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二人はすたすたと帰って行った。
一人は悲しそうに、
一人は不快そうに。
置かれた小瓶。
中に入った毒薬。
これを飲めば、多分死ぬ。
きっと、死ぬ。
ここが、私の物語のエンドマーク。
きゅぽん。
蓋を外す。
むせ返る匂い。
最後に口にする飲み物としては、最悪の類。
だけれど、罰にしては最高の類。
苦しんで、苦しんで、死ぬ。
それが私が犯した罪ーーというか着せられた罪を流すに必要な行為。
いや、そうでもないか。
ただの自己満足。
或いは他者満足。
そういうことにしておけば、話が丸く収まる、みたいな。
私がどう死のうと、死者が生き返る訳ではない。
あくまで罰であり、贖罪にはならない。
もう、終わりにするべきなのだろうか。
色々じたばたもがいて、足掻いたけれど。
このまま生きていたところで、行き着く先は死罪。
裁判にかけられ、罪を言い渡され、首を刎ねられる。
名前も知らない処刑人に、首を刎ねられる。
身に覚えのない罪だけれど、他ならぬあのお方の言葉によって死に至るならばそれも良いのかもしれない。
あのお方に、リトア=エーテルザットは潔く死んだと、
罪の意識を感じて自ら命を絶ったと。
そう思ってもらえた方がいいかもしれない。
誇り高く自害するのが良いかもしれーー
「誇り?」
引っ掛かる。
私は一人呟く。
ーー誇り、とは何だろう。
私に誇るべきものとは。
私は既に公爵家令嬢、リトア=エーテルザットではなく。
ただの罪人のリトアである。
お父様の言葉をどこまで信じるべきかは分からない。
だが、たとえ嘘が混じっていても、罪人の私を実の娘として抱え込むよりは、エクレアにすげ替える方がメリットがある。
あれは影だ、偽物だとした方が、家の名誉は傷つかない。
なら、
ならばーー
私が自害する意味とは何だろう。
私にとって、自害する意味とは何だろう。
ただの自暴自棄、何もかも嫌になったから、もうどうでもいいという諦観の極地。
怠け者の逃げとしか思えない。
もう私はただのリトアなのだ。
誇りも何もない。
身分も何もない。
ただの女だ。
万が一、
何かの偶然で。
生き残ったところで、何も得られるものなど何もない。
でも、
それでも。
私は足掻いて生きたい。
「……えいっ」
私は小瓶を壁に向かって投げつける。
拘束された両手でも、それなりにできるものだ。
瓶は粉々に割れ、中身が飛散する。
毒薬が壁に染み込み、回収不能となる、
私の新しい人生の始まりの合図。
ーーにしては、随分と汚く、臭うものだった。
それも、私らしくていいかと思った。
一人は悲しそうに、
一人は不快そうに。
置かれた小瓶。
中に入った毒薬。
これを飲めば、多分死ぬ。
きっと、死ぬ。
ここが、私の物語のエンドマーク。
きゅぽん。
蓋を外す。
むせ返る匂い。
最後に口にする飲み物としては、最悪の類。
だけれど、罰にしては最高の類。
苦しんで、苦しんで、死ぬ。
それが私が犯した罪ーーというか着せられた罪を流すに必要な行為。
いや、そうでもないか。
ただの自己満足。
或いは他者満足。
そういうことにしておけば、話が丸く収まる、みたいな。
私がどう死のうと、死者が生き返る訳ではない。
あくまで罰であり、贖罪にはならない。
もう、終わりにするべきなのだろうか。
色々じたばたもがいて、足掻いたけれど。
このまま生きていたところで、行き着く先は死罪。
裁判にかけられ、罪を言い渡され、首を刎ねられる。
名前も知らない処刑人に、首を刎ねられる。
身に覚えのない罪だけれど、他ならぬあのお方の言葉によって死に至るならばそれも良いのかもしれない。
あのお方に、リトア=エーテルザットは潔く死んだと、
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そう思ってもらえた方がいいかもしれない。
誇り高く自害するのが良いかもしれーー
「誇り?」
引っ掛かる。
私は一人呟く。
ーー誇り、とは何だろう。
私に誇るべきものとは。
私は既に公爵家令嬢、リトア=エーテルザットではなく。
ただの罪人のリトアである。
お父様の言葉をどこまで信じるべきかは分からない。
だが、たとえ嘘が混じっていても、罪人の私を実の娘として抱え込むよりは、エクレアにすげ替える方がメリットがある。
あれは影だ、偽物だとした方が、家の名誉は傷つかない。
なら、
ならばーー
私が自害する意味とは何だろう。
私にとって、自害する意味とは何だろう。
ただの自暴自棄、何もかも嫌になったから、もうどうでもいいという諦観の極地。
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もう私はただのリトアなのだ。
誇りも何もない。
身分も何もない。
ただの女だ。
万が一、
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生き残ったところで、何も得られるものなど何もない。
でも、
それでも。
私は足掻いて生きたい。
「……えいっ」
私は小瓶を壁に向かって投げつける。
拘束された両手でも、それなりにできるものだ。
瓶は粉々に割れ、中身が飛散する。
毒薬が壁に染み込み、回収不能となる、
私の新しい人生の始まりの合図。
ーーにしては、随分と汚く、臭うものだった。
それも、私らしくていいかと思った。
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