「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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妻の行動・クラウディオ視点

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 ソラは遠慮がちに、視線をクラウディオに向ける。

 勝手に喋って咎められないかどうかを、気にしている。

 王太子妃が手ずから料理を切り分け、振る舞って声をかけているのに、家臣が返事を渋るなどありえない。

 レオノールの勝手を許容するようで面白くはないが、クラウディオは目で了承する。

「うまいっす! これ、ただ焼いただけなんて思えないくらい!」

 許諾を受けて、途端に弾けるような笑顔になったソラが、大きな声で賛辞を返した。

「とても、美味しいです。これが兎だなんて……」

「焼いただけで、どうしてこんな」

 感嘆の声が続く中、クラウディオもまたその味わいに驚きを隠せない。

 口の中に残る兎肉は、噛むほどに旨みが溢れ出す。

 臭みは殆ど感じられず、その上に、肉の柔らかさもある。

 普段給仕される食材は料理人の目によって吟味されたものだ。

 しかしながら、それ以上の味わいがあるのはどうしてか。

「でしょ? 嬉しいな~。久しぶりだけど腕が鈍ってなくてよかった」

「それって、冒険道中の話ですよね? ……その、食事は全部、狩りとかして賄っていたんですか?」

「ずっと、ってわけじゃないけどね。深い森に入り込んだ時とかは、やむを得ずよ。街が近くにない時は、食料も補給できないから何でも食べないと」

「じゃあ、鳥とか鹿とかも」

「勿論。それどころか地下道や洞窟の中じゃあイモムシとか蜘蛛の類が食料になった時もあったくらい」

「ひえぇ……」

 話しながらも、レオノールは自分の分の肉をペロリと完食する。

 その健啖ぶりに目を丸くしつつも、兵たちは挙げられた料理のレパートリーに畏怖の念を抱き、ごくりと唾を飲んだ。

 しかし、怯んだのは一瞬で、ソラは目を輝かせると「もっと詳しく聞きたいです」と話題の続きをねだる。

 レオノールのほうは、喜んでと言いたげに口角を上げた。

 残りの2人も、ハッと我に返って、負けじと会話に混じる。

「失礼ながら、私も勇者様のお話をもっと伺いたいです」

「是非俺も……! 地下道とは、北のニブルに広がると聞く、あの地下道ですか?」

 兵たちの話題は尽きることがなさそうだ。

 レオノールもまた満更でもなく笑い声を上げている。

 そんな場面を目にするとは思いもよらず、クラウディオはしばらく眺めてしまった。

 彼らが、レオノールの武功や冒険譚を知りたがるのは無理もない。

 魔王討伐の祝賀の席に、一般の兵は参加していない。

 こうして直接話を聞ける機会があれば、積極的にもなるだろう。

 クラウディオが知り得る範囲以上の、本物の話が聞けるのだから。

 しかし、一方的に会話を楽しんでいる状態を見続けるのも業腹なものだ。

 ……レオノールとの接触を避けているのは、他ならぬ自分なのだが。

「俺は先に戻る。レオノール、馳走になったが、このような騒ぎは二度と起こすなよ。3人は火の始末を見届けて、午後の始業に間に合うように戻れ」

 叱責するのもお門違いな気もして、クラウディオは早々にその場を後にする。
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