みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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最終部 シンデレラボーイはこの『最強』を打ち砕く義務がある!

第20話 珍世紀ヒマンゲリオン!

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 俺が森実生徒会役員の座を追放されて、早3日が経過しようとしていた。

 それはつまり、小鳥遊大我さんが生徒会に加入して、3日が過ぎたという事を意味していた。

 まだ3日。

 されど3日。

 大我さんは俺の居場所を奪うかのように、バリバリッ! と生徒会役員としての仕事をこなしていく。

 その仕事の手腕っぷりは、あの芽衣でさえ舌を巻くモノがあり、今では生徒会に居なくてはならない大切な戦力として数えられている位だ。

 というか、俺が居たときよりも、何となく活気に満ち溢れているような気がして、ちょっとだけ疎外感を感じる今日この頃。

 そして今日も今日とて、役員の仕事を頑張る大我さん。

 そんな大我さんと入れ替わるように、生徒会を辞めさせられたナイスガイこと俺、シロウ・オオカミは現在――



「よこたぁ~ん、お茶ぁ」
「はいは~い。ちょっと待っててねぇ?」




 ――爆乳わんが用意してくれたお茶菓子を頬張りながら、生徒会室に入りびたっていた。



 学校側が用意してくれたソファに身を沈めながら、バリバリッ! とせんべいを頬張る。

 このしょうゆの焦げた味が、たまらない❤

 なんてことを考えている間に、お茶を淹れてきてくれたマイ☆エンジェルが、コトッ! と湯飲みを机の上に置いて、俺の隣に腰を下ろした。



「はい、ししょー。熱いから気をつけてね?」
「サンキュー。おっ? 茶柱発見伝! 今日はイイコトがありそうチャバねぇ~♪」
「イイコトって、もう1日終わりそうだけどねぇ~」



 ねぇ~? と、よこたんと言い合いながら、ズズゥ! と温かいお茶を一口。

 う~ん、じんわりと熱が体中に染みわたるようだ。



「……いや、なんでお前がココに居るんだよ?」
「ん? どうした大我さん? そんな難しい顔をして? 俺の顔がイケメン過ぎて、驚いているのかい? ごめんね、イケメンで?」



 んなワケねぇだろ? と『もと』俺の席だった場所から、湿った視線を投げかけてくる大我さんに、つい首を傾げてしまう。

 そんな俺を見て、何故かあからさまに溜め息をこぼす大我さん。



「……ここは生徒会室だぞ? 関係ない奴は帰れよ?」

「まぁまぁ、OB特権ってことでさ! 許してチョンマゲ❤ そんな事よりも、ほら? 口より手を動かしたまえ、新人くん! まだまだ仕事はたくさんあるんだからさ!」

「……こ、コイツぅ!?」



 何か言いたげな大我さんだったが、仕事がたくさんあるのは事実だったので、仕方なく自分の仕事へと戻っていく。

 そんな大我さんの後ろ姿をさかなに、再びマイ☆エンジェルと共にお茶をずずぅ~♪ と口に含む俺たち。



「「はぁ~、温かぁ~い♪」」

「生徒会を辞めても、シロパイはシロパイだね……」
「当たり前やで! 図々しさが服を着て歩いている姿こそ、相棒やからな!」

「まぁ薄々『こうなる』ような気はしていましたけどね。ほらっ、洋子? いつまでも休憩していないで、仕事に戻ってくださいね」

「はぁ~い」
「まぁ待ちたまえ、よこたん君? もうちょっと師匠と遊ぼうじゃないか」
「えぇ~? もう、しょうがないなぁ、ししょーは」
「イケませんよ、洋子? その言い方は。とでもダメな女の子の香りがします」

「確かに。古羊パイセンって、絶対に男に尽くすタイプだとウチも思う。というか、尽くしが過ぎて、逆に男をダメにしそうな雰囲気がプンプンするし」

「み、みんな酷くない? むぅ~、わかったよぉ。……ごめんね、ししょー? ボク、やっぱりお仕事に戻るね?」



 一服し終えた爆乳わん娘が、しぶしぶといった様子で仕事へと戻って行く。

 そんな愛しの弟子を見送りながら、せんべいを頬張る。

 なんとも贅沢な時間。

 これは大我さんが生徒会に来てくれて逆に良かった――あっ、そうだ!



「なぁなぁ、みんなっ! このあとひまか? 暇ならさ、大我さんの歓迎会でもやろうぜ!」
「歓迎会って、おまえ……。自分の居場所を奪った人間を祝うって、どういう神経してんだよ?」
「それはソレ、これはコレ! なぁ? いいだろ、みんな?」

「ほんと士狼は言い出したら聞かないんですから……。わたしはいいですよ。どうせ予定はありませんし」

「ぼ、ボクも大丈夫だよ!」
「じゃあウチも参加しよっかな。猿野パイセンはどうする?」
「んん~? 今日はマイハニーと一緒に帰りたいからパス!」

「よしっ、元気以外は全員参加だな! ならさっそく、ちょっくら駅前のファミレスに連絡入れてくるわ! さぁ楽しくなってきたぞぉ!」



 ……フットワーク軽いなぁコイツ、と呟く大我さんをそのままに、一旦生徒会室を出ようとソファから腰を上げかけた、その時。

「失礼します」と、生徒会室の重苦しいドアがゆっくりと開いた。

 そして現れるのは、我らが風紀委員長、村田仁美ちゃんだ!

 村田委員長、略してインチョメは、ご機嫌なご様子で大我さんへと声をかけ――



「小鳥遊くん。言われていた資料を届けに来たんですが、どこへ置けばいい……です、か……あぁ?」

「やぷー、インチョメ♪ おひさびさぁ~☆」
「……なんでクソムシが、まだ生徒会室ココに居るんですか?」



 ――るよりも先に、俺を発見!

 瞬間、不愉快の極みと言わんばかりに眉根を寄せて、俺のすぐ傍まで近づいてきた。



「う~ん? 相変わらず、インチョメは辛辣だなぁ。なにをカリカリしてんのさ? あっ、もしかして『あの日』ですか?」

「今すぐ口を閉じて、この場から失せろ、クソムシがぁ!」



 有無を言わさぬ! とばかりに、俺の背中をバシバシ叩きながら、グイグイッ! と身体を押すインチョメ。

 もう言葉づかいからで分かるように、インチョメは俺が生徒会室に入り浸っているコトを、あまりこころよく思っていないらしい。

 こうして鉢合わせしては、いつも無理やり生徒会室を追い出そうとするのが、もはや俺たちの間でのオープンセレモニーと化していた。



「まぁまぁ、そうカッカしないで? あっ、そうだ! 実はこのあと、大我さんの歓迎パーティーをするんだけどさ? インチョメもどう? 参加しない?」

「クソムシ、アナタ……よく自分を追い出した人間を祝おうだなんて思えますね? 頭、湧いているんですか?」



 全力で意味が分からない……と、牛乳瓶のような厚底メガネの向こう側から、軽蔑しきった目が俺を捉える。

 おいおい?

 この子、大和田ちゃん並みに女王様気質なんじゃないか?

 俺がドMなら今頃「ぷふぉぉっ!? なんてHOTな眼差し! 冷えた身体が熱くなるでおじゃるよぉぉぉぉぉっ!」とか悶絶もんぜつしているところだぞ?

 いやドMじゃないから、しないけどさ。

 ホントだよ?



「クソムシが参加するなら、ワタシはしません。いいから早く生徒会室から出て行きなさい!」
「おいおい? そんなに俺の身体に密着して……もしかして誘ってる?」
「くたばれ変態がぁッ! 2度と顏を見せるな!」



 バタンッ! と、勢いよく生徒会室のドアが閉められてしまう。

 どうやらインチョメはツンデレ少女らしい。

 まったく、そろそろデレの方も見せて貰いたい所だ。

 ところで変態といって思い出されるのは、やはり今年の夏――いや、もう去年か――の学校主導で行われた学力強化合宿だろう。

 高校2年生といえば、穴があったらとにかく突っ込んでみたいお年頃。

 そんな俺たちが夜、ホテルに用意されていた大きめの温泉でゆったりとリフレッシュし、脱衣所へ戻ってきたときに、その事件は起きた。

 全裸のアマゾンが、脱衣所の脇に置いてあった業務用の掃除機を発見したのだ。

 何度も繰り返すようだが、高校2年生というのは、穴があったらとにかく突っ込んでみたいお年頃。

 アマゾンはごく自然に、掃除機のノズル部分にほっかほっか♪ に温まったお股の日輪刀を突っ込むなり「種付けの呼吸、参ノ型『バキューム』!」とかフザけだしたのが、全ての始まりだった。

 元気を含む2年A組の男子カスどもが大爆笑している傍ら、俺はあるモノを発見していた。

 そう、アマゾンがアレを突っ込んでいる業務用掃除機の電源コードである。

 手元には電源コード。

 目の前には、ぽっかり空いたしこみ口。

 しつこいようだが、高校2年生という生き物は、穴があったらとにかく突っ込んでみたいお年頃。

 気がつくと俺は、好奇心に駆られ、電源コードを刺しこみ口にプラグインしていた。

 瞬間「あんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」と、アマゾンが地の果てまでも轟かんばかりの雄叫びをあげた。

 俺は驚き、慌ててアマゾンの方へ振り返ると、そこにはっ!




 ――もの凄い勢いでアマゾンの股に吸いつく、業務用掃除機の姿があった。




 ちゅぴぴぴぴぴぴぴぴぃぃぃぃぃぃっ! と、ひょっとこフ●ラのような下品な音を立てながら、アマゾンのお股に溜まったストレッチパワーを吸い出そうとする、業務用掃除機。

 それに抵抗しようとするが、まったく歯が立たず、悲鳴を上げてのた打ち回るアマゾン。

 もうね? 業務用だからね? 吸引力の変わらない、ただ1つの掃除機なんか目じゃないくらい強烈な吸い込みなのね、コレ。



「ほんと叫びに聞きつけてヤマキティーチャーがやって来なければ、今頃アマゾンは女の子に変態メタモルフォーゼしていたに違いない。――って、うん?」



 ほんのり昔を懐かしんでいると、ポケットに仕舞いこんでいたスマホが、ピロンッ♪ と軽やかな音色を立てた。

 取り出してみると、そこには芽衣からの「大丈夫?」というメッセージが、デカデカと表示されていた。

 どうやら先ほどの村田インチョメとのやり取りを気にして、連絡をくれたらしい。

 相変わらず優しい女だなぁ、コイツ。

 ……パッドのことが絡まなければ。

 俺は芽衣から送られてきたメッセージに頬を緩ませながら、「無問題もーまんたいだ!」と送信し、校舎の外へと目指して歩み始める。

 その足取りは、今にも空を飛べそうなくらい軽やかだった。
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