「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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 口調は尋ねているのに、クラウディオに待つ意思はなさそうだった。

 レオノールも突然訪れたきっかけに動揺しそうになるが、拒否する気はない。

 カナリーがこの唇に触れた姿を目撃して、どれだけ憤ったか。

(私がーー)

 指先で顎をすくい上げられ、瞳を合わせる。

 吸い込まれるような美しい紺碧に射すくめられて、心臓はドッドッと激しく脈打った。

 クラウディオを初めて見た時に、彼を欲する欲望の火が胸に灯った。

 手に入れることの意味をその時はまだ、真に理解できてはいなかったのだと思う。

 拒絶されてもなお、夫婦としての縁が、レオノールの気持ちを満たしていた。

 けれど今は、狂おしいほどの欲求がうねりを上げて全身を支配する。

(この男性ひとは私のもの。誰にも渡さないーー)

 恥じらいの気持ちなど、かけらも残らず吹き飛んでいた。

 こちらを見据え、細められた相貌が色っぽい。

 もう今は、彼の唇に触れることしか考えられない。

 頬に落ちた髪を、左の指がそっとすくい、耳にかけてくれた。

 レオノールからも両手を伸ばして、クラウディオの首に回す。

(クラウディオ様が欲しい)

 彼の端正な顔が傾き、ゆっくりと近づいた。

「レオノール……」

 名を呼ぶ声に熱が込められた気がして、胸が震える。

 瞼を落として、その時を待つ。

 やがて、クラウディオの柔らかな唇が、レオノールのそれを覆った。



 ***



 ――キスって、こんな感触なんだ。

 ふわふわで、しっとり吸い付くような質感にうっとりと身を委ねる。

 クラウディオの唇が触れた瞬間、初めて実感する幸福だった。

 柔らかいだけじゃない。心を満たす多幸感に、じんわりと目頭まで熱くなるようだ。

 そうやって、唇が触れた喜びをかみ締めていると、ふっと温もりが遠のく。

 残念に感じたのも束の間だ。

 腰を抱かれ、少し角度を変えて再び塞がれる。

「ん……」

 一度離れていくことで、もっとと欲する気持ちが加速した。

 惜しんだところに再び柔らかな感触が与えられれば、更なる歓喜が湧き上がる。

 何度も角度を変え、啄むように重ねられ、頭がクラクラしてくる。

 徐々に大きくなる互いの呼吸音だけが耳に響いて、次第に何も考えられなくなった。

(ああ、こんなに気持ちいいなんて。クラウディオ様が好き。もっと、ずっとキスしていたい)

 もっと欲しい、もっとクラウディオに満たされたい。

 理性もなくなり、夢中で貪る。クラウディオが頭を引けば、レオノールから追い縋った。

 もっと食べたいし、食べて欲しい。

 このまま全部、食べられちゃってもいいかも……。

「レオノール。時間をかけてと言っておきながら、性急かもしれないが……」

 息継ぎの合間に、クラウディオが囁く。甘さを孕んだ低音が、ぞくりと体の芯を刺激した。

「はい。……もちろん」

 吐息の熱さに、クラウディオが何を望んでいるのか。それすら、わかった気になる。

 恥じらいを感じる間もなく頷いていた。
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