王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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政略結婚!?

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「アシュレイ、其方にはアラウァリア国王への輿入れを命じます」




 とうとう、来たか。

 謁見の間に響く継母の声を、アシュレイは他人事のように聞いていた。

 玉座の前で礼を取ったまま低頭する少女の名は、アシュレイ・シャプール・セレンティア。

 このセレンティア王国の第一王女だ。

 目前の玉座には父セレンティア国王が、その横に継母キューベルルが鎮座している。

 通常なら宣旨は国の宰相が読み上げる。

 もしも家族間での婚姻の打診なら、食事やティータイムの合間に。

 だが、ここは紛れもない謁見の間で、父と義理の母は椅子に腰かけている。

 アシュレイは階段の下で頭を下げて、臣下の礼を取っている。

 傍から見れば異常とも取れる光景ではあるが、アシュレイにとっては通常運転だった。

「どうです。貴女にとっては、勿体ないくらいの縁談でしょう。このような時くらい、喜びを露にしても良いのですよ。陛下は貴女の婚礼に関して、心を砕いていらっしゃった。素直に御礼を申し上げなさい」

 継母は、居丈高な物言いこそ普段から変わらないけれど、機嫌は非常に良い口調だ。

 それもそのはず。

 やっと、目障りな義理の娘を宮中から追放できるのだから。

 キューベルルは白雪姫の継母よろしく、自身の美貌を誇る公爵令嬢だった。

 だからセレンティア国王が迎えた美しい側室が目障りだった。

 正妃であるキューベルルを差し置いて、先に懐妊した側室とその腹に宿ったアシュレイも。

 キューベルルは相当に嫉妬深い女で、噂によれば母は、アシュレイを身籠った頃からすでに嫌がらせの類を受けていたようだった。

 アシュレイが物心ついてから、晴れ晴れとした母の顔を見た記憶がない。

 それがキューベルルのせいだと気づくには、しばしの時を要した。

 アシュレイが5回目の誕生日を迎えたある日、とうとう、母は帰らぬ人となった。

 ある夕食後、唐突に体調を崩し、翌日の晩には亡くなった。

 流行り病との診断で、死に目に遭えなかったことが心残りだ。

 だが後に、母の亡骸と対面し、母が遺した守り袋を受け取った時、アシュレイは唐突に理解した。

 母の死因は流行り病などではない。

 毒に倒れたのだと。

 何故ならその瞬間、アシュレイは前世の記憶を取り戻したからだ。

 矢野千春の名で生きた、35年の人生の記憶を。

 アシュレイは、この世界に生まれ落ちる前、地球人として日本と呼ばれる国に住んでいた。

 前世の記憶に母はなく、記憶の始まりは児童養護施設からだった。

 小・中・高と、自己肯定感の低い子供として育ち、体格に恵まれていたため、周囲の勧めもあって自衛官の道に進んだ。
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