王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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恋心 

シルランの企み 2

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「んな馬鹿な。俺は正直に蓮の雫を取って来て申告したんだ。黙って隠して、全員失格にしてやることもできたのにだ。競い合いってのは結局、最後の1人を決めるために課題を出してんだろ? 勝ち残る奴と落ちる奴がいる。どうやって生き残ろうかって考えるくらいの知恵は必要だ。順位の早いモンが有利なのは当たり前だと言ったのは、ローネッドさん、アンタだろうが」

 シルランは、図体の割によく口が回る。

 意趣返しとばかりに、ローネッドの言い回しを真似てみせた。

 アシュレイはただでさえアルダシールに対して怒り浸透だった。

 それに加えてシルランのあの態度、詭弁にはらわたが煮え返りそうだ。

 自身がさも潔白そうな発言をしているが、アイツは実に腹黒い。

 着替えるため場所が必要だったアシュレイは、アルダシールを振り切ってから手頃な場所を求めて彷徨い歩いた。

 雑木の立ち並ぶ林道に、朽ちて倒れた巨木の積もる一角を発見し、手早く着替えを済ませた後の話だ。

 借りた服を返せるよう木の根の穴に隠そうとしたところに、不穏な囁きが舞い込んだ。




「……あの余所者はともかく、ユリウスをやるのは気が引けるな」

「エステルに懐いてるのは知ってたが、まさかな。だが、ここまで残ったのが奇跡さ。心配せずとも、俺らの標的は黒髪のあの余所者だけだ」

 さわさわと揺れる葉擦れの音に紛れて、会話が耳に届く。

 最初は空耳かと聞き流そうとするも、意味深な内容に慌てて身を屈め、周囲の気配を伺う。

(黒髪の余所者? それって……)

「ユリウスはエステルを好きなんだろうか? あのシルランを敵に回してまで参加するほど」

「さあな。引かねえところを見るとそうかもな。……オイ、妙な気を起こすなよ? 裏切ったのが知れりゃ、後でどんな仕打ちを受けるかわかったもんじゃない」

「俺はエステルをラークに留めておくために、協力を了承したんだ。ユリウスと結婚すれば、済む話なら……」

「ユリウスがここまでやるとは、誰も予想してなかった。だが次はどうなるかわからん。約束はやっこさんを勝たせることだ。俺とお前が、腕を見込んで頼まれた。とにかくあの男だけは引き摺り下ろさないとな。しくじるなよ」

 清涼な森なのに、生ぬるい風が頬を撫で、アシュレイの髪を散らして通り過ぎた。

「不正に加担したとバレりゃ、タダじゃ済まない」

 その言葉を最後に不自然に声が途切れたので、アシュレイはそろそろと立ち上がる。

 足音を忍ばせ辺りを探ったが、それらしき人影は見当たらなかった。

 声は2つ、1つは乾いてやや年季を感じるもの、もう1つは若い印象だった。



 会話の内容から察するに、シルランがアルダシールを蹴落とすため、誰かに物騒な依頼をしていたのだろう。

 面の皮が厚く、粗暴な上に腹黒。

 こんなに最低な男に出会ったのは久しぶりだ。
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