王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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開戦

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 リックは、すぐに戻って来た。

 すぐ後ろに壮年の男性を伴っている。

 男性は体格が良く、それでいて余計な贅肉が一切ない。

 荒事を生業としているようでいて、物腰は柔らかく品がある。

 ギルフォードとよく似た雰囲気を持っている。

「お呼びと伺いましたが、何事でしょうか」

「これを見てくれ。将軍の見立てを聞きたい」

 男はアシュレイたちに目礼をすると、テーブルを回り込み、ギルフォードの隣に進み出た。

 アシュレイも立ち上がり、机を取り囲むスペースを空ける。

 ソノラとジェニスはアシュレイの後ろから、地図を覗き込んだ。

「国民の安全を優先して区域を分断する場合、どこで線引きをするべきか。また避難民の誘導に人員を割くとして、人数と割り当てをどうするか。それらを総合して可能かどうか」

 アルダシールが端的に説明すると、男は「むう」と唸った。

「ご存じの通り、今回の戦の肝は、城門の突破です。市民の反感も最小に抑えられるでしょうし、素晴らしい作戦です。是非採用したい。区分けはこのようにし、ここから外へ避難させてはいかがかと」

「城門をどう攻略するか、だな」

「はい。カロライン領から大砲を取り寄せてはいますが、2日は到着を待たねばなりません。その間に王妃の実家ロキサーヌ領からの援軍が到着する可能性もあります」

 如何にすべきか。

 将軍を始めアルダシールもギルフォードも押し黙った。突破方法を思考しているのだろう。

「破城槌はありますか?」

 難航しているのを見て取って、アシュレイは口を挟む。

「ございますが、敵の抵抗を考えると充分な威力とは言えません」

「でも、相手が無抵抗ならどうでしょう。物理的に城門の破壊も不可能ですか?」

 通常城門の守りには閂や丸太などで防御を強化している。

 その上で、兵士が敵兵の侵入を防いでいる。

「無抵抗などと、そのような状況は現実には起こり得ません。あるとすればお伽噺だ」

 アシュレイの意見に、将軍はあからさまに顔を顰めた。

「サヴォア将軍、この区域の分離を発案したのはその、アシュレイ王女だ。口を挟むからには、何か案があるんだろうな」

「勿論です。炮烙火矢を用いて、守備兵を無力化します」

 アシュレイはアルダシールへ向けて大きく頷く。

 知らぬうちに戻っている言葉遣いが、信頼を得ているようで嬉しい。

「炮烙火矢? 初めて聞く名前ですが、一体どのような武器なのですか」

「陶器製の容器に火薬を詰め、導火線に火を点けて投擲する兵器です」

「火薬を? しかし、城門を破壊するほどの火薬となると……」

「いいえ。城門の破壊はあくまで破城槌と兵士たちの人力で行います。自国同士の戦いですもの、避けられる殺生は避けるべきです」

 アシュレイは将軍に向き直り、地図の一点を指し示し、作戦の全容を語った――
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