ヤンキー上がりの浜崎君は眼鏡ちゃんを溺愛してます

きぬがやあきら

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放課後

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 ヤワとはなんだ。

 これでも小学校から高校まで通しで皆勤賞を取り続けている、健康優良児なのに。

 あんな風に乱暴に扱われて平気でいられる方がおかしいわ!

 馬鹿にした口調に思わず反論しそうになりながら、そんな状況ではない事を思い出し声を飲み込んだ。

 とりあえず黙ったまま、唯一自由になる頭だけを声のする方へ向ける。

 まず男性のものらしい大きく、踵のつぶれた皮靴を履いた足元が見えたが、首だけの回転ではここまでが限界だ。

 わずかにためらわれたが、身体ごとごろりと回して思い切ってその人物を見上げた。

 もうここまでくれば今更多少何をしても大差ないような気がしたからだ。

 開き直ったのか、徐々になるようになれという心境になってきた。

「あなた……」

 男の顔を拝んで深雪は眼を見張った。よくよく考えてみれば意外でも何でもない。

 先日の公園でとんでもない真似をしてくれた、杉原とかいう男だ。

「覚えててくれるとは光栄だね。まぁ、忘れたくっても忘れらんねえよな」

 含みのある物言いにむっとする。あんなこと、思い出したくもない。

 忘れて、なかったことにするはずだったのに。

 癪だったので深雪は、

「知らないわよ、あなたなんか。ただあんまり靴が汚いからどんな阿呆なのか想像してただけよ」

 憎まれ口を叩いてやる。

 深雪も和貴も酷い仕打ちを受けたのだから。これでも発言は抑えた方だ。

「へぇ、この状態でそんな口きくなんて、度胸だけは一丁前だな。また泣かされたいのか?」

 ……ほんとに、頭に来るこの男……!!

 深雪は今まであまり人を憎んだことがなかったのできちんと言葉で認識したことがない。

 だが、この男だけははっきりとわかる。嫌いだ!

 嫌いとはこういう感情を言うのだ!

「泣かすって、私泣かないわよ」

 こんな男の前で、二度と泣いてやるものか。

 二度と負けたくない。こんな男に、こんな卑怯なやり方で。

 泣いたら負けのような気がする。そして自分が負けるということが、和貴が負けることにも等しい気がする。

 だってこの男は和貴が目的で自分をここまで連れて来たのだから。

 「浜崎君をどうする気なの?」

 彼を呼び出して何をする気なのか。一度謝らせただけでは足りないのか。

「人のこと言ってる場合か? 自分がこんな目にあわされて。お前浜崎の餌扱いなんだぜ?」

「うるさいな。浜崎君こんなところに呼び出してどうする気よ!」

 どんな扱いなのかはわかってる。私がいるから浜崎君はこんな面倒なことに巻き込まれるのだ。

 一人だったら何をも恐れる必要のない彼が。

「バカだなお前。お前が浜崎に巻き込まれてんだろが。」

 馬鹿だと思ってる人間に馬鹿呼ばわりされて一瞬頭が真っ白になる。

「あっ……あなたに馬鹿呼ばわりされる筋合いないわよ!! 何のためにこんなことしてるのか聞いてるんじゃない。またご自慢のお友達と浜崎君いじめようっていうの!?」

「いーや、そんなことのためにここまで目立つことしねぇよ」

 サシでやったら負けないからなとかなんとか、随分都合の良いことばかり述べ始めたので、サシでやって勝てるならあんな振る舞いは必要のないことをどうやったらわからせることが出来るか、10秒ほど深雪は思案したが……

 馬鹿だから無理!

 という結論に早々と達した。

 本当に本気でそんなことを言ってるのだとしたら、気の毒なほど頭が弱いに違いない。

「じゃあなんでこんな……」

 100歩以上譲ってやって、話を先に進めるため強い・弱いという問題はなかったことにしてやる。

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