将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら

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退魔の輝き

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 だが、今は役得とばかりに、大人しくルーカスに抱かれている。

 リリアを助けなければと庇ったところまでは覚えている。

 その直後には確実にドラゴンの攻撃を受けたはずなのだが、そこからの記憶が何故かさっぱりない。

 気付けばルーカスに抱きしめられて、今に至る。

 こんな昼日中に、白昼夢を見ていたのだろうか?

 だが、ドラゴンが強襲したのは周知の事実のようだし、オリヴィエだけの幻想ではなさそうだ……。

「どうした? どこか痛むか?」

 ルーカスが不安げに顔を覗き込む。

 いつにない近さで見つめられて、不謹慎にもオリヴィエの胸はときめいた。

「い、いえ。どこも……」

 頬が火照るのを感じながら、オリヴィエはルーカスの胸にそっと手を添えた。

 どこにも痛みはない……それどころか体が軽い。

 いったい何が起きたとのか……。

「お前には……王家の者として、感謝しなければならない。だが、俺個人としては、とても褒める気になれない。……もう二度としないでくれ」

「そんな。私は騎士団の一員です。助けられる距離に聖女様がいたんですから……」

 答えてから、オリヴィエは言い淀んだ。

 イレーネとの会話では、リリアは聖女を騙っているはずだ。

 でも、盗み聞きした情報だけで、決めつけはできない。

「……助けるのは、当然です」

 今、ルーカスに相談すべきだろうか?

 と迷いが生じて、当たり障りのない返事をする。

 オリヴィエ自身は聖女に関して、冷静ではいられない。

 宿舎へ戻れば、そのうちクリストファーも帰ってくる。

 まずは兄に打ち明けて、指示を仰ごう。

「……まったく、お前は強情だな。この俺が命じているのだから大人しく……だが、お前のそんなところが……」

 ルーカスは少し困ったように、くしゃりと微笑んだ。

 衒いのない、内面を思わせる微笑みに、幼いころの面影が重なる。

「ルー……」

 ルーカス、ともう少しで名を呼びそうになった。

 今はもう、この男性がアリシア国の”王太子”で”上官”なのだと認識している。

 うっかり、幼い日に恋をした姿が思い出されて、心の箍が少し緩んだ。

 それでも何とか堪えられたのは、遠方から馬蹄の音が、接近してきたお陰だった。

「団長! ……オリヴィエ?!」

 林を縫って現れたのは、丁度思い描いていた、クリストファーだ。

 クリストファーは直前で馬を停止させると、ひらりと飛び降り、足元に参じた。

「……巨大な魔獣と交戦中と聞き、駆け付けました! 今はどのような状況で!?」

 ルーカスの腕の中にいるオリヴィエに気付き、クリストファーは一刹那、ぐっと息を詰まらせる。

 だが、すぐに持ち直して、騎士の顔を作った。

 男に抱かれている姿を目撃したら、もっと取り乱すだろうと予想していた。

 それが仮令たとえ、王太子のルーカスであっても。

 兄の意外な分別を、ちょっとだけ、見直した。
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