「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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クラウディオの提案

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「あの後は魔獣から私たちをお守りくださったそうで……。ご無礼な振る舞いで大変なご迷惑をお掛けしてしまったことをお詫び申し上げます。私共に落ち度があるのに、恐れ多いことに御身を挺してまでご慈悲を下さって……。お怪我の原因も実は、その……殿下のせいではないかとお伺いしまして、一時は意識もなかったとか」

 そこで口ごもったが、フランチェスカは口惜しそうに唇を噛む。

 彼女の言う殿下とはクラウディオのことではない。

 あの狩猟会での一幕から始まり、蜂のトラブルもあってレオノールがアルヴァロを助けた。

 その一件は広まっていた。

 レオノールを弓矢で貫いた刺客もノーキエの者だと判明していて、フランチェスカは大いに憤慨した様子だ。

「こんなに酷いことが起きてしまって、悲しくて堪りません。先方の殿下がお帰りになった後もずっと胸が張り裂けそうでしたの。でもこうして、お顔を拝見できただけで心から幸せですわ。それに寛いだ姿の妃殿下もまた……」

 言いかけてフランチェスカは慌てて言葉を飲み込んだ。 

「どうしたの?」

「いいえ! 不躾なお話をしてしまって……どうかご容赦ください。その……」
 
 レオノールが首を傾げて促すと、フランチェスカは一度俯いた後、ちらりと瞳を上げた。

「フランチェスカ様、どうぞ、お席にお掛けください」

「これ以上、妃殿下にご負担をおかけするのは忍びありません。私はすぐにお暇します」

 メリッサが椅子をすすめるが、フランチェスカは丁重に断った。

 やはりフランチェスカ自身は、レオノールに悪意を持っていない。

 カナリーと行動を共にしているだけだったのだなと確信した。

「でも、せっかく来てくれたのだからお茶くらい」

 レオノールが引き止めようとすると、再び扉がノックされた。

 こんなに訪問が続くなんて、珍しい。

「はい、どなたでしょうか」

 メリッサが応答に向かう。
 
 今度は誰かと見守っていると、護衛が告げた。

「クラウディオ殿下がお見えです」

 室内の空気がわずかに張り詰めた。

 フランチェスカの背筋が、見るからに伸びた。

「で、殿下が……では、私はこれで……」
 
 こちらの返事を待つまでもなく、クラウディオが入室する。

 青の礼服に白のマントを掛け、完璧な威容を保ちながらも、どこか探るような目をしていた。

 視線がまずレオノールの顔から、かけ布を隔てて足元まで一巡し、それからフランチェスカへ移る。

「君はハロルド伯の」

「ハロルド家のフランチェスカです。僭越ながら――妃殿下のご快復、心よりお祝い申し上げます」

「ご足労だったな。訪ねてくれて礼を言う」

 短く交わされる言葉の合間、クラウディオはベッドの脇まで歩み寄り、何気ない手つきでレオノールの枕の高さを直す。

 ここ数日繰り返されている、クラウディオのルーティンだ。

 ロクに病気にかかったこともないので分からないが、一般的な患者に対する介助なのだろう。
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