「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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アルヴァロ王子の視線・クラウディオ視点

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 謁見の間を退出し、回廊を連れ立って歩く。

 クラウディオは常に一定の距離を保とうとするのだが、今日ばかりは隣に並んで歩いてくれるので、レオノールの気分は天にも昇るかのようだ。

 クラウディオは、レオノールを一度見るとすぐに目を逸らしてしまう。

 けれど、その青い瞳にちらつく迷いの色は誤魔化せず、むしろ強く印象的だった。

 レオノールはクラウディオの横顔を盗み見る。

 その視線に気づいたのか、クラウディオがふとこちらを見た。

 一瞬、視線が絡んだ途端に胸がドキリと鳴り、慌てて目を伏せる。

 ーー何だか妙な雰囲気だ。

 せっかくこっちを見ていてくれているのだから、もっとガッツリ見つめ合わなければ勿体無いのに、できないのだから不思議だ。

「あれは、お前の侍女か」

 このまま沈黙が続くのかと思いきや、クラウディオが思い出したように声を出した。

 問われて顔を上げれば、少し先の回廊の角に直立し、レオノールを待つメリッサがいた。

「はい、メリッサです。私を待っていてくれたのでしょう。メリッサ、おいで」

 手招きするとメリッサがこちらへ駆けてくる。

「申し訳ありません、お邪魔するつもりではなかったのですが……」

「ううん、心配して待っててくれたんでしょ? ありがとう」

 その姿を見て、クラウディオが静かに尋ねる。

「メリッサか。レオノールによく仕えてくれているようだな。部屋へ連れて行ってやってくれ。祝宴まで身体を休めるようにと皇后陛下の仰せだ。それと、謁見の間では立派に勤めを果たしたと、リュシエンナ夫人に伝えてくれ」

「もったいないお言葉でございます。かしこまりました。妃殿下は責任を持ってお部屋へお連れします」

 クラウディオの言葉にメリッサは深々と頭を下げた。

「頼んだぞ」と一言残して、クラウディオは踵を返す。

 遠ざかる背中を見つめながら、レオノールは少しだけ名残惜しい気持ちになった。




 ***




 夜になり、祝宴が始まった。

 広間には無数の燭台が灯され、天井の装飾や壁のタペストリーを煌々と照らし出している。

 長大な宴席には、鳥や城を模した精巧な菓子細工エントルメが並び、献上された香辛料の香りまでもがほのかに漂う。

 料理人が腕によりをかけた自慢の料理の数々だ。

 竪琴や笛の音に合わせ、舞姫たちが軽やかに舞い踊り、場は華やかな色彩と音楽に満ちていた。

 クラウディオは定められた席に着き、杯を手にする。

 この場においては父王の右腕として冷静に、威厳を保って使節団をもてなさなければならない。

 それは王太子として当然であるし、わけもない務めだった。

 ――いつもなら。

 しかし今宵は違う。

 クラウディオの隣の席には、王太子妃レオノールが座している。

 謁見の間で見せたあの姿が、なおも瞼の裏に焼き付いて離れない。

 アクアブルーのドレスに身を包み、赤髪を夜の炎のごとく揺らめかせた彼女は、堂々と人々の視線を受け止めていた。

 一歩一歩の足取りまで、民衆の前に立つに相応しい、磨き抜かれた振る舞いだった。

 見事だと、認めざるを得ない。

 クラウディオがリュシエンナを派遣したのは、レオノールを少しでもに矯正させるためだった。
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