虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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「あの方もあの方で、十分に人としておかしい。ただ、周りへの影響の与え方が、我が主人とは違っただけで。見た目が整っているだけでーーまあ、美形であることは正義の一つですからね。同じ言葉でも、受け取り方が違う。同じ考えでも、受け取り方が違う」

彼は続ける。
どこか悟った風な表情で。

「リトア様、貴方はあの方のどこが好きなのですか。これは、貴方を否定している訳ではありません。単純な疑問です」

「それはーー優しい笑顔だったり、凛々しい姿とか……」

「それ、他の方でも同じことができますよね。もちろん、完璧とはいきませんが。似たようなことはできるし、事実されてきたと思います。それでも、カストリア様が特別なのはーーカストリア様だけに恋焦がれているのは」

間を置かずに喋ったと思ったら、
今度は言葉をためる。

「単純にーーあの方の容姿がずば抜けて整っている。ただそれだけなんですよ」

「そ、そんなことはない!」

私は叫ぶ。
すぐ様否定する。
私の恋を、
私の愛を。
そんな簡単な理由で片付けて欲しくない。
助けてもらっている身分を忘れ、感情のままに叫ぶ。
これが私の良くないところなのだろう。

「じゃあ、貴方はあの方の何を知っているんですか。何を考え、何のために生きているかご存知なんですかーーっと、勿論、イデア様以外のことで」

「それは……」

答えられない。
分からない。
言葉に詰まる。
いや、違う。
焦って考えが、記憶がまとまっていないだけだ。
私は知っているはずだ。
あれだけあの方のことを思い生きてきた。
その時間の重みを理解している。
なのに、
なのに。

「そういうことです。貴方もその他大勢と同じ『一目惚れ』なんです。だから、ペコット様が仰る通り、ここまで賭けることはなかった」

彼は続ける。
いや、続けようとした。

「リトアが可哀想だから、この辺にして」

ペコットが、間に入る。

「恋愛なんて人それぞれ。理由なんて、どうでもいいでしょう?それに、好きな理由があるから好き、っていうのも打算的で私は嫌だけど。ーーシュライグ、大事なことから話が逸れているよ」

シュライグと呼ばれた従者は、思い出したようにはっとする。
うっかり、というような風。

「あぁ、我が主人を殺した犯人ですね。つい忘れてしまっていました。……話に流れとこの状況、賢いリトア様なら察しは付いていると思いますがーー」

シュライグは言う。
表情を変えずに。

「アンドレアル=リンドブルム、我が主人にしてかの第一王子を殺害した不敬者。それは僕、シュライグ=リーグベルトなのです」
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