将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら

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聖女

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 試験に合格し、どうせ騎士団に在籍するなら、目の届く場所に置こうと考えた。

 しかし今回のように、四六時中とはいかない時もある。

「そんなこと……言わないでください。私にはもう、本当に、行くところがないんです」

 オリヴィエの声が震え出したので、ルーカスは口を噤んだ。

 何気ない本音だったが、ただ事ではない影響を、オリヴィエにもたらしたらしい。

 それは困る。泣かせたくはないんだ。

(それにしても、何故、行くところがないなど。家族はオリヴィエの帰宅を心待ちにしているだろうに)

「……話題を混ぜ返して、済まなかった。それで、旅程が決まったら、最終日はお前も一日空けておくように」

 ルーカスは逃げるように、話を変えた。

 視察の続きと、自分の私情とに。

「わかりました……が、私も、ですか? 到着のお出迎えだけでなく?」

「以前、食事を申し込んでおいただろう? 忘れてしまったか」

 オリヴィエは大きな翡翠色の瞳をぱちぱちと瞬かせる。

「い……え。いいえ! 約束は、まだ生きていたんですね。私、てっきり」

 落ち込んでいたかと思えば、急に元気を取り戻した。

 更に一瞬、逡巡したように表情を曇らせたが、最後はやはり、笑顔を見せてくれた。

「空けておきます。覚えていてくださって、嬉しい……」

 オリヴィエは美しい乙女だ。

 誰に聞いても、10人が10人、彼女の美貌を称えるだろう。

 その上に、美醜の基準だけでは判断できない素養までも持ち合わせている。

 幼い頃は解らなかったが、彼女の美しさは内面からにじみ出るものだ。

 人の上に立つために生まれたような容姿を誇ろうともせず、ひたすらに自分を磨き、信じた道へ向かう。

(やはり、腐らなくて良かった。オリヴィエに相応しくあるよう、励まねば)

「それじゃあ、その件は頼む。……今日の食事も美味かった。ご馳走様」

 笑顔を眩しく感じながら、ルーカスはスプーンを置いた。

 オリヴィエはルーカスの食事が終わるまで、傍でずっと見守ってくれていた。

「そのように伝えておきますね。では、失礼します」

 オリヴィエは一礼してから、トレイを回収するため背を向けた。

 長いプラチナブロンドと華奢な背中が遠ざかっていくのを見るのは、酷く名残惜しい。

 今しばらくの辛抱だ、と思い直し、ルーカスは再び仕事に没頭した。


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