やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら

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ルシアン様の宣言

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 それは、王妃殿下の誕生パーティよりもずっと早く、学院が夏季休暇に入る直前のこと。

 学院では休暇前の式典後に交流会と称して茶会が催される。

「オデット、話があるんだ」

 ルシアン様がわたくしを呼び出したのは、会が始まって落ち着いてから。

 程よく場が和んだ機を見計らうように声が掛かった。

 このような公の場で、面と向かってわたくしに嫌味を言えるほど度胸のある方はいない。

 それでも折を見て退席するつもりで、ドリス嬢とテラス席でのんびりと紅茶の香りを楽しんでいた。

 ルシアン様がわたくしを訪ねられたのは、いつぶりだろうか。

 マリアナ嬢との仲が噂されるようになって以来、初めてのことだった。

 マリアナ嬢と行動を共にしているルシアン様の姿を見たくなくて、わざとルシアン様を避けていた節もある。

「ドリス嬢、話の途中ですまないね。少々邪魔をしても構わないだろうか」

「はっーーはいっ。オデット様さえよろしければ、私は」

 ドリス嬢は驚きのあまり声を上擦らせた。

 かく言うわたくしも平静ではいられない。

 内心に戸惑いと不安、それに捨てきれない喜びを胸に頷いた。

 婚約者であるわたくしを蔑ろにするようなルシアン様の行いには失望していたが、それでも幼い頃から育った敬愛の気持ちはまだ残っていた。

「場所を……」

「そんなっ、私が失礼しますから。お2人はどうぞ、こちらでお話をなさってください」

 場所を変えましょう、と提案する前にドリス嬢が機先を制して、ガラス戸へ飛びついた。

 しかし、退出は叶わない。

 なぜなら、戸口には進路を断つようにマリアナ嬢が立っていたからだ。

「マリアナ嬢、入ってはなりません。ルシアン殿下はオデット様とお話をなさるのです」

「どうしてですか? マリアナもご一緒したいわ。ルシアン様とはいつも仲良くして頂いているし、オデット様とももっと、お近づきになりたいのです」

 押し留めようとするドリス嬢をすり抜けて、マリアナ嬢がわたくしたちの側にまでやって来る。

 慌てたドリス嬢はそれを追って蜻蛉返りする事態となった。

「貴女は退室して構いませんよ、ドリスさん」

「マリアナ嬢、無体を働くとわかっていて、貴女を残して行けるものですか。お2人の邪魔をしてはなりません!」

 ぐいぐいとルシアン様に迫るマリアナ嬢をドリス嬢が制そうとするーーやり取りを繰り返し、徐々に4人の距離が詰まる。

 こぢんまりとしたテラス席なので、4人で立ち並ぶといささか手狭に感じられた。

 せっかくルシアン様に声を掛けられて明るくなった気持ちが、マリアナ嬢の参加によって一気に萎む。

 こんなところでまで、2人が仲良く会話している姿を見せつけられては、憂鬱な気持ちに拍車が掛かってしまう。

「もしお2人でお話しなさるなら、お譲りしますわ。どうぞ」

 わたくしはすっかり興醒めして、席を外そうと進み出る。
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