病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ

文字の大きさ
46 / 47

フィアナ、あっさりと事件を解決する

しおりを挟む
「そ、そんな馬鹿な。致死量の3億倍の劇物だぞ……」


 あんぐりと口を空けるシリウスに、

「もっと真剣にやって下さい! こんなのが最終試験じゃ、肩透かしです!」
「は? おまえは、いったい何を……」

「まだありますよね? それともこっちから行っていいですか? いわばこれは試験の最終編――もっと、ワクワクするような模擬戦をしましょう!」
「ヒィィィィ!」


 私が笑顔で近づくと、シリウスは怯えた様子で後ずさります。

「奥の手、ないんですか?」
「いや、その――」

「何もないなら、次は、こちらから行きますけど――」
「ヒィィィィ! く、来るな――バケモノめぇ!」

「あ、その盤外戦術はもう知ってます」

 ちなみに、最初に使ってきたのはマティさんです。
 失礼な人たちですね!!


 飛んでくる血塗れナイフは、もう避ける必要すら感じません。

 拳と足を強化魔法で固め、ナイフを無造作に殴り返します。
 そのまま弾き飛ばしてしまうのが、対処法として1番手っ取り早いのです。

 そうして私が、マルコスの目の前に立つと、


「ヒィィィィ! こんなのは、悪い夢だぁぁぁぁ――」

 そう悲鳴をあげながら、マルコスはパタンと気絶してしまいました。


(う~ん、これで良かったのでしょうか――)

 困惑しつつも、私はとりあえずマルコスを縄で縛り上げます。

 これで知っている情報では、テロ操舵王のリーダーを、無事取り押さえたことになるはずです。
 実技演習は、これで合格といったところでしょうか。

「あ、そうだ。魔法陣壊さないと」

 部屋の一角で、存在感を主張するように禍々しく輝く魔法陣。
 もはや残った1つだけでは、ほとんど効果を発揮していないようですが、

「えいやっ!」


 右ストレートで、魔法陣を物理破壊。
 そうしてついに、完全に魔封じの結界の効果が解かれたのを実感し、

「これで、試験も終わりですかねえ」

 私は、のんびりとそう呟くのでした。



【アレシアナサイド】

 黒衣の少女――アレシアナは、目の前の事態にため息をついた。

 スカーレットムーンという犯罪ギルドに所属するテロリストたちは、人質を巡って醜い言い争いを繰り返していたのだ。
 何せここエリュシアン学園は、大陸中から優秀な学生を集めた学校なのだ。
 一致団結して反乱を起こされれば不利――見せしめに何人か殺しておくべきというのが、過激派による主張であった。

「何度も言わせないで。人質は、生かしておくからこそ意味があるの」

 アレシアナは、そう主張し続けていた。


「だがよう。この人数、ちょっぴり面倒じゃねえか?」
「ああ、まったくだ。少しぐらい減っても、人質として問題ないんじゃねえか?」
「……あの方の意向に逆らうつもりなの?」

 冷たい声で詰め寄るアレシアナ。

 そのやり取りは、アレシアナが忠実なシリウスの部下を演じるために必要な演技だ。
 同時に、目の前で人死にを見たくないという彼女の優しさの現れでもあった。

 セシリアたちが行動を起こそうとしたときに、アレシアナが割って入った理由――あれは何も妨害が目的ではない。
 セシリアたちの身の安全を確保するための最善の行動だと思ったから、多少無理にでも割って入ったのだ。

 魔法が使えないセシリアたちが、武装した犯罪ギルド2人と正面衝突した場合、勝負は良くて五分五分――悪ければ、こちらが殺されていた可能性もあった。
 だからアレシアナは、あそこで正体を明かして、監視していたテロリストたちを排除したのである。

 その後、アレシアナは、犯罪ギルドのメンバーに対して教室を制圧するときに仲間を失ったと嘘の説明をしている。

「さてと、どうなることか……。お手並み拝見と行きましょうか」

 フィアナに届けるようお願いした魔法陣の設計書――あれはシリウスの部屋にあった極秘の資料である。
 警戒心が深かったシリウスは、結界の設計書にも暗号をかけており、ついぞアレシアナにその暗号を解くことは出来なかったのだが、


「面白いもの、見せてちょうだいな」

 そう呟くアレシアナの瞳は、純粋な好奇心に煌めいていたのであった。



 それから数十分後が経った頃。

「おい、どういうことだ!?」
「マナが――魔法が、使えるようになってるぞ!」

 体育館の中が、にわかに騒がしくなった。

 その原因は明らかであった――フィアナたちが、見事に魔封じの結界を解除したのだ。
 とはいえ体育館の中には、数十人の武装したテロリストが未だにに占拠している。生徒たちは、行動を決めあぐねていた。
 その瞬間を見計らったように、アレシアナは動き出す。

「皆さん、魔法が戻りました。今こそ反撃の時です!」
「なっ、てめぇ!?」
「何も恐れることはありません。人数は、圧倒的にこちらが上――武器を手に取り、今こそ奪われたエリシュアンの誇りを取り戻すのです!」

 高らかに声をあげたアレシアナ。
 ぱっと見れば、それはただの仲間割れ――大抵の生徒たちは、あ然とアレシアナを見つめるだけであった。

 そんな中、特進クラスのクラスメイトだけは、

「今ですわ!」
「よくもこれまで、私たちの学校で好き勝手してくれましたわね!」

 いち早く武器を手に取り、テロリストたちに立ち向かった。
 それはアレシアナが、2重スパイ――実は味方だと知っていたからであるし、何よりフィアナたちの勇姿をその目で見ていたからというのも大きかった。


「なんだ、おまえたちは!」
「怯むな! 敵は、所詮は学生――うわぁ!?」

 アレシアナは影を操り、次々とテロリストたちを武装解除していく。
 姿を隠し、死角から敵を速やかに排除する――それは影とともに生きるアレシアナにとって、もっとも得意とするところであった。

「さてと、潮時ですかね」

 次々と蜂起するエリシュアンの生徒たち。
 1度、生まれた流れを止めることは、いかに手練れの犯罪ギルドであっても不可能であり、


「良いものが見れました」

 アレシアナはそう呟き、密かに体育館から離脱。
 ――そのまま闇の中に、ひっそりと姿をくらませたのであった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

処理中です...