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ランドットにて
アルダシールの行動 1
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「いやあ、驚いた! エステルがまさか、男を連れ帰ってくるとはな。しかも、黒髪の。どこの人だって?」
アシュレイたちの到着から遡ること半日。
アルダシールはランドット自治区の代表であるローネッド・カウリウスの家にいた。
しかしその場にいるのは、ローネッドとその家族だけでない。
「アラウァリア王国から参りました。シュナイゼル殿下の披露宴で出会って、姫に一目惚れを。遠慮もなく押しかけた無礼をお許しください」
代表とはいえ、ローネッドは他の住民と同じく木造りの家に住んでいる。
到着は夕陽と同じ頃だったのに、長の娘が連れてきた異国人の噂は瞬く間に広まっていた。
近所から住民が押し寄せて、部屋の中には数十人が所狭しとひしめき合っていた。
テーブルに座るアルダシールたちを囲んでいる。
「エステルさんを、姫、だって! かー、いいねえ。なあ、エステルさん」
「なんだか、口の聞き方まで上品だねぇ。まあまあ、こうして並んでいると、美男美女でお似合いだわね」
丸太造りのテーブルに対面して座っているのはアルダシールとエステル、その向かいにエステルの父ローネッドともう1人。
副代表を名乗るトルファソ・カムリだ。
ローネッドはいかにも厳しく山の男と思わせる風貌で、エステルとの血の繋がりを疑いたくなる。
エステルは色素の薄い紫水晶の瞳と白金色の髪を持つ、神秘的な女性だ。
ローネッドは茶髪に浅黒い肌、男らしい一文字の眉。
ローネッドの特徴は一つも現れていない。エステルは母親似なのだろう。
ローネッドは一旦呆れたように嘆息しかけたものの、気を取り直したといった風情で手を差し出す。
「いいや、それは構わない。エステルが連れて来たのなら、歓迎する。私はローネッド・カウリウスだ」
「アルダシールです。歓迎、痛み入ります」
「こちらは副代表の」
「トルファソだ。アルデシールどの」
トルファソもローネッドに負けず劣らずの強面だが、トルファソは額がやや禿げ上がっていた。
目尻も若干吊り上がっていて、いけ好かない印象だ。
名前を間違えられた気もするが、ひとまず受け流して握手を交わした。
初対面で敵意を剥き出した態度で接する輩に口論を仕掛けても益がない。
エステルから説明を受けていた通り、アルダシールの名を聞いても、誰も理解しない。
(大国だと自惚れていたか……本当にここの人間は俺を知らないのだな)
「何がおかしいのかね」
「アルダシール様ですよ、おじ様」
顔に出したつもりはなかったが、難癖をつけようとする相手にわかるくらいの反応を示していたらしい。
エステルがさりげなく言い添えてくれる。
「アルダシール殿か。名前まで洒落ているな。アラウァリアのボンボンかね」
「それほどではありませんが、国ではそれなりの地位を頂いております」
まさか国王が1人の共も連れずに、たった1人で他国へ乗り込むなどとは夢にも思うまい。
名乗ってみても面白そうだが、好奇心で予定を狂わせても困る。
アシュレイたちの到着から遡ること半日。
アルダシールはランドット自治区の代表であるローネッド・カウリウスの家にいた。
しかしその場にいるのは、ローネッドとその家族だけでない。
「アラウァリア王国から参りました。シュナイゼル殿下の披露宴で出会って、姫に一目惚れを。遠慮もなく押しかけた無礼をお許しください」
代表とはいえ、ローネッドは他の住民と同じく木造りの家に住んでいる。
到着は夕陽と同じ頃だったのに、長の娘が連れてきた異国人の噂は瞬く間に広まっていた。
近所から住民が押し寄せて、部屋の中には数十人が所狭しとひしめき合っていた。
テーブルに座るアルダシールたちを囲んでいる。
「エステルさんを、姫、だって! かー、いいねえ。なあ、エステルさん」
「なんだか、口の聞き方まで上品だねぇ。まあまあ、こうして並んでいると、美男美女でお似合いだわね」
丸太造りのテーブルに対面して座っているのはアルダシールとエステル、その向かいにエステルの父ローネッドともう1人。
副代表を名乗るトルファソ・カムリだ。
ローネッドはいかにも厳しく山の男と思わせる風貌で、エステルとの血の繋がりを疑いたくなる。
エステルは色素の薄い紫水晶の瞳と白金色の髪を持つ、神秘的な女性だ。
ローネッドは茶髪に浅黒い肌、男らしい一文字の眉。
ローネッドの特徴は一つも現れていない。エステルは母親似なのだろう。
ローネッドは一旦呆れたように嘆息しかけたものの、気を取り直したといった風情で手を差し出す。
「いいや、それは構わない。エステルが連れて来たのなら、歓迎する。私はローネッド・カウリウスだ」
「アルダシールです。歓迎、痛み入ります」
「こちらは副代表の」
「トルファソだ。アルデシールどの」
トルファソもローネッドに負けず劣らずの強面だが、トルファソは額がやや禿げ上がっていた。
目尻も若干吊り上がっていて、いけ好かない印象だ。
名前を間違えられた気もするが、ひとまず受け流して握手を交わした。
初対面で敵意を剥き出した態度で接する輩に口論を仕掛けても益がない。
エステルから説明を受けていた通り、アルダシールの名を聞いても、誰も理解しない。
(大国だと自惚れていたか……本当にここの人間は俺を知らないのだな)
「何がおかしいのかね」
「アルダシール様ですよ、おじ様」
顔に出したつもりはなかったが、難癖をつけようとする相手にわかるくらいの反応を示していたらしい。
エステルがさりげなく言い添えてくれる。
「アルダシール殿か。名前まで洒落ているな。アラウァリアのボンボンかね」
「それほどではありませんが、国ではそれなりの地位を頂いております」
まさか国王が1人の共も連れずに、たった1人で他国へ乗り込むなどとは夢にも思うまい。
名乗ってみても面白そうだが、好奇心で予定を狂わせても困る。
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