「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

文字の大きさ
130 / 149
騎士団の救出

しおりを挟む
「なんだと? どこにいる」

 クラウディオは焦った声を上げ、エルネストのもとに案内をさせる。

 柵の内部はやや湾曲しているものの、20人強を収容するには充分な広さだった。

 エヴァ達に従って進むと壁際に倒れているエルネストの姿があった。

「エルネスト! 聞こえるか? 何があった?」

 騎士たちが道を譲ってくれたので、クラウディオは牢の前で片膝をつく。

「アルヴァロ王子が、我々を囮に妃殿下を奪うとか言い出して、副団長が食ってかかったんです。そうしたら……」

「コールヴァン、解呪して。呪いだ」

 クラウディオがエルネストの上半身を抱き起こすと、セレスが即座にコールヴァンを呼ぶ。

「早速俺の出番か。ふぅむ……」

 コールヴァンは嬉々としてクラウディオの隣に屈む。

 活躍の場が嬉しいのだろう。不謹慎だが、頼もしい限りだ。

(それにしても、やはりアルヴァロ王子の目的はレオノールだったか。憚らず公言するくらいだから、よほど勝算があるのだろう。いったいどれほどの魔法が使えるようになったのか……)

 マナ溜まりは強力なエネルギー源だ。

 マナを取り込み続けたアルヴァロが、どれほどの力を手に入れたのか、推し量ることができない。

 クラウディオが考えを巡らせているうちにも、コールヴァンはさっさと呪いの解除に取り掛かった。

 だが、エルネストの眉間辺りに触れると難しい顔つきで唸った。

「まさか解けないの?」

「馬鹿言うな。ちょいと時間が掛かりそうだってのと……あと、俺、すごく嫌な予感がする」

「何? 嫌な予感て」

「この感じ……いや、確信はないしな。王子様の手前」

「たとえ違っても構わない。些細なことでも共有してくれ」

 クラウディオが促すと、コールヴァンは言いづらそうに、けれどしっかりとクラウディオの目を見据えた。

 珍しく真面目な表情だ。

「この魔力、よく知ってるような気がするんですよね。たとえばついこの間、倒したと思った闇の魔王とか~……」

「!?」

 自分でもあり得ないと疑っているからか、コールヴァンは語尾を曖昧に濁す。

「そんなこと、あり得るの? 倒したと思った魔王が生き返って、ノーキエ王子の肉体を乗っ取るなんて」

 セレスは困惑しながらも、受け入れがたい現実を口にする。

 クラウディオにとっても、俄かには到底受け入れられない話だ。

 竜魔王はあの時、確かに息絶えていた。

 亡骸は巨大で、葬るための穴を掘るのに時間を要した。息はなかったと確信できる。

 だが、コールヴァンがこのタイミングで嘘をつく意味はない。

「断定は禁物だが、可能性を視野に入れて動こう。コールヴァン、解呪にかかる時間はどれくらいだ」

「巻きでやって、30分かからないくらいですかね。その間俺が身動き取れなくなりますが……今やるしかなさそうです」

 コールヴァンは真面目な表情のまま、エルネストから手を離さない。

 つまり今すぐに取り掛からねば、命の保証はできないという意味だろう。

「……わかった。では当初の予定通り、セレスには騎士団員の移送を順次行ってもらう。その間コールヴァンは解呪を続け、俺とブルネンで警戒を行う。いいか」

 とにかく有事はスピードが重要だ。判断に迷う時間は惜しい。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる
恋愛
 らすじ  フレイシアは10歳の頃母と一緒に魔物に遭遇。その時母はかなりの傷を負い亡くなりショックで喋れなくなtったがその時月の精霊の加護を受けて微力ながらも魔法が使えるようになった。  このニルス国では魔力を持っている人間はほとんどいなくて魔物討伐でけがを負った第二王子のジェリク殿下の怪我をほんの少し治せた事からジェリク殿下から聖女として王都に来るように誘われる。  フレイシアは戸惑いながらも淡い恋心を抱きジェリク殿下の申し出を受ける。  そして王都の聖教会で聖女として働くことになりジェリク殿下からも頼られ婚約者にもなってこの6年フレイシアはジェリク殿下の期待に応えようと必死だった。  だが、最近になってジェリクは治癒魔法が使えるカトリーナ公爵令嬢に気持ちを移してしまう。  その前からジェリク殿下の態度に不信感を抱いていたフレイシアは魔力をだんだん失くしていて、ついにジェリクから枯渇聖女と言われ婚約を破棄されおまけに群れ衣を着せられて王都から辺境に追放される事になった。  追放が決まり牢に入れられている間に月の精霊が現れフレイシアの魔力は回復し、翌日、辺境に向かう騎士3名と一緒に荷馬車に乗ってその途中で魔物に遭遇。フレイシアは想像を超える魔力を発揮する。  そんな力を持って辺境に‥    明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。少し間が開いてしまいましたがよろしくです。  まったくの空想の異世界のお話。誤字脱字などご不快な点は平にご容赦お願いします。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。他のサイトにも投稿しています。

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。

処理中です...