玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶

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第8話:溢れる想い

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テラス席へと移ったリュカリウスとリーリャ。

向かい合って座ったものの恥ずかしくて顔が見られないリーリャに対し、リュカリウスは彼女の事を見つめ続ける。


「リュカリウス様、そんなに見られると恥ずかしいです…」

「ごめんごめん、ずっと好きだった君が目の前にいるからつい」

「私の事、そんなに前から好きだったんですか?」

「ほぼ一目惚れだったからね、君が入学生代表として挨拶した時からかな」


本当にずっと見られていたらしい。


「優秀で、芯が強そうな子だなって思った。興味が恋に変わるのなんて一瞬だったよ」


目を細めるリュカリウス。

照れるリーリャの手を握り、その指先に口付ける。


「好きだよ、リーリャ。妹思いのところも含めて、ね」

「…すみません、妹ってば強引で。エレン様にご迷惑でなければ良いのですが」

「大丈夫だよ、彼も好みだったみたいだし」


彼も喜んでるさ、と微笑まれリーリャは安心して肩の力を抜いた。


「ありがとうございます、リュカリウス様」

「俺の方こそ、受け入れてくれてありがとう」

「そんな…私も好きな気持ちに気づけたから。でも、本当に私で良いのでしょうか」


まだ学生とはいえ、来年卒業するリュカリウスは世継ぎとして生きていくのだ。

その隣に立つ存在が、自分のような一般人の、しかも学生で良いのだろうか。


「誰にも文句なんて言わせないよ。俺が求め続けたものをやっと手に入れたんだから」


口元は笑っているが、真剣な目で話すリュカリウス。

ゆっくりと自分を印象付けて口説き落とすつもりでいた彼は、ようやく恋人になれたリーリャを手放すつもりなど全くないのだから。


「俺が好きなのはリーリャだけだよ。反対するやつなんて無視するだけさ」


意外と強引なところがあるらしい、そんな彼の一面を初めて見たリーリャは戸惑う。


「そんな顔しないでくれ、困らせたいわけじゃないんだ」

「リュカリウス様…」

「俺にとって一番の女性は君だけど、いつでもなにより優先できるかどうかは分からない。君にとっての俺も、そういう存在であれば良い」


いずれ王になるリュカリウス。

背負うものと天秤にかけたとき、リーリャが優先されるとは限らない…正直に伝えるその誠実さにリーリャも笑みを浮かべる。


「はい…」

「好きだよ、リーリャ」

「私も、好きです…リュカリウス様」


二人は手を握り合い、しばらく静かな時間を過ごした。

アーリャとエレンが良い雰囲気で部屋から出てくるまで、他愛もない話をしながら。

その後、世継ぎの王子に一般人の恋人が出来たという話はすぐに国内に広がり、批判や嫉妬による騒動も起きた。

しかしリュカリウスは卒業後、立場に相応しい振る舞いを続ける事で批判を退けていく。

誰にも文句を言わせないという強い意志で立派な王子として生きるリュカリウスの姿、そして愛されて美しくなっていくリーリャの姿を見た人々は二人の関係を認めざるを得なくなるのだった。

賢王となり、愛妻家として後世に語り継がれることになるリュカリウスの傍には常に王妃リーリャの姿があったというーーー
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