王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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開戦

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 手を顔の前にかざして、微かな笑みを浮かべる。

「失礼、悪趣味な質問をしました。ご無礼をお許しください」

「え? どういう意味です?」

「伯爵は初対面の人間を試す癖をお持ちのようだ」

 アルダシールが腕を組みながら嘆息した。

「俺も最初は手酷く歓迎を受けた。相手をわざと困らせて、反応を見ているのだろう」

 何だそれは。

 威圧的な態度で相手の対応力を測っているのか?

(圧迫面接みたいなもの……? 確かに、いい趣味とは言えないわね)

 どう返して良いかわからず「はあ……」と気の抜けた返事が口を突く。

「はは……確かに悪癖ですね。しかし、王女殿下のご覚悟、しかと伝わりました。では、早速、そこまでしてここまで追って来られた目的を伺いましょう」

 ギルフォードは後頭部を軽く掻きながら、きまり悪そうに頭を下げた。

 試されるなどと聞くと質が悪いが、ギルフォードの持つ雰囲気は剣呑とは程遠く、不快にならないから不思議だ。

 思わぬ軌道で話が当初の目的に戻されて、面食らう形になったが、悠長に世間話をしている時間もない。

「王家の戦力や分布を共有した上で、双方の被害を最小限に抑える方法を提示したいのです」

 アシュレイは戸惑いながらも、当初の目的を遂げようと口調を改める。

「それは当然、私たちも腐心しているところです。進軍開始からも速度を最優先して進行して来ました」

 決戦を短期で終結させれば、被害も少なく済む。

 見立て通りだ。

「私の提案は2つ。まず、戦地となる王都を、戦闘区域と非戦闘区域とに分けます。その上でその区域と開戦の日時とを公示するのです」

「区域を分ける……? 非戦闘区域とは何だ」

 声を挟んだのは、アルダシールだった。

 控えていた男が、地図を持ち、代わりにテーブルの食器を下げた。

「言葉通り、戦闘を行わない区域のことです。例えばですが、王都の外辺を非戦闘区域と定めたら、中央のこの空間では戦闘を行いますが、外辺では行わない。つまり安全地帯と定めるのです。戦う意思のない者、あるいは能力のない者を守るための措置です」

 アルダシールが感嘆の声を上げる。

「面白い。セレンティアにはそんな慣習があるのか」

「ええまあ、どちらかと言えば祖国の思想というか……」

 厳密に言えばセレンティアの思想でもない。アシュレイは曖昧に言葉を濁す。

「しかし、そう上手く分けられるものか? 王国軍側がどう動くかわからないのに。非戦闘区域から攻撃を受けたらどうします」

「だからリスクを取りながらも事前に宣言するのか……それなら痛手ではあるが、攻撃されるのは兵士だけという構造になる」

「はい。初めに線引きをすることで、市民の死傷者を減らす助けになるはずです。可能なら、街の外へ非難路を設けたいところですけど……」

「なるほど……。伯爵、検討してもよろしいですか? リック、将軍を呼んでくれ」

 アルダシールが指示を出すと、側仕えのリックは「はっ」と短く返事をして、天幕を出て行った。
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