22 / 43
京都へ
3
しおりを挟む
(可愛……)
純粋に思うと、頭に血が昇る。
他人前で破顔しそうになり、ぐっと奥歯を食いしばった。
白のブラウスに紺色のワンピース、その上に羽織った少し大きめのパーカーが余計に可憐さを引き立てている。
それに…………
「髪………」
いつもと違い、めずらしく髪をおろしている。
しかも顎回りのラインから、ふんわりと緩いウエーブがかかっている。
「あ、これ? 三つ編みのあとついちゃって……このままでも行けるって鵜呑みにしちゃったけど、やっぱり変かな?」
深雪は慌てて癖を伸ばそうと、髪を撫でつけ始めた。
「いや、そのままでいいんだ。すごく」
和貴は無駄に震えようとする拳を開いて、とっさに押し留めていた。
ふわふわと、優しく弾むカーブに指を差し込んで掬い上げた。
「すごく、可愛いから……」
「えっ?」
髪に触れられて、深雪の頬にさっと赤みが走った。
ほぼ無意識の行動ながら、深雪の反応に和貴もカーッと耳が熱くなる。
それでも、和貴は顔を伏せぬように必死にふんばった。
可愛いもんは可愛く、本心を口にしたのだ。恥じて俯くなど、男らしくない。
「お、来たな。――あれ?」
中途半端なタイミングで、光一がトイレから戻って来た。
動かなくなった和貴と深雪の姿を目にして、首をかしげる。
「なにあれ? どうしたの? 新しい壁ドン的なやつ?」
手を拭きながら、呑気な声でお道化ていた。
「ほっといて行こ! ……もう! 深雪、四十分にここで待ち合わせね!」
半ば光一を引きずるようにして、友香は足早に駅を出る。
(まったくあの二人には付き合ってらんない! 聞いてるこっちが恥ずかしいわ)
女子の髪に触れて、平気でキザったらしい台詞を吐くくせに。
あの男は照れるから、尚癖が悪い。
自分までむず痒くなる前に退散を決め込んだ。
「……あっ、ありがとう。私たちも……」
「ああ、行か、なきゃな」
何とかうつむかずにこらえた和貴は、自らの成長を密かに感じていた。
「ちぇっ、何だよアレ」
仲睦まじく出発する二人を尻目にぼやく青年がひとり。
「ああ、浜崎と植田? 付き合ってんだって?」
この時期は高台寺のライトアップイベントがあるため、祇園四条駅を散策場所先に選ぶ生徒も少なくない。
藤原拓也らもまた、安易に行き先を選んだひと組だった。
しかし悲しいかな、周囲はカップルばかりだ。
(だって植田さんが情報誌見てたの知ってたから……。だから選んだんだ。なのに……浜崎が一緒だなんて聞いてなかった!)
というかあいつと付き合ってるなんて寝耳に水だ。
「なんであいつと付き合ってんだ? どういう事だよ、いつの間に!?」
「さぁな。気づいたら一緒にガッコ来てたぞ。ちょーどお前しばらく休んでたしな」
友人――黒い短髪に、上下ジャージ姿の原田悟はSwitchのプレイ画面から目をそらさず答える。
悟にとっては友人の恋愛事情よりも、目の前のモンスター退治の方が重要だった。
深雪たちを見て、息巻いてるのは拓也一人だ。拓也は深雪らと同じB組のクラスメイトだった。
純粋に思うと、頭に血が昇る。
他人前で破顔しそうになり、ぐっと奥歯を食いしばった。
白のブラウスに紺色のワンピース、その上に羽織った少し大きめのパーカーが余計に可憐さを引き立てている。
それに…………
「髪………」
いつもと違い、めずらしく髪をおろしている。
しかも顎回りのラインから、ふんわりと緩いウエーブがかかっている。
「あ、これ? 三つ編みのあとついちゃって……このままでも行けるって鵜呑みにしちゃったけど、やっぱり変かな?」
深雪は慌てて癖を伸ばそうと、髪を撫でつけ始めた。
「いや、そのままでいいんだ。すごく」
和貴は無駄に震えようとする拳を開いて、とっさに押し留めていた。
ふわふわと、優しく弾むカーブに指を差し込んで掬い上げた。
「すごく、可愛いから……」
「えっ?」
髪に触れられて、深雪の頬にさっと赤みが走った。
ほぼ無意識の行動ながら、深雪の反応に和貴もカーッと耳が熱くなる。
それでも、和貴は顔を伏せぬように必死にふんばった。
可愛いもんは可愛く、本心を口にしたのだ。恥じて俯くなど、男らしくない。
「お、来たな。――あれ?」
中途半端なタイミングで、光一がトイレから戻って来た。
動かなくなった和貴と深雪の姿を目にして、首をかしげる。
「なにあれ? どうしたの? 新しい壁ドン的なやつ?」
手を拭きながら、呑気な声でお道化ていた。
「ほっといて行こ! ……もう! 深雪、四十分にここで待ち合わせね!」
半ば光一を引きずるようにして、友香は足早に駅を出る。
(まったくあの二人には付き合ってらんない! 聞いてるこっちが恥ずかしいわ)
女子の髪に触れて、平気でキザったらしい台詞を吐くくせに。
あの男は照れるから、尚癖が悪い。
自分までむず痒くなる前に退散を決め込んだ。
「……あっ、ありがとう。私たちも……」
「ああ、行か、なきゃな」
何とかうつむかずにこらえた和貴は、自らの成長を密かに感じていた。
「ちぇっ、何だよアレ」
仲睦まじく出発する二人を尻目にぼやく青年がひとり。
「ああ、浜崎と植田? 付き合ってんだって?」
この時期は高台寺のライトアップイベントがあるため、祇園四条駅を散策場所先に選ぶ生徒も少なくない。
藤原拓也らもまた、安易に行き先を選んだひと組だった。
しかし悲しいかな、周囲はカップルばかりだ。
(だって植田さんが情報誌見てたの知ってたから……。だから選んだんだ。なのに……浜崎が一緒だなんて聞いてなかった!)
というかあいつと付き合ってるなんて寝耳に水だ。
「なんであいつと付き合ってんだ? どういう事だよ、いつの間に!?」
「さぁな。気づいたら一緒にガッコ来てたぞ。ちょーどお前しばらく休んでたしな」
友人――黒い短髪に、上下ジャージ姿の原田悟はSwitchのプレイ画面から目をそらさず答える。
悟にとっては友人の恋愛事情よりも、目の前のモンスター退治の方が重要だった。
深雪たちを見て、息巻いてるのは拓也一人だ。拓也は深雪らと同じB組のクラスメイトだった。
0
あなたにおすすめの小説
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜
伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。
ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。
健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。
事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。
気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。
そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。
やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる