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第14章 そして神になった
5【とある星の再建1】
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<<日本から来た青年ケンジ視点>>
こんなはずじゃ無かったのに。
何が問題だったんだろう。
今彼が立っているのは、廃墟と化したビル群と紫色の薄暗い空が広がる草原。
人がいなくなったこの街だった場所で彼は途方に暮れていた。
鄙びた日本の原風景のようなどこかの片田舎に突然飛ばされて来たケンジは、当初不安よりもこれから始まるであろう自身の無双生活に期待を膨らませていた。
彼に与えられた能力は創造と時間操作。
自分が思い描いた風景を作り出すチート能力の『創造』と時間の流れを早める能力の『時間操作』を持って転移してきた彼は、得意の絶頂だったのだ。
村から一歩出た草原にビルを建ててみた。
テレビで見たことのある屋上に船のようなものが載っているツインタワー。
たしか屋上の船の部分にはプールがあったはず。
彼は屋上に登ろうとして唖然とする。
エレベーターがないのだ。
そう、この創造の能力は細部までしっかりと意識しないと、意識した部分しか作ってくれないのだ。
彼はこのビルを諦め、隣に新しいビルを建てようと考えた。
今度は屋上のプールとエレベーター、もちろんプールには水も忘れない。
「創造!」
間違いなく厨二病の彼は能力名を得意げに叫ぶタイプの少年だった。
いや厨二病はしょうがないだろう。
何故ならケンジは未だ14歳、正真正銘の中学2年生だったのだから。
果たしてビルはケンジの思い描くものだった。
エレベーターを降りた彼が見たものはテレビで若手芸人が拙いレポートをして、最後にプールに突き落とされたあの風景がそこにある。
綺麗な水を湛えた真っ白なプール。
その横にはビーチチェアとテーブルがあり、その上にはオレンジジュースがカクテルグラスに入っている。
彼は素っ裸になってプールに飛び込み、ひとしきり泳ぐとプールから上がってビーチチェアに寝そべりオレンジジュースに口をつける。
「美味い。最高ー。」
暑い日差しを遮るビーチパラソルを出したり、発電機と扇風機を出したりと、彼はこの異世界生活を満喫していたのだった。
<<村長の嫡男ムーア視点>>
村には十数人の住人がいた。
突然村の外に出来た見たことの無い巨大ななにかは、彼らにとって神の御業としか考えられなかった。
村長の息子で15歳のムーアは果敢にもこの奇怪なものの調査を始めた。
幾人かの手下を従えてビルに近づく。
どのくらいの高さか見当もつかないこの建物は見える範囲硬い壁に覆われている。
ケンジの創造力にはビルに窓を付けるところまでは無かった。
一周廻り終える頃、高さ2メートル、幅3メートルくらいの空いた場所があり、中を見ることが出来た。
「(ごくっ) よ、よし、ここから入れそうだ。みんな続け!」
怖さを紛らわすかのように全速力で突っ込むムーアとその仲間。
ガシーン!
入口の分厚いガラス戸の無残にもはじき返された彼らは後ろに吹っ飛んだ。
そう、この世界にまだガラスは無い。ましてこんな透明度の高いガラスなど想像もつかないため、ただの空いた空間としてしか見えていなかったのだ。
全員、いや1人だけ最後尾で遅れていた者がいた。彼だけは自動ドアが開く時間に間に合ったのだろう。勢い余ってエレベータの入口にぶち当たっていた。
「いてててて」
起き上がったムーアは音を立てて閉まりかける自動ドアを見て、そこに先程は見えなかった透明な壁があることに気付いた。
見たこともない勝手に動く透明な何か。
恐怖心がムーアを襲う。
後ろでは彼が率いる自称手下どもが起き上がりつつあった。
彼はその向こうに驚く光景を目の当たりにする。
彼の手下で最弱の少年ミンがその中にいたからだった。
続々と立ち上がってくる手下達。前にはミン。ムーアは恐怖に震える心を奮い立たせて前に進むしかなかった。
既に自動ドアは閉まっている。
ムーアは全員が起き上がったことを確認して慎重に自動ドアの前へと進む。
見えない何かがあるのは分かっている。慎重に一歩づつ進んでいくと シュー っという音と共にそれが開いた。
「いまだ、急げ!」
いつ閉まってしまうか分からないので全員を急がせて中に入った。
「ふうー」
全員が中に入ってミンのところに向かう。
背後で シュー と音がして自動ドアが閉まる。
「しまった。」
ムーアは後悔していた。
無様にも透明な何かにはじかれたこと。自分が入れなかったのに最弱のミンが入っていたこと。
彼のどうでも良い自尊心がみんなを危険に巻き込んでしまったのだ。
先に入っていたミンは、まだ事態の把握が出来ていなかった。
自動ドアの存在にすら気付いていなかった彼は、普通に浅い洞穴にいるような気でいた。
目の前には見たこともない綺麗な色の壁があり、宝石のように光るボタンがある。
彼はその光るボタンを押してみた。
ちょうどムーア達がそばに来た時、目の前の綺麗な壁が2つに割れ、明るい空間が広がる。
中には何人かの人が入っており、武器を持っている。
「危ない。伏せろ!」
ムーアが声を掛けると全員がその場に伏せる。
ムーアは彼らが襲って来ないことを不思議に思い、顔をあげた。
そこには自分達同様に伏せた者達がいた。
その先頭にいるのは自分と同様伏せたまま前をにらみつけている少年。
鏡のないこの村では、みな自分の顔を知らない。
見たことのない相手の顔を凝視する2人。
しばらくにらみ合っていたが、後ろから声がした。
「ムーアが中にいるぞ。」
後ろにいたレンが立ち上がったと同時にあちらにもレンがいた。
レンが慌てて伏せるとあちらのレンも伏せる。
ムーアは伝説の化かし狐の話しを思い出していた。
化かし狐は、旅人の姿に化けて同じ動きをするという。
すっかりエレベータ内の鏡を化かし狐と思ったムーアは、決死の覚悟で化かし狐を退治しようと立ち上がった。
そして中にミンの姿を見た。
そう、ムーア達が鏡と格闘している間にミンはエレベータの中に入っていたのだ。
ミンを助けようと咄嗟にエレベータの中に飛び込むムーア達。
「ミン大丈夫か?」
ムーアはミンを抱き上げて異常が無いか確かめる。
後ろでは無情にもエレベータの扉が閉まっていくのであった。
こんなはずじゃ無かったのに。
何が問題だったんだろう。
今彼が立っているのは、廃墟と化したビル群と紫色の薄暗い空が広がる草原。
人がいなくなったこの街だった場所で彼は途方に暮れていた。
鄙びた日本の原風景のようなどこかの片田舎に突然飛ばされて来たケンジは、当初不安よりもこれから始まるであろう自身の無双生活に期待を膨らませていた。
彼に与えられた能力は創造と時間操作。
自分が思い描いた風景を作り出すチート能力の『創造』と時間の流れを早める能力の『時間操作』を持って転移してきた彼は、得意の絶頂だったのだ。
村から一歩出た草原にビルを建ててみた。
テレビで見たことのある屋上に船のようなものが載っているツインタワー。
たしか屋上の船の部分にはプールがあったはず。
彼は屋上に登ろうとして唖然とする。
エレベーターがないのだ。
そう、この創造の能力は細部までしっかりと意識しないと、意識した部分しか作ってくれないのだ。
彼はこのビルを諦め、隣に新しいビルを建てようと考えた。
今度は屋上のプールとエレベーター、もちろんプールには水も忘れない。
「創造!」
間違いなく厨二病の彼は能力名を得意げに叫ぶタイプの少年だった。
いや厨二病はしょうがないだろう。
何故ならケンジは未だ14歳、正真正銘の中学2年生だったのだから。
果たしてビルはケンジの思い描くものだった。
エレベーターを降りた彼が見たものはテレビで若手芸人が拙いレポートをして、最後にプールに突き落とされたあの風景がそこにある。
綺麗な水を湛えた真っ白なプール。
その横にはビーチチェアとテーブルがあり、その上にはオレンジジュースがカクテルグラスに入っている。
彼は素っ裸になってプールに飛び込み、ひとしきり泳ぐとプールから上がってビーチチェアに寝そべりオレンジジュースに口をつける。
「美味い。最高ー。」
暑い日差しを遮るビーチパラソルを出したり、発電機と扇風機を出したりと、彼はこの異世界生活を満喫していたのだった。
<<村長の嫡男ムーア視点>>
村には十数人の住人がいた。
突然村の外に出来た見たことの無い巨大ななにかは、彼らにとって神の御業としか考えられなかった。
村長の息子で15歳のムーアは果敢にもこの奇怪なものの調査を始めた。
幾人かの手下を従えてビルに近づく。
どのくらいの高さか見当もつかないこの建物は見える範囲硬い壁に覆われている。
ケンジの創造力にはビルに窓を付けるところまでは無かった。
一周廻り終える頃、高さ2メートル、幅3メートルくらいの空いた場所があり、中を見ることが出来た。
「(ごくっ) よ、よし、ここから入れそうだ。みんな続け!」
怖さを紛らわすかのように全速力で突っ込むムーアとその仲間。
ガシーン!
入口の分厚いガラス戸の無残にもはじき返された彼らは後ろに吹っ飛んだ。
そう、この世界にまだガラスは無い。ましてこんな透明度の高いガラスなど想像もつかないため、ただの空いた空間としてしか見えていなかったのだ。
全員、いや1人だけ最後尾で遅れていた者がいた。彼だけは自動ドアが開く時間に間に合ったのだろう。勢い余ってエレベータの入口にぶち当たっていた。
「いてててて」
起き上がったムーアは音を立てて閉まりかける自動ドアを見て、そこに先程は見えなかった透明な壁があることに気付いた。
見たこともない勝手に動く透明な何か。
恐怖心がムーアを襲う。
後ろでは彼が率いる自称手下どもが起き上がりつつあった。
彼はその向こうに驚く光景を目の当たりにする。
彼の手下で最弱の少年ミンがその中にいたからだった。
続々と立ち上がってくる手下達。前にはミン。ムーアは恐怖に震える心を奮い立たせて前に進むしかなかった。
既に自動ドアは閉まっている。
ムーアは全員が起き上がったことを確認して慎重に自動ドアの前へと進む。
見えない何かがあるのは分かっている。慎重に一歩づつ進んでいくと シュー っという音と共にそれが開いた。
「いまだ、急げ!」
いつ閉まってしまうか分からないので全員を急がせて中に入った。
「ふうー」
全員が中に入ってミンのところに向かう。
背後で シュー と音がして自動ドアが閉まる。
「しまった。」
ムーアは後悔していた。
無様にも透明な何かにはじかれたこと。自分が入れなかったのに最弱のミンが入っていたこと。
彼のどうでも良い自尊心がみんなを危険に巻き込んでしまったのだ。
先に入っていたミンは、まだ事態の把握が出来ていなかった。
自動ドアの存在にすら気付いていなかった彼は、普通に浅い洞穴にいるような気でいた。
目の前には見たこともない綺麗な色の壁があり、宝石のように光るボタンがある。
彼はその光るボタンを押してみた。
ちょうどムーア達がそばに来た時、目の前の綺麗な壁が2つに割れ、明るい空間が広がる。
中には何人かの人が入っており、武器を持っている。
「危ない。伏せろ!」
ムーアが声を掛けると全員がその場に伏せる。
ムーアは彼らが襲って来ないことを不思議に思い、顔をあげた。
そこには自分達同様に伏せた者達がいた。
その先頭にいるのは自分と同様伏せたまま前をにらみつけている少年。
鏡のないこの村では、みな自分の顔を知らない。
見たことのない相手の顔を凝視する2人。
しばらくにらみ合っていたが、後ろから声がした。
「ムーアが中にいるぞ。」
後ろにいたレンが立ち上がったと同時にあちらにもレンがいた。
レンが慌てて伏せるとあちらのレンも伏せる。
ムーアは伝説の化かし狐の話しを思い出していた。
化かし狐は、旅人の姿に化けて同じ動きをするという。
すっかりエレベータ内の鏡を化かし狐と思ったムーアは、決死の覚悟で化かし狐を退治しようと立ち上がった。
そして中にミンの姿を見た。
そう、ムーア達が鏡と格闘している間にミンはエレベータの中に入っていたのだ。
ミンを助けようと咄嗟にエレベータの中に飛び込むムーア達。
「ミン大丈夫か?」
ムーアはミンを抱き上げて異常が無いか確かめる。
後ろでは無情にもエレベータの扉が閉まっていくのであった。
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