王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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競い合い

遠距離走 1

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 ローネッドは淡々と説明を続ける。

 一方で、シルランに気を取られている間に、またもやマスク姿の人物は巧みに人影に紛れていた。

 これでまた、疑惑が一層深まった。

 マスクの人物は意図的にアルダシールの目を避けている。

 或いは、シルランの目を。

「東って、どれくらいの距離なんだ」

「俺が走って往復で1時間の距離だ。札は20枚。取って帰れない者はその時点で脱落だ。オイ、そこ、待て。合図があるまで先走ってはならん。失格にするぞ。トルファソ」

 ローネッドの制止で、一部の参加者は慌てて足を止めた。

 先行して走り出すつもりがあったようだ。

 呼びかけに、トルファソが用意したのは小型の笛だった。

「笛の音を開始の合図とする」

 トルファソが口元に笛を運び、皆が身構える。

「なあ優男、こういうのは好きか?」

「は?」

 おもむろに投げかけられた質問は、意味不明だ。

 相手にするのも馬鹿らしかったが、つい反応してしまう。

「では、開始とする!」

 ピィーッ

 その瞬間、笛声の響きと同時にシルランの拳が飛んで来た。

 ぶうん、と重たげに風を斬ったそれは、しかしアルダシールには届かない。

 攻撃を躱す動作で上半身を下げ、そのまま走り出す。

「見え見えの大振りだ、俺には当たらん」

「くそっ、このスカし野郎が!」

 忌々しげなシルランの声が背中越しに聞こえる。

 他の参加者の様子をざっと見渡し、把握に努めると、これまたとんでもない光景が目に飛び込む。

 全員が一斉に東方を目掛け、大きく迂曲しながら駆け出していた。

 その先頭に位置し、集団を率いているのはユリウスを名乗る金髪マスクだ。

「ガッハッハ、最初だけ飛ばして目立とうって、阿呆かユリウス!」

 事前情報だけを考慮すれば、ユリウスは身体能力に自信がなく、競い合いに参加する予定はなかった。

 それが先頭を率いるなど、まず考えられない。

 とすると、あれはやはり……

(ともかく、先頭集団に追いつかなくては)

 アルダシールは遠距離走を想定した訓練は積んでいない。

 だが、遠泳と馬の遠乗りは得意だ。

 体力には自信がある。

 一方でアシュレイは”走り込み”と称して、暇さえあれば走っていた。

 体力の増強を図りたいと望んだところで、もう2度とアシュレイを危険な場に連れ出すつもりはない。

 しかし、行動を制限するほどの理由もない。

 結果としてアシュレイは遠距離走の鍛錬を積んでいた。

 健脚そうなローネッドが走ると、片道で1時間かかる距離。

 10キロは優に超えると想像できるため、ペースの配分が肝要となる。
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