やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら

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ルシアン様の宣言

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「待ってくれ、俺は君に。オデットに用があるんだ」

 しかしルシアン様はわたくしの腕を掴み引き止めた。

「君はいつもそうだ。私を……、いや、違う。今日はそんな話をしに来たんじゃない。

 掴まれた腕から電流が走るように全身が痺れて、わたくしはぽかんと口を開けてルシアン様を見返した。

 そんなわたくしの反応をどう受け取ったのか、ルシアン様は少し慌てた様子で手を放した。

「すまない。痛かったか?」

「平気です。では、お伺いします。お話とは、どのような内容ですか?」

 尋ねると、ルシアン様はマリアナ嬢とドリス嬢にサッと目を向ける。

 やはり他人の目がある場所では不都合なのだろうか。

 マリアナ嬢はその様子を見逃さず、わざとらしいくらいに悲しげな表情をしてルシアン様ににじり寄る。

「お口にし辛いお話をなさるのですか? それをお1人で聞くなんてオデット様がお気の毒ですわ。私もご一緒させてください」

 わたくしを憐れむ発想は何処から来ているのだろう。

 もしやマリアナ嬢はルシアン様の話の内容を知っているのではと、勘繰らずにはいられない。

「いい加減になさい。図々しいですわよ、マリアナ嬢!」

「ドリス嬢、落ち着きなさい。マリアナ嬢の意見にも一理ある。公言する、良い機会かもしれない」

 ドリス嬢とマリアナ嬢が再び始めそうになった口論を、ルシアン様はサッと制した。

 一方で、わたくしは胸を騒めかせた。

 何を公言なさるおつもりなのか。

 わたくしへの要件とどう関わりがあるのだろう。

「オデット、悪いが一緒に来てくれ」

 迷いなく腕を差し出し、ルシアン様はわたくしを誘う。

 手のひらを上に向けて少し傾ける仕草は、わたくしをエスコートする時の癖だ。

 何が起きるのか予想もつかないが、わたくしとルシアン様が婚約者である以上、避けてばかりもいられない。

 わたくしはいつも通りに、差し出された手に手を重ね、導かれた腕に絡める。

 どこで、何が待っていようと、決して無様な姿は晒すまい。

 そう決心して付き従うと、ルシアン様はホールの中心を横切るように足を進めた。

 学院の生徒の中で、最も高貴な身分にあるルシアン様と渦中の人物であるわたくしの登場に、会場は水を打ったように静まり返った。

 堂々たる足取りに、誰もが会釈とともに道を譲る。

 ルシアン様がマリアナ嬢を傍に侍らせていると、学院中で噂されていたせいもあるだろう。

 騒動の行方を気にする意味でも、生徒たちの視線が集まる。

 後ろから得意げな表情のマリアナ嬢が後ろからついて来るが、気にすまい。

「オデット」

 ルシアン様はパーティホールのちょうど中央で足を止め、こちらに向き合う。
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