ヤンキー上がりの浜崎君は眼鏡ちゃんを溺愛してます

きぬがやあきら

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放課後

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「お前、何で浜崎に惚れられてんだ?」

 またしても焦点のズレた答えに、身体どころか頭が痛くなってきた。この人とはまともに会話出来ないのだろうか。

 ちょっともう、さっき私を連れて来た人はどこへ行っちゃったのかしら。

 杉原との会話はあきらめて、深雪はまたひと回転して部屋をぐるりと見渡した。

 やはり薄暗くて特徴の見つけにくい部屋だ。
 
 だが、目が慣れて来ると遠いと思っていた天井には大きめの照明器具が取り付けられているのがわかった。

 少し高くなっているステージの様な台があり、扉は体から見て前方に開きのものが二面。

 壁を囲むようにソファーやテーブルが並んでいる。

(そういえば、クラブって言ってたかも)

 先程の男の言葉を思い出す。

「聞いてんのか!?」

 それはこっちが聞きたい。

 無視してやろうとそっぽを向くと、予想外にも肩を抱き起こし、上半身ぐるぐる巻きのまま床に座らされる。

「知らないわよ!そんなこと。浜崎君に聞いてよ!」

 床に転がってるよりはいくらか楽で、思ったより大きな声が出た。

 杉原はにやりと満足げに笑い、肩をつかむ。

「そう。浜崎君に聞かないとな。」

(気色悪い、この人・・!)

 必要以上に近くにある杉原の顔から眼をそむけながら深雪は考える。

 そんなこと聞いてどうするというのだろう。自分が誘拐された理由には不十分だ。

 この人は阿呆だから、言うことをいちいち気にするだけ損なのだろうか。

「そしたら、お前はどうなんだ?」

「え?」

「浜崎のどこがいいんだよ。顔か?」

 答えの恥ずかしさも手伝ってそっぽを向いたまま無視をしたが、杉原は続ける。

「あと・・ああ、あれか、案外うまいのか? お前意外と好きなのか?」

 一瞬では言葉を理解しきれなかったが、間をおけば奥手な深雪でもさすがにセリフの趣旨がわかった。

「違うって? まあ、あんな硬派気取ったやつたいしたことないだろーな」

 無視は続けたつもりだったが、発言の下品な含みにむっとしたのが態度に出たようだ。

「じゃあどれも違うんなら? 脅されたとか?」

 ニヤニヤする彼の推測はあながちはずれでもない。当初は確かにそんなところもあった。

 動揺した深雪に杉原はさらに詰めよった。

「だよなあ。したらこんな目にあわされて……んっとに迷惑だよな。そんな男とは別れた方がいいよなあ」

 そんな風に思ったことはなかった。和貴と付き合い始めて過ごした三日間を思い出す。

 なかなか普段遭遇しない状況におかれたりはしたが、別れた方がいいなんて……



 ……思ったことはない。


(……て)

「ち、近い!! 放してよ!」

 気がつくと、世界で唯一嫌いと認定した男の顔がもの凄い至近距離にある。
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