12 / 15
ルシアン様の宣言
2
しおりを挟む
「待ってくれ、俺は君に。オデットに用があるんだ」
しかしルシアン様はわたくしの腕を掴み引き止めた。
「君はいつもそうだ。私を……、いや、違う。今日はそんな話をしに来たんじゃない。
掴まれた腕から電流が走るように全身が痺れて、わたくしはぽかんと口を開けてルシアン様を見返した。
そんなわたくしの反応をどう受け取ったのか、ルシアン様は少し慌てた様子で手を放した。
「すまない。痛かったか?」
「平気です。では、お伺いします。お話とは、どのような内容ですか?」
尋ねると、ルシアン様はマリアナ嬢とドリス嬢にサッと目を向ける。
やはり他人の目がある場所では不都合なのだろうか。
マリアナ嬢はその様子を見逃さず、わざとらしいくらいに悲しげな表情をしてルシアン様ににじり寄る。
「お口にし辛いお話をなさるのですか? それをお1人で聞くなんてオデット様がお気の毒ですわ。私もご一緒させてください」
わたくしを憐れむ発想は何処から来ているのだろう。
もしやマリアナ嬢はルシアン様の話の内容を知っているのではと、勘繰らずにはいられない。
「いい加減になさい。図々しいですわよ、マリアナ嬢!」
「ドリス嬢、落ち着きなさい。マリアナ嬢の意見にも一理ある。公言する、良い機会かもしれない」
ドリス嬢とマリアナ嬢が再び始めそうになった口論を、ルシアン様はサッと制した。
一方で、わたくしは胸を騒めかせた。
何を公言なさるおつもりなのか。
わたくしへの要件とどう関わりがあるのだろう。
「オデット、悪いが一緒に来てくれ」
迷いなく腕を差し出し、ルシアン様はわたくしを誘う。
手のひらを上に向けて少し傾ける仕草は、わたくしをエスコートする時の癖だ。
何が起きるのか予想もつかないが、わたくしとルシアン様が婚約者である以上、避けてばかりもいられない。
わたくしはいつも通りに、差し出された手に手を重ね、導かれた腕に絡める。
どこで、何が待っていようと、決して無様な姿は晒すまい。
そう決心して付き従うと、ルシアン様はホールの中心を横切るように足を進めた。
学院の生徒の中で、最も高貴な身分にあるルシアン様と渦中の人物であるわたくしの登場に、会場は水を打ったように静まり返った。
堂々たる足取りに、誰もが会釈とともに道を譲る。
ルシアン様がマリアナ嬢を傍に侍らせていると、学院中で噂されていたせいもあるだろう。
騒動の行方を気にする意味でも、生徒たちの視線が集まる。
後ろから得意げな表情のマリアナ嬢が後ろからついて来るが、気にすまい。
「オデット」
ルシアン様はパーティホールのちょうど中央で足を止め、こちらに向き合う。
しかしルシアン様はわたくしの腕を掴み引き止めた。
「君はいつもそうだ。私を……、いや、違う。今日はそんな話をしに来たんじゃない。
掴まれた腕から電流が走るように全身が痺れて、わたくしはぽかんと口を開けてルシアン様を見返した。
そんなわたくしの反応をどう受け取ったのか、ルシアン様は少し慌てた様子で手を放した。
「すまない。痛かったか?」
「平気です。では、お伺いします。お話とは、どのような内容ですか?」
尋ねると、ルシアン様はマリアナ嬢とドリス嬢にサッと目を向ける。
やはり他人の目がある場所では不都合なのだろうか。
マリアナ嬢はその様子を見逃さず、わざとらしいくらいに悲しげな表情をしてルシアン様ににじり寄る。
「お口にし辛いお話をなさるのですか? それをお1人で聞くなんてオデット様がお気の毒ですわ。私もご一緒させてください」
わたくしを憐れむ発想は何処から来ているのだろう。
もしやマリアナ嬢はルシアン様の話の内容を知っているのではと、勘繰らずにはいられない。
「いい加減になさい。図々しいですわよ、マリアナ嬢!」
「ドリス嬢、落ち着きなさい。マリアナ嬢の意見にも一理ある。公言する、良い機会かもしれない」
ドリス嬢とマリアナ嬢が再び始めそうになった口論を、ルシアン様はサッと制した。
一方で、わたくしは胸を騒めかせた。
何を公言なさるおつもりなのか。
わたくしへの要件とどう関わりがあるのだろう。
「オデット、悪いが一緒に来てくれ」
迷いなく腕を差し出し、ルシアン様はわたくしを誘う。
手のひらを上に向けて少し傾ける仕草は、わたくしをエスコートする時の癖だ。
何が起きるのか予想もつかないが、わたくしとルシアン様が婚約者である以上、避けてばかりもいられない。
わたくしはいつも通りに、差し出された手に手を重ね、導かれた腕に絡める。
どこで、何が待っていようと、決して無様な姿は晒すまい。
そう決心して付き従うと、ルシアン様はホールの中心を横切るように足を進めた。
学院の生徒の中で、最も高貴な身分にあるルシアン様と渦中の人物であるわたくしの登場に、会場は水を打ったように静まり返った。
堂々たる足取りに、誰もが会釈とともに道を譲る。
ルシアン様がマリアナ嬢を傍に侍らせていると、学院中で噂されていたせいもあるだろう。
騒動の行方を気にする意味でも、生徒たちの視線が集まる。
後ろから得意げな表情のマリアナ嬢が後ろからついて来るが、気にすまい。
「オデット」
ルシアン様はパーティホールのちょうど中央で足を止め、こちらに向き合う。
121
あなたにおすすめの小説
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
老け顔ですが?何かあります?
宵森みなと
恋愛
可愛くなりたくて、似合わないフリフリの服も着てみた。
でも、鏡に映った自分を見て、そっと諦めた。
――私はきっと、“普通”じゃいられない。
5歳で10歳に見られ、結婚話は破談続き。
周囲からの心ない言葉に傷つきながらも、少女サラサは“自分の見た目に合う年齢で学園に入学する”という前代未聞の決意をする。
努力と覚悟の末、飛び級で入学したサラサが出会ったのは、年上の優しいクラスメートたちと、ちょっと不器用で真っ直ぐな“初めての気持ち”。
年齢差も、噂も、偏見も――ぜんぶ乗り越えて、この恋はきっと、本物になる。
これは、“老け顔”と笑われた少女が、ほんとうの恋と自分自身を見つけるまでの物語。
【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
王女を好きだと思ったら
夏笆(なつは)
恋愛
「王子より王子らしい」と言われる公爵家嫡男、エヴァリスト・デュルフェを婚約者にもつバルゲリー伯爵家長女のピエレット。
デビュタントの折に突撃するようにダンスを申し込まれ、望まれて婚約をしたピエレットだが、ある日ふと気づく。
「エヴァリスト様って、ルシール王女殿下のお話ししかなさらないのでは?」
エヴァリストとルシールはいとこ同士であり、幼い頃より親交があることはピエレットも知っている。
だがしかし度を越している、と、大事にしているぬいぐるみのぴぃちゃんに語りかけるピエレット。
「でもね、ぴぃちゃん。私、エヴァリスト様に恋をしてしまったの。だから、頑張るわね」
ピエレットは、そう言って、胸の前で小さく拳を握り、決意を込めた。
ルシール王女殿下の好きな場所、好きな物、好みの装い。
と多くの場所へピエレットを連れて行き、食べさせ、贈ってくれるエヴァリスト。
「あのね、ぴぃちゃん!エヴァリスト様がね・・・・・!」
そして、ピエレットは今日も、エヴァリストが贈ってくれた特注のぬいぐるみ、孔雀のぴぃちゃんを相手にエヴァリストへの想いを語る。
小説家になろうにも、掲載しています。
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
あの、初夜の延期はできますか?
木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」
私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。
結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。
けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。
「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」
なぜこの人私に求婚したのだろう。
困惑と悲しみを隠し尋ねる。
婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。
関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。
ボツネタ供養の短編です。
十話程度で終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる