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妻の行動・クラウディオ視点
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なぜなら、クラウディオを射るように真っすぐな眼差しが注がれているからだ。
この女の図太く、厚顔で無知で、不思慮なところを、クラウディオは忌み嫌っている。
しかし、虚言で他者を惑わしたり、陥れたりする質ではない気もする。
「……いいだろう。城の者たちが、俺の指示に従わぬはずはないからな」
「お約束いただけて安心しました。では、もう食べるだけなので、これだけは頂いても良いですよね? ちょっと待っててください。お皿の代わりになるもの、取ってきますから」
言っておいて無断で行動するのは本末転倒ではないか?
呆れ返る間もなく、レオノールは身を翻して林の中へと消えていった。
程なくして、レオノールは大きな葉を両腕に一抱えして戻ってきた。
光沢のある深緑のそれは、縁が少し縮れていて、葉脈が太くしっかりしている。
森の中でよく見かける、ゴボウの葉だ。
「お待たせしました。お皿、とはいきませんが……これなら肉汁も受け止めてくれます」
レオノールはささっと何枚かの葉を地面に並べ、火から下ろした肉を切り分けて置いていく。
ナイフをどこで入手したかはさておき、随分と手際がいい。
見事なナイフ捌きには一才の無駄がなく、歴戦の猛者の片鱗が垣間見えた気がする。
(勇者か……伊達ではないらしい)
終始ヘラヘラした態度を見せていたから、すっかり忘れていた。
性格はともかく、戦場では優れた能力を発揮したのだろう。
「さ、どうぞ。塩もスパイスもないですけど、腹が減ってると何でもごちそうですよね」
レオノールは肉を載せた葉を、先ずはクラウディオに差し出した。
ほかほかと湯気の昇る肉の表面には香ばしく焦げ目がつき、肉の中からは脂がじんわりと滲み出ている。
表情はニコニコとして屈託がない。
その自然さに、つい手を出して肉を受け取っていた。
焼きたての肉は熱くて、取り落としそうになる。レオノールが平気な顔をしていたのが嘘のように熱い。
「さ、皆さんもどうぞ。熱いうちに」
勢いに圧倒されて、その場にいた兵士の3人も、共に肉を受け取った。
兵たちは一瞬目を見合わせ、助けを求めるようにクラウディオに視線を投げた。
仕事中に食べてもいいのか。
また、王太子妃自らが焚き火で焼き、振る舞う食事だ。
夫であり上役である王太子を差し置いては食べられない。
誰も訓練された兵士だから表には出さないが、折しも昼近い時間だし、体力を要する職種だ。
これだけ香ばしい香りを嗅がされたら、腹の虫も刺激されよう。
「既に犠牲になった命だ。ありがたく頂こう」
クラウディオが口を開けば、皆、迷いが吹っ切れた顔つきになり頷いた。
一口かじったタイミングを皮切りに、続いて他の者も口をつける。
(ーーう……っ)
「うまい!」
パリ、と表皮が裂けると、嘘のように肉汁が滴った。
唐突に声が上がり、クラウディオはうっかり自分の口から声が出たかと、パッと口元を手で覆う。
「うまいっす……、よね?」
だが、違った。
騒いだのは、一番年若の兵士だった。
名は、確かソラと呼ばれていた。
「うまい? でしょう! 料理係は私じゃないんだけど、焼き物には定評があったのよ。肉が狩れたらレオ焼いて、って言われるくらい」
思わず、声に出していた、といった体のソラに、レオノールは嬉々として話しかけた。
この女の図太く、厚顔で無知で、不思慮なところを、クラウディオは忌み嫌っている。
しかし、虚言で他者を惑わしたり、陥れたりする質ではない気もする。
「……いいだろう。城の者たちが、俺の指示に従わぬはずはないからな」
「お約束いただけて安心しました。では、もう食べるだけなので、これだけは頂いても良いですよね? ちょっと待っててください。お皿の代わりになるもの、取ってきますから」
言っておいて無断で行動するのは本末転倒ではないか?
呆れ返る間もなく、レオノールは身を翻して林の中へと消えていった。
程なくして、レオノールは大きな葉を両腕に一抱えして戻ってきた。
光沢のある深緑のそれは、縁が少し縮れていて、葉脈が太くしっかりしている。
森の中でよく見かける、ゴボウの葉だ。
「お待たせしました。お皿、とはいきませんが……これなら肉汁も受け止めてくれます」
レオノールはささっと何枚かの葉を地面に並べ、火から下ろした肉を切り分けて置いていく。
ナイフをどこで入手したかはさておき、随分と手際がいい。
見事なナイフ捌きには一才の無駄がなく、歴戦の猛者の片鱗が垣間見えた気がする。
(勇者か……伊達ではないらしい)
終始ヘラヘラした態度を見せていたから、すっかり忘れていた。
性格はともかく、戦場では優れた能力を発揮したのだろう。
「さ、どうぞ。塩もスパイスもないですけど、腹が減ってると何でもごちそうですよね」
レオノールは肉を載せた葉を、先ずはクラウディオに差し出した。
ほかほかと湯気の昇る肉の表面には香ばしく焦げ目がつき、肉の中からは脂がじんわりと滲み出ている。
表情はニコニコとして屈託がない。
その自然さに、つい手を出して肉を受け取っていた。
焼きたての肉は熱くて、取り落としそうになる。レオノールが平気な顔をしていたのが嘘のように熱い。
「さ、皆さんもどうぞ。熱いうちに」
勢いに圧倒されて、その場にいた兵士の3人も、共に肉を受け取った。
兵たちは一瞬目を見合わせ、助けを求めるようにクラウディオに視線を投げた。
仕事中に食べてもいいのか。
また、王太子妃自らが焚き火で焼き、振る舞う食事だ。
夫であり上役である王太子を差し置いては食べられない。
誰も訓練された兵士だから表には出さないが、折しも昼近い時間だし、体力を要する職種だ。
これだけ香ばしい香りを嗅がされたら、腹の虫も刺激されよう。
「既に犠牲になった命だ。ありがたく頂こう」
クラウディオが口を開けば、皆、迷いが吹っ切れた顔つきになり頷いた。
一口かじったタイミングを皮切りに、続いて他の者も口をつける。
(ーーう……っ)
「うまい!」
パリ、と表皮が裂けると、嘘のように肉汁が滴った。
唐突に声が上がり、クラウディオはうっかり自分の口から声が出たかと、パッと口元を手で覆う。
「うまいっす……、よね?」
だが、違った。
騒いだのは、一番年若の兵士だった。
名は、確かソラと呼ばれていた。
「うまい? でしょう! 料理係は私じゃないんだけど、焼き物には定評があったのよ。肉が狩れたらレオ焼いて、って言われるくらい」
思わず、声に出していた、といった体のソラに、レオノールは嬉々として話しかけた。
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