「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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レオノール・エルグランを派遣せよ

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 理解を深めるどころか、顔も合わせない日々に逆戻りしてしまった。

 顔を合わせれば、きっとまた多少は落ち着かない気持ちがぶり返すだろうけれど、会えないのはつまらない。

 それにクラウディオが一人で苦労していると思えば、どうにかしてやりたくなるのが人情だ。

(私を行かせれば早いのに。セレスの通信魔法が届く距離じゃないけど、それでも時間は短縮できるはず)

 まず魔物と遭遇した時の危険度が違う。

 それにレオノールが出ればおおよそが解決できるのだ。

 それなのに国賓は勿論、親友の命が懸かっていても、エルグラン王家に連なる王太子は身動きできない。

 国の舵取りとは何と難儀なものなのか。

 その上、ノーキエとの交渉には早馬が行き来するための時間もかかる。

(馬鹿馬鹿し……いや、もどかしいったらありゃしない)

 うっかり胸中で溢れ出た本音を言い換えて、レオノールは唇を尖らせた。

「はい、お支度が整いました。これでいつでもお迎えができますね。後は寝酒をお持ちします」

 綺麗に髪を梳いた後、軽く編んで金地のリボンで結んでくれる。

 絹の織り糸のように艶めいた赤い髪。

 カモミールの香り漂う香油で保湿した唇。

 鏡に映る姿は確かに貴婦人そのものだった。

 一月前とは別人のようだ。

 メリッサはここ数日と同様に、レオノールの支度が終わると寝酒の用意に向かう。

 レオノールが飲むのではなく、クラウディオのためのものだ。

 クラウディオがいつ戻ってきてももてなせるようにとの、妃としての気遣い。

 クラウディオは連日寝室へ戻ってきていないから、連日で無駄になっている。

 抜かりなくもてなせるように身なりや環境を整えるのが妻の役割なのだそうだが、これもまたもどかしい。

 戦闘系女子のレオノールとしては、つい焦ってしまう。

 クラウディオに癒しと休息が必要なのは間違いないけれど、レオノールにはそれよりも役に立てる手段がある。

 すっくと意味もなく立ち上がると、刺繍の入った夜着の裾を翻して、壁に据え付けられた燭台を眺めた。

 クラウディオは、意識してレオノールを遠ざけている。

 西の棟での行動は自由だが、主塔に出入りできる人間は制限されていた。

 クラウディオの執務室があるのも、会議が開かれる会場も全て主塔の高層階だ。

 エルグランでは、女性は参政権がない。

 まつりごとは全て男性の仕事だ。

 故に政務上の会議に女性は参加できないし、妃の立場でも同様だった。

 そういうものだとリュシエンナにも諭されたが、やはり腑に落ちない。

 そうやって悶々としながらさらに2日が過ぎ、ついに痺れを切らした。

 メリッサが下がり、西の棟の使用人たちが寝静まった頃を見計らって、レオノールは寝室を抜け出した。
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