王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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 休憩は食事と馬の交換だけと、ほぼノンストップで移動した。

 アルダシールは公女を連れての工程だから、少しでも時間差を詰められていればよい。

 丸一昼夜かけて、ラークまで辿り着いた。

 街道から外れた小さな集落で馬を預け、一行はまだ朝靄のかかる山間を、今度は徒歩で移動する。

 本当なら移動で相当消耗しているだろうに、疲労は微塵も感じなかった。

 馬車に乗り込んだ当初は焦燥と嫉妬、迷いのようなものに苛まれていた。

 だが次第に薄れ行き、国境を超える頃にはすっかり治っていた。

 それどころか森の中腹に差し掛かった辺りからは、妙に身体が軽くなったほどだ。

 脳内から興奮物質でも湧き出て、疲れをかき消しているのだろうか?

「足元が悪いので、お気をつけて。よろしければお手を」

 先を歩いていたキャヴスが、手を差し伸べる。

「ありがとう。ごめんなさいね、内輪揉めに巻き込んで」

「私はアシュレイ様とまたご一緒できて、光栄です。アシュレイ様にとっては、お気の毒ですが……お疲れではありませんか」

「ちっとも。不思議と、疲れを感じないの。むしろ元気になったくらい」

「それは、良かった。迷信かもしれませんが、ランドットの森には山の精が住まうと伝えられています。そのせいか、ランドットの者は森と共存し、自然と調和して生きているのです。アシュレイ様にとって相性の良い土地なのかもしれませんね」

 キャヴスはアシュレイを先導しながら、森の成り立ちや歴史を語ってくれた。

 曰く、ランドット自治区はセレンティア王国が興る以前から存在していたという。

 当時も今も、変わらぬ姿を保っていると。

「未開の地だとか野蛮の民であるとか、口さがない者はいますが、彼らは非常に理知的です。私も以前は文明を拒む彼らを理解できませんでしたが、先の代表会議に同席させていただき、考えを改めました」

「そうなのね。私も、思い出したわ。あの時の披露宴でアルダが見つめていた女性を。きっとあの人がエステル様ね。アメジストの瞳をした神秘的な女性だったわ」

 派手さはないが、深みのある落ち着いた色のドレスを着ていた。

 野蛮さなど微塵もないし、衣類も公的な場に相応しく素朴ながらも洗練されていた。

 キャヴスの言葉の意味がよくわかるーー

 そう、アシュレイはしみじみと実感していた。

 実際の住人と対面するまでは。
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