王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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火蓋

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 神々しい指先を目掛けて、羽音を唸らせ、一陣の風が舞い降りた。

 灰色の羽を優雅に広げ、しなやかに下降したのは一羽の鳥だ。

「コイツが見えていたからな」

 アルダが腕を曲げ、額を寄せると、甘えるように目を細めて身体を摺り寄せる。

 40センチはある、猛禽類の全長はアルダの顔よりも大きく、嘴も鋭い。

 良く手懐けてあるものだ。

「鷹が? 見えたから、どうしたの。いや、それどころじゃなくて、聞きたいことが山ほどあるんだけど!」

「……だろうな。秘密にしておきたかったが……もう、そうも言っていられない」

 アルダは嘆息と共に呟いた。

 やっぱり、隠す気持ちがあったのか、とアシュレイは内心憤慨した。

 そりゃあ、兄弟が絡んでいるとなれば、アルダにも話しづらい事情があるのだろう。

 だが、アシュレイももうその渦中に在る。

 身を隠して見守っている間、どうするべきかと手に汗を握って気を揉んでいた。

 質問の順序は理性を欠いていても、追及は正当な権利だ。

「ともかく場所を移すか。丁度、助っ人の到着だ」

 また、はぐらかそうとしているのかと、アシュレイは眉をひそめた。

 だが、直ぐにそうでないとわかる。

「アルダシール様!! ご無事で!」

 どこからともなく、呼び声と足音が近付いて来る。

 木々の向こうから、駆け付けたのは、白いシャツにトラウザーズ姿の、小ぎれいな身なりの男だった。

 しかし、帯剣しているので、一般庶民でないとだけはわかる。

「早かったな、マクシム。お陰で助かった」

「義父の飛ばした鷹のお陰です。……あの、こちらの方は?」

 ちら、とマクシムはアシュレイに視線を投げる。

 2人が穏やかな空気を放っているので、敵ではないと認識した。

 だが、聞き慣れない「アルダシール」の呼び名に、また一つ重大な秘密が隠されている予感を、アシュレイは密かに受けとめていた。






***





「……で、どこから聞きたいんだ?」

 アシュレイは色んな意味で、開いた口が塞がらない。

 マクシムはアルダの希望の通り、2人の姿が目立たぬように馬車を用意してくれた。

 マクシムの自宅のあるハーベスヒルの郊外へ、小一時間ほど馬車に揺られて到着した。

 まず、その邸の規模に驚いた。マクシムの家は広大な敷地を有する酪農業を営んでおり、非常に裕福なようだった。

 牧歌的な風景に似つかわしくない、堅牢な石造りの邸宅は、まさにお邸と呼ぶのが相応しい。

 驚きながらも、ようやく説明を受けられると期待していたら、到着早々バスルームに通された。

 山小屋と違って綺麗な邸を泥だらけの野生児みたいな恰好でうろつくのも失礼か。

 アルダも承知なのだから、アシュレイの正体が露見しても差し支えがないのだろう。

 肩透かしを食らった不満はあるが、案内されたバスルームで、なみなみと湯の張られた猫脚のバスタブを前にすると、その魅力には抗えなかった。

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