王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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披露宴会場で……

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「いえ、申し訳ありません。アシュレイ王妃殿下……!」

 色白の美貌に儀礼用の騎士服。誰なのか、見まごう筈がない。

 人目も憚らず、思わず声に出していた。

「貴方……キャヴスね!」

「お久しゅうございます、アシュレイ妃殿下。お声がけする無礼を、どうぞお許しください。余りにも懐かしく……遠目からお姿を拝見し、いても立ってもいられませんでした。お噂には聞いておりましたが、お健やかそうで何よりです」

 キャヴスは感極まった様子で、アシュレイの前に跪いた。

 キャヴスはアシュレイが離宮に籠められていた頃、唯一親身になってくれた近衛兵騎士だ。

 アシュレイの母と同郷のオスロー出身の騎士で、アシュレイの輿入れの際に脱出を手伝ってくれた。

「キャヴスこそ! 息災で何よりだわ。立ってちょうだい。今、私がこうしていられるのは、貴方のお陰なんだもの。キャヴスは私の恩人よ」

 アシュレイは手を取ってキャヴスを立たせる。

「勿体なきお言葉にございます、妃殿下」

 キャヴスの瞳は涙で潤んでいた。

 どれくらい心配してくれていたのかが伝わって、アシュレイまで胸が熱くなる。

 王女の逃亡を幇助した罪が露見すれば、キャヴスもただでは済まなかった。

 誇張ではなく、キャヴスは本当にアシュレイの恩人だ。

「アシュレイ、この男は?」

 アルダシールは不躾にアシュレイとキャヴスの間に割り入る。

 感動の再会に、うっかり周囲の状況を失念していた。

「アルダ! 彼は、キャヴス……例の、サレシド商会の橋渡しをしてくれた人だと言えばわかりやすいかしら」

「なるほど。ならば礼を言うべきだろうな? だが、警備の役目がありながら持ち場を離れるのは感心しない」

 アルダシールの声には、僅かな剣が含まれていた。

「仰せの通りです。度重なる非礼、申し開きの余地もありません。アラウァリア国王陛下。誠に申し訳ございません」

 アルダシールの鋭い眼差しに、ザッと顔を青ざめさせて、キャヴスは平伏した。

 許可なく目上の者に話し掛けてはならない。

 あまつさえアルダシールとアシュレイは同盟国の国王と妃だ。

「ごめんなさい、つい……私がいけないの」

「違う。目立つ動きは控えたほうがいいだけだ。立ちなさい。積もる話があるなら場所を改めろ。任は何時いつまでだ?」

 だが、アルダシールは意外にもあっさりと矛を収め、キャヴスの謝罪を受け入れた。

 軽率さを注意されて、アシュレイも自身の行いを恥じた。

 どんな些細な綻びも、あってはならないのに。

 アラウァリア国内では、アルダシール”殿下”のアシュレイ王女誘拐事件は父と反乱勢力への宣戦布告行為だったと取られている。

 発端に祖国の近衛兵が絡んでいると露見すれば諍いの種になりかねない。

 だが、新たな提案を受けて、ホッとする。

 やっぱり、アルダシールはアシュレイを理解してくれている。

 国王とはいえ、そこらの堅物とは違う。

「ありがとうございます……! 警備は祝宴終了まで続きますが、20時に一度交代があります」

「ならばその時にしよう。人目がない場所はあるか?」

「それなら、時計台の下か、庭園の階段脇にある東屋はどうかしら」

 アシュレイはアルダシールの気遣いに感激しながら、嬉々として再会場所を提案した。
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