山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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97.【場所決め】

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夕太「えー、じゃあ体育館でやろうよ」


ウンウンと唸る蓮池を横に柊はそう提案する。

俺達SSCは絶賛期末テストの勉強会を部室でしていて、今回土日を挟むのを懸念した三木先輩は蓮池が単語を忘れないよう何度も諦めずに覚えさせている。

残りのメンバーはそれぞれ勉強をしながら前回流れてしまった文化祭の要項を決めている最中だ。

生徒会に提出する申請用紙にいくつかの項目があり最初の何をやるかに対して、


〝作詞作曲をして歌う〟


とサークル名の通りに書いたが、次の項目の場所について柊が体育館を推したところだ。

柊は梓蘭世が奪ってきたゲーミングチェアに座ってぐるぐると勢いよく回っているが、さすがに目が回るだろうと心配になって1回手で止める。


雅臣「__そもそも文化祭ってどういう日程なんですか?」


場所決め以前に10月に開催される2日間がどんな様子なのかをまず先輩達に聞いてみた。


蘭世「1日目はクラスの出し物。展示とかダンスとか劇とか、クラスで決めたことやんの」

梅生「喫茶店や食事処とかもあるけど全部教室かな。山王受験を考えてる人達もくるから教室内でやるのが基本だね」


……へぇ。

ちょうど勉強に行き詰まっていたのか2年の説明を全員顔を上げて聞く。


蘭世「劇とかやりたいなら夏休み集まんなきゃだけど、展示なら夏休み終わってからでも余裕だし、ほんとそこはクラスによる」


梓蘭世が詳しく教えてくれて自分のクラスを思い出すが、うちはまだほとんど話が決まっていなかった。

だが部活に力を入れてる奴が多いので、もしそっちを優先するとなると短期間でやれるものになる気がする。


蘭世「で、2日目が部活メイン。今場所決めようとしてるのも2日目な」

三木「ちなみに運動場と第2体育館は運動部がメインだから文化部は使用不可だ」


三木先輩が話に加わり、部活やサークルの活動内容を何らかの形で披露するのが2日目だと教えてくれる。

運動部は体験や見学ができるよう運動場を使い、楽しくゲームや試合を行うところが多いらしい。

そして文化部は文化祭が唯一アピールする場のところも多く、目立つ場所で披露したい理由から毎年1番人気の場所が第1体育館だそうだ。

来年の新入部員獲得のためにどこも2日目に力が入るのは部活動が盛んな山王らしく、とても分かりやすい日程だった。


蘭世「第1体育館は部活とサークル併せて5しか通らないけど例年10は超えるからジャンケンで決めんのよ」

梅生「軽音合唱ダンス、演劇に吹奏楽…あとはサークルだと漫才とか?」


2人の話を改めてよく聞けば結構文化部の数が多く、俺らみたいに突発的にできたサークルもある訳で……。

体育館獲得は熾烈な争いになりそうだな。


夕太「体育館はどの時間が1番盛り上がるの?」

梅生「人が多いって意味だと午後の1番目と2番目かな」

楓「午後飯食ってちょうど疲れてきて、休憩がてら座れる体育館に流れてくるってことか」


一条先輩の説明に勉強に飽きた蓮池が客の流れを予測するが、逸れた意識を集中させる為に三木先輩がシャーペンでノートを叩いて引き戻す。

確かに何かを披露するのに客が少なければ意味が無く、しかもジャンケンだなんて場所も人気の時間帯も狙うのは実に大変に違いない。


夕太「じゃあうちも体育館午後イチがいい」


その話を聞いた柊は人気の場所と時間を指定するが俺は出来ることならそこは避けたかった。

大舞台で自作の曲を歌うだなんて想像しただけで恥ずかしいのに、天真爛漫な柊はジャンケンも面白そうと両手を挙げながらまたくるくるとゲーミングチェアで回り出す。


蘭世「ジャンケン大会ってなんでかわからんけどめっちゃ盛り上がるんだよな、希望してない部のヤツらまで見に来るし」


男子校らしく余程盛り上がるのか、昨年の様子を思い出した梓蘭世はとても楽しそうに話す。


雅臣「ジャンケン大会はどこでやるんですか?」

蘭世「これも第1体育館。ど真ん中で各部の代表が集まって生徒会の前で正々堂々ジャンケンすんの」

梅生「それを見守りに部員全員来るとこも多いから…まあ結局ほとんどの部活が体育館に集まるね」


笑顔の2人に合唱部と鉢合わせるのは避けられないのかとまた1人戸惑ってしまう。

合唱部は例年体育館を希望してるというのに、もしうちのサークルが同じく申請したら通る通らない以前にジャンケン大会でバッティングは確実だ。


……桂樹先輩はどう思うだろうか。


あの人のことだからそつ無く立ち回ってくれるだろうけど要らぬ気を回させるのは良くないよな。

桂樹先輩もそうだが、目の前の元合唱部の先輩達も皆ができるだけ気まずくならない方法を考えるしかない。

とりあえず1年生の誰かがジャンケンした方が無難だと結論づけ、この際だからと別の気になっていることも聞くことにした。

さっきから柊は体育館を推しているが、俺が恥ずかしい以前にまず体育館のような人の多い場所を梓蘭世はどう思っているのかが大事だよな。


雅臣「あのー、……梓先輩もいくら指揮とはいえ場所はよく考えた方がいいですよね?」

蘭世「まぁ、それはそうだけど」

雅臣「それに普通に気まずくないですか?運良く体育館が取れて合唱部と同じとか」


口を濁す梓蘭世を見て、ついでに先輩達の意見も聞いてしまおうとそれぞれに視線を移すがこれに関しては明らかにどうでも良さげだ。

もしかして俺が思うより先輩達は気にしていないのだろうかと疑うが、


梅生「そっか。……藤城、俺そこまで考えてなかった」


一条先輩は単純にそこまで思い至らなかったようで、とりあえず思いつく限りの様々な可能性を説明する。


雅臣「俺らも向こうも体育館希望数が5を切れば確実に通ってバッティングしますよ?」


梓蘭世の拡散問題に加えて互いにあまり顔を合わせたくないのなら体育館は避けた方がいいと先輩達に提案した。


夕太「えーそんな気にする?勝ちたくない?普通に」

楓「夕太くん勝負事好きだから……」


しかし俺の心配を他所に柊の目つきはジャンケンに燃えているようで、椅子で回るのを止めて手をグーの形に掲げている。

柊に詳しい蓮池からギャンブラーの要素ありと聞いて呆れてしまうが、どうやら柊は最早ジャンケンで負けたくないだけになっている気もする。


蘭世「意外、夕太熱くなるタイプかよ」

夕太「絶対負けるのやだ。ジャンケンは俺がやるから」


俺はジャンケン負けたことないから!とドヤ顔の柊を一旦そこじゃないだろと窘める。

俺の言いたいことと食い違ってる気がして柊に説明しようとするが蓮池が手で制した。


楓「てか先輩達次第だろ?俺らはどこでもいいというか」

雅臣「どこでも良くないって。大体、そんな多くの人がいるとこで歌うなんて恥ずかしいだろ」


俺は本音で真剣に話しているというのに、蓮池は鼻で笑う。


楓「俺は別に、てか陰キャは急に人前で嬉々として歌い出すから大丈夫だって」

雅臣「はぁ!?」


全然大丈夫じゃないし嬉々として歌うわけないだろ!


楓「……とりあえず先輩達はどう思ってるんですか?合唱部のことにしろ、体育館でやることにしろ」


それでもため息をつく俺の気持ちを組んだのか蓮池は先輩達にハッキリと意見を求めてくれた。




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