王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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予感

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「さぁ、ここにいた証として、その剣も渡してもらおう」

「……御意に」

 レオンは力なく呟き、自分の剣を鞘に納めて、ベルトから外す。

 そのまま大人しく従う、と思われたが、アシュレイの目は新たな脅威を捉えていた。

 茂みの奥で、煌めくものがある。

「アルダ! 伏せて!!」

 今度は考えなしに、飛び出していた。

 アルダに飛びつくようにして、突き倒す。

 突き倒すつもりだったが、アルダの体幹は頑強だった。

 突き倒されはせず、代わりに脇に腕が回る。

 アシュレイの視界はくるんと反転した。そのまま覆い被さられるように2人で地に伏せる。

 直後、アルダの頭のあった辺りを白刃が掠める。

 カッ

 と音を立てて、パンノキの中ほどに突き刺さった。

 形勢逆転、一転して不利な体勢に陥った。

「何者だ?! それは、女か!?」

 キュロスが、頓珍漢な叫びを上げる。

 差し出しかけた柄を、レオンが握り直した。

 アルダが奪い取ったキュロスの剣は、叢に転がっている。

『いけません! タカが来ます! お逃げ下さい!!』

 レオンが今まさに攻撃に転じようとした瞬間、良く通る声がそれを阻んだ。

 声を聞くや否や、キュロスは踵を返して走り始めた。

「おいっ、レオン!」

 レオンもすぐに追従する。

 何が何やら理解が追い付かないまま、唖然としたままアシュレイは2人の逃亡を見送る。

 アルダはすかさず、剣を掴むと立ち上がった。

 2人を追うのかと思いきや、剣の切っ先はレオンと真逆の方向に向けられた。

 短刀が放たれた、元の方角へと。

 アシュレイも、アルダに倣い立ち上がる。

「なるほどな。キュロスだけを寄越す訳がないか。……せっかくの機会だ、手合わせするか?」

 アルダは不敵に、口の端を釣り上げる。

 視線を辿ると、数10メートル先に、ぼんやりとした人影が浮かんでいた。

 武器を構えているようだが、間合いを詰める気配はない。

 数秒の間を置いて、影は踵を返すと木陰に姿を消した。

「……まさか、逃げたの?」

 短刀を投げつけたくせに、あっさりと撤退するとは拍子抜けだ。

 それとも、見せかけだけで再度奇襲を狙っているのか。

「隠れていろと言ったのに」

 そろそろと近寄ると、アルダは構えを解いて剣を下ろした。

「だって……危ないと思って……」

 サァッと、2人の間を遮るように、木漏れ日が差し込む。

 光の帯がアルダを包んだ。

 神秘的な光景に、アシュレイは一時言葉を失った。

 まるで、後光が差しているようじゃないか。

「気持ちだけは、有難く受け取っておこう。だが、端から負ける気はない」

 振り向いたアルダは空に右手を差し上げた。
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