86 / 105
国のことは国王に任せておきましょう
王城で 3
しおりを挟む
「レティシアの力を借りながらですが、もうしばらくお役に立てるかと」
「レティシア……一緒になって魔獣を倒す龍か」
「えぇ。力を貸してくれているのです」
「その龍がいれば、魔獣など怖くもないのでは?」
(レティシアがどれだけその身を犠牲にしてくれているか、知りもせずによくも抜け抜けと)
「彼女は強いですから」
「ほぅ」
バルタザールが何を考えているのかはわからない。だが、レティシアはロイエンタールの当主の為に力を貸してくれているだけだ。それも、長でなくなれば終わってしまう。
先祖が何代にも渡って国王達には伝えてきたというのに、やはり何も伝わってはいない。
レティシアがいなくなれば、ロイエンタールが辺境伯でなくなれば、龍の協力など得られやしない。
ベルンハルトがいなくなれば、あの魔獣たちは一気に国内へ押し寄せるだろう。
「魔獣の動きは、そのレティシアからの報告です。例年よりも強い魔獣が結界を越えてきていることもあり、国の結界に何か起きているのではと」
「私の魔力に何か問題があると言いたいのか!」
ベルンハルトの言葉は、核心をついていたようだった。
「そのようなことは申しておりません。それとも何か、お心当たりがあるのですか?」
「そ、そういうわけではない」
「私が懸念しているのは、国王陛下の魔力ではなく魔力石そのものです」
「魔力石だと?」
「国の結界がどのような形で維持されているのかは私自身もわかってはおりません。ですが、ロイスナーと同様であれば、その維持には魔力石が使われているのではないでしょうか」
「……そうだ」
バルタザールが口ごもりつつも肯定したということは、やはりこれも隠すべき事実であったということ。国全体を覆うような結界であれば、その大きさはロイスナーにあるものの何倍もの大きさに違いない。
「魔力石というのは、本来何度も使用すればそのうちに砕けてしまうものです。それは結界のための魔力石でも変わりません。あの大きさですので、頻繁に代えるべきものではないそうですが」
「や、やはりそういうことなのか」
「お気づきでしたか」
「数年前から、魔力の吸われ方が変わっている」
観念したように話始めたバルタザールは、先程までの尊大な態度とは違って、どこか項垂れて見える。
「そうやって感じることができるんですね。私も伝え聞いた話だけですので、どのような違いがあるのかはわかっておりませんでした」
「実際に魔力石も確認した……亀裂が入っていた」
絶望感すら漂い出したバルタザールの顔色に、同じ上に立つ者として同情したくなる。
もちろんリーゼロッテにあのような態度をとることは理解できないし、許すことなんてもってのほかだ。
だが、ベルンハルトにも守るべき領民がいる。バルタザールの肩にのしかかる重圧は計り知れない。
「それで、今後どうするのですか?」
「国の賢者たちに対応策を調べてもらっているが、未だに策が見つからず、八方塞がりだ」
全て話終えてもバルタザールの顔色は晴れない。
手を貸したいと思いはするが、ここでリーゼロッテの土魔法の話をすれば、バルタザールがどのような手段をとるかわからない。何をせずともあのような態度に出る男だ。
罪なき人達を犠牲にするのは心が痛むが、ベルンハルトが一番に思うのはリーゼロッテのこと。リーゼロッテの許可なく話はできないし、嫌がれば何があってもその気持ちを優先させる。
(それで、誰が犠牲になろうとも関係ない)
「私もできる限り調べてみます。賢者達に敵うとは思いませんが、何か頼りなるものが残っているかもしれません」
「ロ、ロイスナーではそのような事態が起こったことがあるのか?」
「いえ。そういうわけではないようですが、魔力石が砕けてしまう可能性があるという話は、伝えられています」
ロイエンタールに伝わる話は、もしかしたら他家よりも多いのかもしれない。それは辺境伯という立場だからだろうか、レティシアの動きに合わせてその立場を追われる可能性があるからだろうか。
「そうか……其方にこのようなことを頼むのは筋違いなのだろうが、よろしく頼む」
国王であるバルタザールが、ただの伯爵のベルンハルトに頭を下げる。それはどう考えても異例のことで、人払いをしたこの場所でしかできないことだろう。
「そのような真似はお止めください。まだ何も力になれると決まったわけではありませんから」
「それも、そうだな」
国王に頼まれてしまえば、何に変えてもそれを遂行する義務ができてしまう。それはリーゼロッテをかばったままでは不可能で、気軽に受け入れられるものではない。
「それでは、私はこの辺で失礼します。国王陛下もお忙しいでしょうし、時を見て帰領させていただきます」
「あぁ。それで構わぬ」
挨拶もなく王城を後にすることに許可を得れば、後はリーゼロッテをつれてロイスナーへ戻るだけ。
ベルンハルトは失礼のないように笑顔を作り、その部屋を出た。
「レティシア……一緒になって魔獣を倒す龍か」
「えぇ。力を貸してくれているのです」
「その龍がいれば、魔獣など怖くもないのでは?」
(レティシアがどれだけその身を犠牲にしてくれているか、知りもせずによくも抜け抜けと)
「彼女は強いですから」
「ほぅ」
バルタザールが何を考えているのかはわからない。だが、レティシアはロイエンタールの当主の為に力を貸してくれているだけだ。それも、長でなくなれば終わってしまう。
先祖が何代にも渡って国王達には伝えてきたというのに、やはり何も伝わってはいない。
レティシアがいなくなれば、ロイエンタールが辺境伯でなくなれば、龍の協力など得られやしない。
ベルンハルトがいなくなれば、あの魔獣たちは一気に国内へ押し寄せるだろう。
「魔獣の動きは、そのレティシアからの報告です。例年よりも強い魔獣が結界を越えてきていることもあり、国の結界に何か起きているのではと」
「私の魔力に何か問題があると言いたいのか!」
ベルンハルトの言葉は、核心をついていたようだった。
「そのようなことは申しておりません。それとも何か、お心当たりがあるのですか?」
「そ、そういうわけではない」
「私が懸念しているのは、国王陛下の魔力ではなく魔力石そのものです」
「魔力石だと?」
「国の結界がどのような形で維持されているのかは私自身もわかってはおりません。ですが、ロイスナーと同様であれば、その維持には魔力石が使われているのではないでしょうか」
「……そうだ」
バルタザールが口ごもりつつも肯定したということは、やはりこれも隠すべき事実であったということ。国全体を覆うような結界であれば、その大きさはロイスナーにあるものの何倍もの大きさに違いない。
「魔力石というのは、本来何度も使用すればそのうちに砕けてしまうものです。それは結界のための魔力石でも変わりません。あの大きさですので、頻繁に代えるべきものではないそうですが」
「や、やはりそういうことなのか」
「お気づきでしたか」
「数年前から、魔力の吸われ方が変わっている」
観念したように話始めたバルタザールは、先程までの尊大な態度とは違って、どこか項垂れて見える。
「そうやって感じることができるんですね。私も伝え聞いた話だけですので、どのような違いがあるのかはわかっておりませんでした」
「実際に魔力石も確認した……亀裂が入っていた」
絶望感すら漂い出したバルタザールの顔色に、同じ上に立つ者として同情したくなる。
もちろんリーゼロッテにあのような態度をとることは理解できないし、許すことなんてもってのほかだ。
だが、ベルンハルトにも守るべき領民がいる。バルタザールの肩にのしかかる重圧は計り知れない。
「それで、今後どうするのですか?」
「国の賢者たちに対応策を調べてもらっているが、未だに策が見つからず、八方塞がりだ」
全て話終えてもバルタザールの顔色は晴れない。
手を貸したいと思いはするが、ここでリーゼロッテの土魔法の話をすれば、バルタザールがどのような手段をとるかわからない。何をせずともあのような態度に出る男だ。
罪なき人達を犠牲にするのは心が痛むが、ベルンハルトが一番に思うのはリーゼロッテのこと。リーゼロッテの許可なく話はできないし、嫌がれば何があってもその気持ちを優先させる。
(それで、誰が犠牲になろうとも関係ない)
「私もできる限り調べてみます。賢者達に敵うとは思いませんが、何か頼りなるものが残っているかもしれません」
「ロ、ロイスナーではそのような事態が起こったことがあるのか?」
「いえ。そういうわけではないようですが、魔力石が砕けてしまう可能性があるという話は、伝えられています」
ロイエンタールに伝わる話は、もしかしたら他家よりも多いのかもしれない。それは辺境伯という立場だからだろうか、レティシアの動きに合わせてその立場を追われる可能性があるからだろうか。
「そうか……其方にこのようなことを頼むのは筋違いなのだろうが、よろしく頼む」
国王であるバルタザールが、ただの伯爵のベルンハルトに頭を下げる。それはどう考えても異例のことで、人払いをしたこの場所でしかできないことだろう。
「そのような真似はお止めください。まだ何も力になれると決まったわけではありませんから」
「それも、そうだな」
国王に頼まれてしまえば、何に変えてもそれを遂行する義務ができてしまう。それはリーゼロッテをかばったままでは不可能で、気軽に受け入れられるものではない。
「それでは、私はこの辺で失礼します。国王陛下もお忙しいでしょうし、時を見て帰領させていただきます」
「あぁ。それで構わぬ」
挨拶もなく王城を後にすることに許可を得れば、後はリーゼロッテをつれてロイスナーへ戻るだけ。
ベルンハルトは失礼のないように笑顔を作り、その部屋を出た。
24
あなたにおすすめの小説
普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜
神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。
聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。
イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。
いわゆる地味子だ。
彼女の能力も地味だった。
使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。
唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。
そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。
ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。
しかし、彼女は目立たない実力者だった。
素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。
司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。
難しい相談でも難なくこなす知識と教養。
全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。
彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。
彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。
地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。
全部で5万字。
カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。
HOTランキング女性向け1位。
日間ファンタジーランキング1位。
日間完結ランキング1位。
応援してくれた、みなさんのおかげです。
ありがとうございます。とても嬉しいです!
妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。
向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。
幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。
最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです!
勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。
だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!?
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。
まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。
泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。
それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ!
【手直しての再掲載です】
いつも通り、ふんわり設定です。
いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*)
Copyright©︎2022-まるねこ
転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~
志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。
自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。
しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。
身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。
しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた!
第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。
側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。
厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。
後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
無能だと思われていた日陰少女は、魔法学校のS級パーティの参謀になって可愛がられる
あきゅう
ファンタジー
魔法がほとんど使えないものの、魔物を狩ることが好きでたまらないモネは、魔物ハンターの資格が取れる魔法学校に入学する。
魔法が得意ではなく、さらに人見知りなせいで友達はできないし、クラスでもなんだか浮いているモネ。
しかし、ある日、魔物に襲われていた先輩を助けたことがきっかけで、モネの隠れた才能が周りの学生や先生たちに知られていくことになる。
小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる