虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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「お嬢様」

拘束部屋でのんびりとしているエクレアがお見舞いに来た。
お見舞い、という表現が正しいかは分からないが。
面会、というのが正しいのだろう、この場合は。

「こちらが手を下すまでもなかったな。馬鹿娘が」

お父様も、そこにいた。
いつものような高圧的な態度。
だけど、私如きのためにわざわざ外に出るなんて。

「どうして、お父様がーー」

言いつつ、理由は推測できた。
王族殺し、その容疑者ーーというより、最早犯人。
その家長がなんらかの責任を取らされるのは容易に想像がつく。

「どうしてもこうしても無かろう。この逆賊が。ぼんくら第一王子と仲良くやっているかと思えば、それを殺し、捕まるとは。我が娘とは思えん愚行」

……どうして、私とアンドレアル様のことを。
どこかで情報が漏れたか。
或いは……

「ーーまあ、そもそもお前はエーテルザットの血筋ではないから当然か」

「え?」

私は問い返す。

「お前が従者として重用していた、このエクレアこそ真の我が娘、エクレア=エーテルザットなのだよ。お前はその影に過ぎん、我が家はその性質上、他者の恨みを買いやすい。歳を重ね、知恵を重ね、思慮を束ねられるまでは表舞台には出さんのだよ」

ぽんぽん、と彼女の肩を叩く。
叩かれた側は複雑そうな表情。

「でもーー」

何かを言おうとする私。
だが、何を言えばいいか分からない。
私が実の娘ではない、
なら、私は誰の娘?
お父様は?
お母様は?
そもそも私は何者なの?
何のためにここにいる?
何のためにあそこにいた?

「お前は知らなくて当然だ、寧ろこれを知っているのはごくごく一握り。この場を除けば、あとはぼんくら王子がせいぜい。あれは別件で一度噛んだことがあったので、仕方なくバラした、というところだが」

私はエクレア見る。
知っててこれまで仕えていたのか。
心の中では、見下し馬鹿にしていたのか。

ーーいや、違う。
彼女はそんな女ではない。
そのことは私が一番良く知っている。
ずっとずっと、一緒にいた。
一番良く尽くしてくれた。
自慢の従者。
彼女が私にそんな感情を抱くはずがない。

目を伏せ、唇を噛んでいる。
心苦しそうに。

「だが、対外的にはまだ貴様が我が娘だ。故に、その責任は我が家に及ぶということだ」

お父様は私の前に、コツンと置く。
どす黒い色の液体が入った、小瓶。

「これは貴様が使おうとしていた毒薬ーーの改良版だ。元々のそれより、苦痛が激しい」

続けて言う。

「自害しろ」

短く、告げる。
死に損なった私を、終わらせるために。
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