい蓮池を責めるように見てしまった。


楓「何だよ紛らわしいな!!」


不貞腐れたように残りのアイスココアを一気にストローで吸う蓮池を見て、何しにこんなとこまで来たのか馬鹿らしくなって俺も残りのサンドイッチを食べる。


夕太「ていうか何でミルキー先輩達もここ来たのさ、用事あったんじゃないの?」

三木「その用事が終わったんだよ。お前らは何してるんだ?」


柊の質問に答える三木先輩に、〝一条先輩が学校終わり彼女とデートするんじゃないかと思って後をつけて来ました〟だなんて言えるはずもない。

ましてやそんなこと言おうものなら梓蘭世が余計に彼女だなんだと発狂するのが目に見える。

程よい言い訳を考えているのは俺だけでは無いようで、


楓「あー……勉強会とか、はい」

夕太「そ、そうそう!勉強会!今日無しになっちゃったからせめてノート確認したりはしよう!みたいな?」


機転の利いた蓮池の返答に、柊は海外アニメのカナリアのような上目遣いをして俺にも頷けとパチパチ瞬くから慌ててそれに倣い俺も頷いた。


三木「そうか……なら今からここで勉強会やるか?蘭世、時間あるから今からいいだろ?」

楓「えっ」


まさか三木先輩がそこに乗るとは思わなかったのか、勉強したくない蓮池が言わなきゃ良かったとガックリ頭を下げた。


蘭世「あーそれなら机広いとこ移動する?下行って聞いてくる…って、梅ちゃんストップ!まだ食べるのかよ!」

梅生「俺のお金で食べるのに残すわけないだろ、蘭世は黙ってて」


言い合う2年を横目に俺はサンドイッチをもう1切れ摘み、一条先輩の彼女騒動から本来の目的を取り戻せて良かったと笑ってその様子を眺めた。


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