虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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「僕のことも無理に信用していただく必要はありません。主人が主人ならば従者も従者。その人間性を疑われることには慣れています」

ため息混じりにかの男の従者は言う。
いつの間にやら影の薄い感じは消え、ただの丁寧口調の男性に見えて来た。
かと言っても、この男があの男の従者であった事実は変わらない。
口で何を言おうと、心の中までは見えない。

「君は真面目だねぇ。そんなんだと、生きていくの辛くないかい?もっと楽に大雑把に自分勝手に生きてこうよ」

ふふっと、彼は笑った。

「それが行き着く先が、あの王子ですよ。その末路はお二人も知るところ。あの人は僕にとっての反面教師。ああなってはいけない、あの生き方は間違っていると常日頃意識した末、僕はこのようになってしまったのかもしれません」

「そうなの?だったら、一度会うべきだったかもしれないね。存外、友達になれたかも」

冗談のように彼女は言う。

「ペコット様だったら、そんな未来もあったかも知れませんね。貴方ほど度量の大きい人であれば、或いはーー」

「……それ、暗にリトアのことを貶めてない?怒るよ?」

これまた冗談風に、彼女は言う。

「いえ、そんなことは全く」

「私の友達のこと、虐めないでね。君もまあ、日は浅いけど友達だ。少々のことは許すけど」

「寛大な御心、ありがとうございます」

「それで、貴方は何を知っているの?」

二人の掛け合いに割って入る。
私は問いを投げかけた。
少し和やかな雰囲気になっているとはいえ、今は逃走中。
本来、のんびりとしている状況ではなく。
今後の生き延びる算段を必死に、頭を使って考えるべき状態。
そのためにも、情報の整理は必要。
いつの間にか、謎の男ーーあの王子の従者の登場によって掻き消えてしまっていたのだ。

「我が主人を殺した犯人、イデア様とカストリア様に暴行を働いた者の正体、です」

従者は簡潔に答える。
私が知りたい情報を、その対象を明確にはせずに。
だけど、
その言い方だと、そこは別の人間がやったような。
犯人が二人いる、というような。
そんな印象を受ける。

「順番に答えていきましょう。ますは、簡単な方から……後者は貴方ですよ、リトア様」

軽い口調で、彼は言った。
嘘だ、そんな馬鹿な。

「イデア様とカストリア様、その両名に暴行を加えた不敬者。それが貴方であることに間違いはありません。だって僕は隠れて見てましたから。もちろん、我が主人の指示で」

澱みなく、迷いなく、流暢に答える。
当事者を目の前にして。
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