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代償
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しおりを挟むどぉん!
と地鳴りのような音が立て続けに響いて、アシュレイは振り返った。
(始まった……!)
「きゃあっ!」
突然の轟音に驚き、足がもつれたのか、その場に倒れ込みそうになった少女を慌てて支える。
「セレーン!」
前を走っていた少年が悲鳴を上げて駆け戻ろうとした。
「大丈夫、お姉ちゃんが助けてくれたから」
「もうちょっとだから、頑張って。街の外に皆が避難している場所があるから」
「ねえ、本当に俺たちもそこへ行ってもいいの?」
改めて少女の手を引きながら、石畳の上を3人で走る。
昨日中にほとんどの住人が一時的に街から出た。
しかし、未だに街に取り残されている者たちもあった。
それは大抵が家のない、字も読めない子供たちだった。
「勿論! この街で生活している人は、誰でもそこへ行っていいの。これは、貴女たちを守るための戦いだもの」
「私たちのため?」
「ええ。この国の王子様は、皆を守るために戦うことにしたのよ。怖い思いをさせてしまって申し訳ないけど、あと少しだけ、協力して」
「王子様が、行ってもいいって? 俺たちも?」
自分たちの街を戦場にされているにもかかわらず、少年は輝くような笑顔を見せた。
反乱軍の第1隊は城門に到達した。後続隊はこの後も押し寄せるだろうが、王国側も市街戦を繰り広げるつもりはなさそうだ。
王国側の援軍が到着する前に勝負を決めれば、街への被害はほぼゼロで終えられる。
ことのほとんどが、想定通りに上手く運んでいた。
……なのに、このいわれのない不安はいったい、どこから来るのだろう。
憂いを払拭するように、アシュレイも微笑んで見せる。
「当たり前よ。国民こそが、国の宝なんだから」
舗装された道を抜けて、街の外郭に向かう。
「さ、ここにいれば大丈夫よ」
アシュレイは2人を安心させるように、優しく言った。
「ねえ、サモン。この子たちをお願い」
避難所とされた区域には、夥しい数の天幕が張られ、怪我人のための救護所も設けられている。
実際には街での戦闘が行われていないため、救護所のほうには、ほとんど人がいない。
奥にある天幕の入口を潜ると、そちらには大勢の人が詰めかけていた。
だが、その中の誰もが口を噤み、視線だけを忙しなく彷徨わせている。
「分かった。……でも、あんたはどうするんだ?」
サモンは兵士ではなく、街で果物を商う青年だ。
反乱軍の意向に賛同して、協力を申し出てくれた。
兵士たちは攻撃部隊に人員を割いているから、避難所にいる人数は僅かだ。
「私は……もう一度残った人がいないか見てくるわ。それに……」
行きたいところがある、とは、口に出せない。
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