王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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誕生 1

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 アルダシールとマクシムは、水瓶と2頭の馬を用意して、意気揚々とオクラノの泉を目指す。

 難なく水汲みを済ませ、アルダシールは産屋へと変化したアシュレイの部屋を訪ねた。

 しかし、そこでアルダシールを待っていたのは、ただ己の無力さを痛感するだけの時間だった。

 額に汗を浮かべ、来たるべき瞬間のために耐え忍ぶアシュレイと、力強く鼓舞する産婆と侍女たち。

 水を届けると早々に、遠回しに部屋から追い出された。

 勿論、追い出されたとはいえ、言葉上は大層慇懃な言い回しだったが。

 アルダシールはやむなく、夫婦の寝室を挟んだ自室へと書類を持ち込んで、仕事を片付けることにした。

「間もなくお生まれになるそうです」

 燦々と輝っていた太陽が姿を消し、王都がすっかり闇に包まれた頃、ようやく隣室が賑やかになった。

 既に時計の針は22時を回っている。

 普段ならば大抵は就寝の支度を整えているアルダシールだが、何をする気にもなれなかった。

 急ぎの案件を処理してしまえば、仕事さえ手につかないような有様だ。

 マクシムの予告通り”妻の出産を前に何もできないアルダシール”ができ上がっていた。

「陛下の大事に、お仕えするのも侍従の仕事です」

 そんなアルダシールに、それ見たことかと追い打ちをかけず、マクシムまでもが部屋に居残っていた。

 今後はマクシムの結婚問題に、余計な口出しはすまいと胸中で誓う。

「参られますか?」

 声をかけられて廊下に出ると、何人もの侍女や女官が慌ただしく行き交っている。

 扉が開いた拍子に、火を焚き湯を沸かす光景が目に入った。

 さざめきの間に、アシュレイの低い呻き声が紛れ聞こえる。

 マクシムはこのような光景を見慣れているのか、静かに壁に沿って立ち、涼しい顔で待機している。

 扉の開閉とともに廊下へ流れ出した空気に、生々しく混じる血の臭いを感じ取った。

 その刹那だった。

 ぎゃあぁあん、おぎゃぁあん

 おぎゃー、おぎゃー

 突如として輪唱のような大音声が、アルダシールの鼓膜を揺さぶった。

「おめでとうございます! お世継ぎ様です!」

 産婆が高らかに宣言すると、室内にいた侍女たちが一斉に歓声をあげた。

 その声に弾かれたように、アルダシールは産屋に飛び込んだ。

「生まれたのか!? 無事か、アシュレイ」

「アルダ……」

 部屋の中央に置かれた簡易の寝台に、アシュレイが横たわっている。

 傍には産婆と侍医が立ち、何事かを打ち合わせていた。

 暖炉の手前には大きな机が置かれ、そこで産湯をつかわす侍女らが2人。

 部屋のそこかしこでランプが灯り、部屋の中だけは昼中のような明るさだった。

 足を踏み入れるなり、灯りと多人数の放つ熱気とに包まれる。
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