114 / 394
1年生の放課後3
しおりを挟むまだ1口も手をつけていないのに、大量の食べ物を見るだけでもうお腹いっぱいになった気がする。
柊の頼んだプチコメセットが実に適量で俺も唐揚げ2個とサンドイッチが2切れが籠に入ったそれにすれば良かったと後悔するがもう遅い。
ボリュームのあるサンドイッチを前に何とかこれくらいならいけるかと一切れ掴むと、店員がまた一条先輩の席に注文を取りに行くのが見える。
雅臣「………いやいやいや」
既にホワイトノワール2つのお皿が空いていて、それを下げてもらうついでにまた追加注文しているようだ。
____あの人、腹を壊さないのか!?
一条先輩が頼んだアイスココアやコーヒーゼリーの飲み物、デニッシュ2つの上にはどれも大きなソフトクリームが乗っていたのに全て平らげたのかと戦慄する。
ソフトクリームを4つも食べるなんて、甘党なのは分かっていたが以前梓蘭世が言ったようにこの勢いだと生クリームもそのまま飲みかねない。
夕太「……あれさ、さすがにお腹壊さないかな?」
俺が思ったのと同じことを言う柊は目を細めて一条先輩の様子を眺めるが、大須のクレープの時はまだ序の口だったんだと2人揃って呆然とした。
楓「ソフトクリーム4はちょっとやばいかもね」
俺らはいつの間にか彼女の存在よりもその見事な食べっぷりに目を奪われ心配が勝る。
いい加減俺も食べなければとサンドイッチにかぶりつくが、パンに卵ペーストが詰まりすぎているせいか横からはみ出て落ちてしまった。
楓「汚ぇな……」
蓮池がこうやって端から啜るように食えと味噌カツサンドを食べながら手本を見せてくれるが、その食べ方の方が汚くて呆れ返った。
それにしても彼女が来る前に食べ過ぎの一条先輩を止めた方がいいのでは……。
雅臣「なぁ、止めるのはさすがにお節介かな?」
もし体調を壊したらどうしようと、2人に聞いてみることにした。
夕太「バカ雅臣、尾行してたのバレるじゃん。それに彼女がまだ来てないよ」
楓「ここまで来て見ずに帰るのは癪だからね」
断固として譲らない2人に俺達は頭を寄せあいどうするかを考えるが、ちょうど階段を上がってきた客のコツコツという足音が店内に響く。
「暑苦しいな……全身黒なのほんと何とかなんねぇの?」
「八つ当たりするな、良かったじゃないかカメラマンも決まったことだし」
「なーにが良かっただよ、大体……あれ?」
聞き覚えのある声と甘い香水の匂いに振り返ると、俺らの背後から三木先輩と梓蘭世が現れた。
蘭世「……え、梅ちゃん?何してんの?」
梅生「うわっ、蘭世」
俺らに気づかない梓蘭世はそのまま一条先輩の席まで行って問い詰めるが、仕事終わりなのかその服装は恐ろしく華やかだった。
サングラスをかけた梓蘭世は何よりも目を引くCHANELAのピンクのツイードジャケットを着用していて、レディースでも着こなせるのは驚異的に細いからだろう。
首には同ブランドのパールネックレスを何連も重ねて、細身のジーンズの下からカーフスキンの厚底サイドゴアブーツが覗く。
一方三木先輩は全身黒で決めていて、バケハに黒のシンプルなコットンTシャツ、LOEBEのアナグラムバギージーンズがとてもお洒落だ。
どちらもクソ派手の一言に尽きるが相乗効果のせいか一目見ようとする客で店内がやけに騒がしくなる。
俺もついじっと見つめていたら、おやと片眉を上げる三木先輩と目が合った。
三木「お前らもいたのか?まあここならバレないが制服で歩き回るの何とかしろよ」
梅生「あれ?1年もいたの?全然気が付かなかった」
呆れ声を出す三木先輩に気がつくと同時に一条先輩は俺らを見つけて手を振るが、その手首を梓蘭世が掴んだ。
蘭世「梅ちゃん、何この1人パーティー状態は?これ全部食べたの!?」
梅生「……うるさいな」
まるで浮気が発覚したかのように問い詰める梓蘭世に一条先輩はため息をついてぷいと顔を逸らした。
蘭世「いやホワイトノワールの皿2個もあるし……それ以外にもめっちゃあるし!てかこれ俺のパーカーだし!」
梅生「せっかく邪魔が入らないと思ったのに」
……………ん?
俺のパーカー?
梅生「だって放ってあったからさ。誰かに盗まれたら危ないだろ」
一条先輩ぽくないと思ったBALENTIAGAのパーカーは梓蘭世のものだったのか…!?
謎が解けてようやくスッキリしたが、梓蘭世はまだ納得がいかないのかしつこく問い詰める。
蘭世「……梅ちゃん、俺分かるからね。俺のパーカー着てたらもしバレても誰かと見間違えたんですよって言い逃れできるもんな、な?」
お見通しだと言わんばかりの梓蘭世にそんなこと……と一条先輩は薄笑いを浮かべているが底が知れずに畏れてしまう。
蘭世「言い逃れもできるし、ソフトクリーム食べて冷えるから俺のパーカー着てたんだろ!!」
何に発狂しそうになってるのか分からないが、梓蘭世は一条先輩が1人内緒で食べに来たのがどうにも許せないのだろう。
こんなに甘味ばかり摂取していたら将来の病気を疑うレベルなので心配する気持ちも分からなくもないよなと思うと、
夕太「……彼女はどうなったんよ」
柊がボソッとシラけた声を出す。
雅臣「……多分、違うと思う」
ギャーギャー言い争う2年は放っておき、一条先輩が彼女と待ち合わせ説は確実にないと察した俺らはつい蓮池を責めるように見てしまった。
楓「何だよ紛らわしいな!!」
不貞腐れたように残りのアイスココアを一気にストローで吸う蓮池を見て、何しにこんなとこまで来たのか馬鹿らしくなって俺も残りのサンドイッチを食べる。
夕太「ていうか何でミルキー先輩達もここ来たのさ、用事あったんじゃないの?」
三木「その用事が終わったんだよ。お前らは何してるんだ?」
柊の質問に答える三木先輩に、〝一条先輩が学校終わり彼女とデートするんじゃないかと思って後をつけて来ました〟だなんて言えるはずもない。
ましてやそんなこと言おうものなら梓蘭世が余計に彼女だなんだと発狂するのが目に見える。
程よい言い訳を考えているのは俺だけでは無いようで、
楓「あー……勉強会とか、はい」
夕太「そ、そうそう!勉強会!今日無しになっちゃったからせめてノート確認したりはしよう!みたいな?」
機転の利いた蓮池の返答に、柊は海外アニメのカナリアのような上目遣いをして俺にも頷けとパチパチ瞬くから慌ててそれに倣い俺も頷いた。
三木「そうか……なら今からここで勉強会やるか?蘭世、時間あるから今からいいだろ?」
楓「えっ」
まさか三木先輩がそこに乗るとは思わなかったのか、勉強したくない蓮池が言わなきゃ良かったとガックリ頭を下げた。
蘭世「あーそれなら机広いとこ移動する?下行って聞いてくる…って、梅ちゃんストップ!まだ食べるのかよ!」
梅生「俺のお金で食べるのに残すわけないだろ、蘭世は黙ってて」
言い合う2年を横目に俺はサンドイッチをもう1切れ摘み、一条先輩の彼女騒動から本来の目的を取り戻せて良かったと笑ってその様子を眺めた。
28
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
嘘をついたのは……
hamapito
BL
――これから俺は、人生最大の嘘をつく。
幼馴染の浩輔に彼女ができたと知り、ショックを受ける悠太。
それでも想いを隠したまま、幼馴染として接する。
そんな悠太に浩輔はある「お願い」を言ってきて……。
誰がどんな嘘をついているのか。
嘘の先にあるものとはーー?
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる