ヤンキー上がりの浜崎君は眼鏡ちゃんを溺愛してます

きぬがやあきら

文字の大きさ
12 / 43
放課後

7

しおりを挟む
(気持ち悪い!!)

 造作的に見れば杉原の顔自体はそれほど醜いものではなかったが、彼女から見れば奇人変人、間近で見せられれば気持ち悪くなって当然だ。

 つんと更に上体を遠ざけられたことを確認してから、杉原は深雪の耳元で囁く。

「ほんとはよ、お前いじめてあいつをうちのコマにしてやろうと思ってたんだけどよ。丁度今晩でかいヤマがあってさ。でも」

 耳とうなじに息がかかって益々おぞましい。寒気が襲って身体が縮みあがった。

「……っ」

「お前が素直に俺の女になるっていうんなら、いじめんのやめてやってもいいぜ?」

「は??」

 思わぬ展開に耳を疑い、つい目を向けてしまう。

 するとまさしく目と鼻の先に杉原のそれがあり、心なしか重くなったと感じた体には、杉原がのしかかっていた。

「なにーっっ!! なにするのっ!!」

 腹筋だけの力では耐え切れず、再び床に転がってしまう。
 
 2・3回、回転して移動を試みるが大した時間稼ぎにはならない。

 なにを言い出すのかこの男は。

 この前会った時は冴えないとかブスだとか言ってさんざんコケにしていたのに……。

「あなた……、私みたいなの、興味……」

「案外大人しい女もいいなって。今まで派手でうるせえのばっかりだったからよ。OBはごちゃごちゃうるせーかもしれねーけど、浜崎一人いなくたって負けやしねえよ。第一俺はあんな奴と手なんか組みたくねえんだ」

 訪ねてしまったのに聞きたくもない。誰もそんな理由知りたくないのに。

「おめえが俺に乗り換えればあいつのへこむとこも見られるし、お前もこの先狙われることもなくなる。いい話だろ? 俺だって結構うまいぜ??」

 ぱくぱくと、まさしく阿呆のように、こちらの口だけが鯉のように動き、言葉にならない。

 これは、まさに洒落にならない事態ではないか??

 冷静にならなければいけないと感じながらも、とても冷静になんて考えをまとめられなかった。

「こないでよ!!!」

 停止した思考とは別に、ただ本能だけが警鐘を鳴らす。

 某アイドルのコンサート後夜10時過ぎのローカル線で、酔っ払いと同じ車両の電車に乗った時よりもはるかに嫌な予感がする!!

 それは杉原が、酔っ払いよりもずっと無茶をすることが分かっているからだ。

 実際に頭でわかっていなくても、身体が記憶している。

「いやっ! 近づかないで!」

 何とか転がって、壁伝いに立ちあがってよろよろとドアにすがりついた。

 が、全身で押してもびくともしない。

「オイオイ、何が嫌なんだ? あいつは所詮一匹狼だし、いずれ不動とやれば勝ち目はねえ。トップは俺だ、いい話だろ? まぁムリヤリってのも・・」
 
 一歩、杉原が近づいた。

 気狂きちがいの様に扉に体をぶつけるが、開かない!

 開かないのだから違う方法を探さなければいけないのに頭がそこまで働かない。

「俺は嫌いじゃねえけど?」

「嫌よ!」

 とにかく嫌だ! 付き合うのも、これ以上触られるのも。どうしたら逃れられるのだろう!?     

「嫌! 助けてーー誰か! 開けてよ!!」

 クラブというからには部屋は完全防音の作りになっているに違いない。

 勿論、今深雪はそんなこと考えている余裕はなかったが―――とにかく声を出さずにはいられなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

処理中です...