虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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「どうせ、またあの王子様絡みでしょ。のめり込み過ぎなんだよ」

ペコットは苦笑気味に言う。

「好きな気持ちは分かるけど、現実を見ようよ。私たち以外にあと10人、婚約者がいるんだよ。それだけでも十分難しいのに、あの人には別に好きな人がいるじゃない」

その言葉に、私は少しむっとした。
分かり切っていることを、改めて言われるのは好きじゃない。
私にとって好ましくないことなら、尚更。

「ペコットはあのお方がそこまで好きじゃないから、そんなことが言えるんだよ」

「そうだよ。流石だね、よく分かってるじゃん!」

バシバシと背中を叩く。
先と変わらず力が強い。

「だって、自分で決めた相手じゃないんだよ。婚約者です、って言われてすぐ好きになれるわけないじゃん。ーーたしかに、綺麗な顔してるなーとかは思ったよ。でも、それだけ。この人とずっと一緒にいたい、だなんて思わない」

と彼女は続ける。
私のことを慰めるように。
私の好きな相手を、軽んじてる。

「だから、私は応援するよ。私は好きでもない相手と結婚しないで済むし、君はそれで幸せになるし。ついでに、王子様の恋のキューピッド的なポジションになれる。これなら王子と結婚しなくとも、私の家も安泰だ」

うんうん、と頷く彼女。
どこまで本気で言っているか分からない。
愚者と賢者は紙一重。

それに、
彼女にその気はなくとも、
あのお方が万が一、
何かの誤りでペコットに惚れたりしたら、私はーー

「大丈夫だよ、王子様は君みたいに惚れっぽくないって。ほら、これだけ婚約者抱えても、イデア様に夢中なんだから。きっと一途だよ、君と一緒で。病的なくらいにね」

そうだ、
私はずっと見ていた。
遠くからあのお方のことを眺めていた。
私にチャンスが回ってくるのかと。
そわそわしながら待っていた。
私にとって嬉しいが起こることを期待して。

でも、あのお方ーーカストリア様には私とこの子を含め12人の婚約者がいる。
この時代の常識を問えば、あり得ない数である。
特に、表向きならば。
二人三人ならまだ分かる。
万が一に備えてのバックアップ、保険をかけておくという目的であれば。

だが、12人という数はそのレベルを遥かに超えている。
ーーそもそも、目的が違うのだから当然かもしれないが。
万が一に備える、ではなく。
万が一を起こそうとしている。

国王様は良かれと思って、この12人をかき集めたのだ。
自慢の息子が惚れるに相応しい女性を。
姉弟の禁断の愛を超える、そんな万が一を。
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