王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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開戦

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(国王陛下を含めて、ここにいる奴らは誰一人まともじゃねえ! だが、まともじゃないからこそ、俺にとっては都合が良い。この腐った状況を利用できれば、成り上がれる!)

 そこへ来て、アルダシールの逮捕令だ。

 千載一遇のチャンスとばかりに、ザイードは任務に志願した。

 割り当てられた西部で、運良くマクシムに遭遇し、鉛玉を打ち込んでやった。

 長年の鬱憤が少しだけ晴れた気がしたのに……。

(何だったんだよ、あの女……!)

 未だに痛む蟀谷を摩りながら、ザイードは深く吸い込んだ煙を吐き出した。

 マクシムと同行していた女に伸されて意識を取り戻すと、這う這うの体で逃げて来た。

 剣の腕は知らないが、余りに戦い慣れている。

「ザイード、殿下がお呼びだ。それと、城内で煙草を吸うな」

 長い回想を、打ち破ったのはカルフォードだった。

「ですから、バルコニーまで出たんですよ。これからお叱りを受けるんですから、これくらいは大目に見てくださいよ」

 亜麻色の髪を束ねた、雅な騎士だ。

 剣の腕もさることながら、カルフォードは生粋の貴族で、宰相、ロキサーヌ卿の甥に当たる。

「そんな言い訳が通用すると思うのか。早く行け」

 叱責に追い立てられるようにして、ザイードはバルコニーを後にする。

「キュロス殿下、失礼いたします」

 ノックをして部屋に入ると、キュロスはソファの脇に直立していた。

 王族の部屋だけあって、内部は広く、調度品はどれも豪華だ。

 手前に応接用のテーブルとソファが置かれていて、ソファの中心には驚くべき人物が座っていた。

「王妃殿下……!」

 ザイードはたじろぎ、部屋に入るなり平伏した。まさかキュロスの部屋にいるとは思いも寄らない人物だった。

 王妃タヒル・フロイデ・アラウァリア。

 現国王の正妻であり、キュロスの生母だ。

「よい。面を上げなさい」

 凛とした声音が頭上から降って来たのと同時に、ザイードは顔を上げた。

 王族らしい貫禄と美貌を備えた女性だ。

 ただし、いかにもな高飛車そうな印象で、ザイードが好むタイプの女ではない。

「ザイード・リヴァーモアね。アルダシール一派の筆頭、マクシム・べリングバリを射殺したと聞いておる。褒めてつかわそう」

「は……光栄に存じます」

 タヒルは真っ赤な紅を引いた唇を蠱惑的に引き上げて、笑みを浮かべた。

 ザイードは尊大な物言いが気に障ったが、それを表に出さないよう努めた。

「それで、その首はどうしたの。マクシムの遺体は?」

「それが、逃亡を図るべリングバリを捜索中に、奴の仲間と思われる敵に強襲されまして、遺体までは……」

「……聞いていた話と違う。遺体はないの?」

 今まで機嫌よく微笑んでいたタヒルが、途端に眉間に皺を寄せた。

「おい、聞いていた話と違うぞ。遺体はないのか!?」

 ソファの横で、象の置物のように突っ立っていたキュロスが唐突にがなり立てた。
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