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「成る程成る程、成る程ねー」
ペコットはうんうんと頷く。
私は、彼女に話した。
事の顛末を。
馬車に揺られながら、
周囲を計画しながら。
私は話した。
当然、全ては話していない。
嘘はついていないけれど、話すと不味そうなところは意図的に隠した。
その程度の話術は、嗜みとして身につけている。
助けてもらっておいてあれだけど、これはペコットのためでもある。
十分に、十分すぎるほど危険な状態だけれど。
できるだけ、迷惑はかけたくない。
無駄な努力、無意味な配慮とは理解している。
けれど、そうしてしまう。
愛情と同じくらい、友情というのも御し難い。
厄介な感情。
割り切れない、
折り合いがつかない。
それ以前に、私自身全てを語れる立場にはない。
隔離されていた時間は長いし、記憶の欠落が著しい。
むしろ、知っている誰かがいたら、私の方が教えてほしい。
どうして、こうなったのか。
私の何がいけなかったか。
「まあ、気絶している間にそんな事件が起こってしまえば、状況証拠的にそうなるか」
満足したように、ペコットは言う。
「君はどう思うよ」
と彼女は続けた。
言葉の対象は、当然私ではなく。
この馬車の行き先を握る、騎乗者。
「大方は合っています。途中の空白は僕が埋めましょう」
見覚えのある、影のような暗い男。
誰だっただろうか。
「まだペコット様のお屋敷までは距離があります。それまでの時間潰しには、丁度良いでしょう」
丁寧な口調で、彼は言う。
ーーあ、アンドレアル様の従者の一人。
いつもあの男の側に控えていた男、何度か関わりがある。
いや、でもーー
「どうしてここに?」
少し攻撃性を込めた口調で私が告げる。
私は対外的には彼の主人を殺した女。
主人の仇は自らとる、と言うつもりだろうか。
「まあまあ、そう殺気を向けないでくださいよ。僕は貴方の味方です。訳あって、一時的にペコット様にお仕えしているだけで」
「そんな言葉、信用できない!ペコット、気をつけて!」
私の言葉に、彼女は賛同することはせず。
どこか落胆したような表情を見せた。
「君がそれを言うかなー。リトア、彼は貴方を助けるのに協力してくれているんだよ。それに彼は君に感謝こそすれ、恨みを抱く立場にない」
「え、それはどう言うーー」
問い返す私の言葉を聞き終えることなき、彼女は言う。
「自分の主人に恨みを抱く従者なんて、腐るほどいるでしょう?第一王子の噂、直接会って関わっている君なら、そに人間性が如何程のものか、知らないことはないでしょう」
「それはーー」
「つまりはそう言うこと」
だから、心配しないで、とペコットは続けた。
ペコットはうんうんと頷く。
私は、彼女に話した。
事の顛末を。
馬車に揺られながら、
周囲を計画しながら。
私は話した。
当然、全ては話していない。
嘘はついていないけれど、話すと不味そうなところは意図的に隠した。
その程度の話術は、嗜みとして身につけている。
助けてもらっておいてあれだけど、これはペコットのためでもある。
十分に、十分すぎるほど危険な状態だけれど。
できるだけ、迷惑はかけたくない。
無駄な努力、無意味な配慮とは理解している。
けれど、そうしてしまう。
愛情と同じくらい、友情というのも御し難い。
厄介な感情。
割り切れない、
折り合いがつかない。
それ以前に、私自身全てを語れる立場にはない。
隔離されていた時間は長いし、記憶の欠落が著しい。
むしろ、知っている誰かがいたら、私の方が教えてほしい。
どうして、こうなったのか。
私の何がいけなかったか。
「まあ、気絶している間にそんな事件が起こってしまえば、状況証拠的にそうなるか」
満足したように、ペコットは言う。
「君はどう思うよ」
と彼女は続けた。
言葉の対象は、当然私ではなく。
この馬車の行き先を握る、騎乗者。
「大方は合っています。途中の空白は僕が埋めましょう」
見覚えのある、影のような暗い男。
誰だっただろうか。
「まだペコット様のお屋敷までは距離があります。それまでの時間潰しには、丁度良いでしょう」
丁寧な口調で、彼は言う。
ーーあ、アンドレアル様の従者の一人。
いつもあの男の側に控えていた男、何度か関わりがある。
いや、でもーー
「どうしてここに?」
少し攻撃性を込めた口調で私が告げる。
私は対外的には彼の主人を殺した女。
主人の仇は自らとる、と言うつもりだろうか。
「まあまあ、そう殺気を向けないでくださいよ。僕は貴方の味方です。訳あって、一時的にペコット様にお仕えしているだけで」
「そんな言葉、信用できない!ペコット、気をつけて!」
私の言葉に、彼女は賛同することはせず。
どこか落胆したような表情を見せた。
「君がそれを言うかなー。リトア、彼は貴方を助けるのに協力してくれているんだよ。それに彼は君に感謝こそすれ、恨みを抱く立場にない」
「え、それはどう言うーー」
問い返す私の言葉を聞き終えることなき、彼女は言う。
「自分の主人に恨みを抱く従者なんて、腐るほどいるでしょう?第一王子の噂、直接会って関わっている君なら、そに人間性が如何程のものか、知らないことはないでしょう」
「それはーー」
「つまりはそう言うこと」
だから、心配しないで、とペコットは続けた。
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