「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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レオノール・エルグランを派遣せよ

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 扉に背を張り付けるように位置取って、中の様子を探ろうと上半身を屈める。

「フフッ」

 と、今度は確かに誰かが笑いを漏らした音が聞こえた。

 吐息は艶を含んでいる。

 部屋違いで、誰かが女性と忍んでいるんだろうか……?

 ふと疑問が浮かんだものの、確かめずに通り過ぎるわけにはいかない。

 そっと中を覗き込むと、衝撃の光景が目に飛び込んだ。

 部屋には壁に備え付けられた燭台のほか、文机の横に置いてあり、炎が揺らめいている。

 明かりに照らされた卓上の様子は分からない。

 女の背中で隠されていたからだ。

 女だと分かったのは、華奢な背中が丸見えだったから。

 白く透けるような背中に纏うものといえば、レースをあしらった薄地のネグリジェ一枚だけだ。

 先ほどの物音はガウンを脱ぎ捨てた時のものだった。

 その奥に朧げに浮かび上がるのは、金色の髪。

 髪の持ち主は、額に影が落ちて判別しにくいが多分クラウディオだ。

 俯くクラウディオの顔を下から覗き込む女の頭が、すうっと近づいてーー

 重なった、ように見えた。

「うわーっ! わっ、うわーーッ!!!」

 レオノールは思わず悲鳴を上げていた。

 普通なら、夫の浮気現場を目撃したショックで、脱兎のごとく逃げ出す場面だ。

 けれど本来ならレオノールは、どんな時にも逃げ出したりしない。

 逃げるのはクラウディオのビリビリショックを受けた時だけだ。

「ヒャッ、キャッ、キャーッ! キャーッ!」

 レオノールの絶叫に弾かれて、女性の悲鳴も負けじと甲高く響く。

「いやっ……キャアア!」

 叫び終えて一呼吸おくと、女はこちらを振り向いた。

 振り向いて、誰かに見られたと認識し、両肩を自分で抱いてその場にうずくまった。

 自分の格好が今どんなものか、瞬時に理解して恥じ入ったようだ。

 そのおかげで男の顔が見て取れる。

 薄暗いがシルエットから、クラウディオだと判明した。

「貴女っ、何してんの!? てか、クラウディオ様に何っ……してた!? クラウディオ様もっ」

 レオノールは声を荒げた。

 隠密行動の途中ではあったけど、そんな前提は頭から飛んでいた。

 それくらいの非常時だ。

「……レ、レオノール様、どうしてここに!?」

「どうしてじゃないよっ、あなた……貴女、カナリー嬢?」

 しかも、それだけではない。

 うずくまった女性をよくよく見れば、見覚えがあるどころか、よく知っていた。

 後頭部でハーフアップにされ、肩まで緩く波打つ見事なブロンド。

 口元にあるセクシーな黒子に目を奪うような曲線美を持つ美少女は見間違いようがない。

 先日の狩猟会で無礼を働いた令嬢ーーカナリー・ベラスコ公爵令嬢だった。

 どうしてもこうしても、こちらが尋ねているのに何故答えない。

 というか、理由を聞いている場合でもなかった。

 目に焼きついた疑惑のシーンが、レオノールの眼裏でぐるぐるとエンドレス再生されている。

 扉から机までの距離、カナリーとクラウディオの頭部のサイズの対比で距離感を計測する。

 やっぱり、2人の頭の距離は、ほぼゼロだ。

「貴方たちいったい、何をしていたんです!」
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